『リストラ』
明転。
社長(和田)、社長婦人(加治)が椅子に座っている。
そこに社員(鈴木)、入室。
鈴木「失礼します。…社長、お話とは?」
和田「うむ。まぁ、かけたまえ。」
しかし椅子がない。
鈴木「…このままで結構です。」
和田「そうかね。では…君も知ってるかとは思うが、現在我が社の経営は非常に苦しい。
そこで経費削減というか、まぁ非常に言いづらいんだが…」
鈴木「え、まさか…」
和田「そのー、なんだ…」
鈴木「なんなんですか、はっきり言ってください!」
加治「リストラよ!!!
………にぶいわね。」
鈴木「いや大体分かってましたけど!!
なんで奥さんがはっきり言っちゃうんですか…
てゆーかなんで僕がリストラされなきゃならないんです?」
和田「まぁ理由はいくつかある。」
鈴木「なんですか?」
和田「これも非常に言いづらいんだが、そのー…」
鈴木「なんなんですか!」
加治「生理的に受け付けないのよ!!!」
鈴木「だからなんでアンタが言うんだよ!!
しかもそんな理由じゃ納得出来ませんよ。」
和田「まぁそれも一理あるんだが…」
鈴木「あるんかい!」
和田「とにかく検討を重ねた結果、君はクビなんだよ。」
加治「そうよ、100円よこしなさいよ。」
鈴木「なんでですか!…とにかく、考え直してくださいよ!」
和田「…そこまで言うならチャンスを与えよう。
君が我が社に必要な人間か問題を出そう。」
鈴木「問題?」
和田「それに答えられたら考え直してもよいが。」
鈴木「…わかりました。やりますよ!」
加治「出来なかったら100円よこしなさいよ。」
鈴木「もうアンタ黙ってろ!」
和田「では第1問。
『社長である私の誕生日はいつ?』
A.2月4日
B.6月10日
C.9月1日」
鈴木「そんなの知ってますよ、Bの6月10日!」
和田「正解。…ま、昨日だったんだけどね…」
加治「みんな色々くれたわよねー。」
和田「君は…」
2人、社員をじっと見る。
鈴木「…」
和田「それでは第2問。
『私の妻の誕生日はいつ?』
A.3月9日
B.4月20日
C.8月8日」
鈴木「Cの8月8日。」
和田「正解。…ま、先月だったんだけどね…」
加治「みんな色々くれたわよねー。」
和田「君は…」
2人、社員をじっと見る。
鈴木「…すいません。」
和田「第3問目。
『私達の結婚記念日は…」
鈴木「すいませんでしたぁー!!!
すいませんね!確かに祝わなかったですけど、そんなに根に持つことないでしょう!?」
和田「でもなぁ〜、みんな祝ってくれてるのになぁ〜。」
加治「そうよね、100円くらいよこしてもいいわよね。」
鈴木「だからなんなんすかそれ!どんだけ100円好きなんですか。」
和田「じゃ次。次答えられなかったらクビだと思ってくれたまえ。
問題。『私の妻の口癖は何?』」
鈴木「えー!?」
和田「A.『超うぜぇ〜』
B.『超だりぃ〜』
C.『クリリンのことかーっ!!』」
鈴木「悟空!?最後ドラゴンボールの悟空でしょ!?
そんな口癖の人いないでしょ。何この問題…」
和田「『D.100円よこしなさいよ』」
鈴木「それー!!!それ!!D!!Dの『100円よこしなさいよ』!!」
和田「正解!!」
加治「なんでわかったのよ!?」
鈴木「そりゃわかりますよ!!てゆーか普段から言ってるんですかソレ?」
和田「では最後の問題。
最後の問題は2択だ。
…問題。『私は社長の妻と不倫をしている。』
A.YES
B.NO」
鈴木「…は?」
和田「正解は…Aだな…」
社長、立ち上がる。
鈴木「ちょ、ちょっと待ってください社長!」
和田「うるさい!私は見たんだぞ、お前達が密会しているところをな。」
鈴木「密会って…仕事の打ち合わせじゃないですか!」
和田「そんなの信じられるか!…これが君をリストラする本当の理由だ。」
鈴木「そんな…」
社長婦人、立ち上がる。
加治「100円!!
…じゃなかった、あなた!!」
鈴木「えぇーっ!!?自分の旦那と100円間違えたよこの人…」
加治「あなた、ひとつだけ聞いて。…確かに、私は彼に迫られていたわ。」
鈴木「はぁ!?」
加治「彼が私に好意を持っているのは明らかだった。いつも私のこといやらしい目で見てきて…」
鈴木「見てねーよ!勘違いはなはだしいわ!」
加治「でも…彼とは本当に何もないの。それだけは信じて。」
和田「…信じられるか!」
加治「…そう。じゃ、私からあなたに最後の問題。
…2択よ。
『私はあなただけを愛しています。』
A.YES
B.NO」
和田「…」
加治「正解は…Aよ…」
和田「お前…」
加治「あなた…!」
2人、抱き合って泣き叫ぶ。
2人「うわーーー!!」
鈴木「なんだこれー!!!!!なんだこの茶番!?」
和田「鈴木君、申し訳なかった。リストラはなしだ。明日からも頑張ってくれ!」
握手を求めるが断る。
鈴木「お断りします。こんな会社、こっちからやめてやりますよ!
…そうだ奥さん。
僕から最後に問題出していいですか?」
加治「正解したら100円よこしなさいよ。」
鈴木「しつこいよ!!
…問題。『次のうち社長が奥さんに黙って浮気しているのはどれ?』」
加治「はぁ?」
社長、固まる。
鈴木「A.秘書のケイコちゃん
B.総務のアユミちゃん
C.経理のサヤカちゃん」
加治「…」
社員、100円玉を指ではじいて社長婦人に渡す。
加治「えっ!100円?」
鈴木「ええ。どれを選んでも正解なんで。
…お世話になりました。」
社員、立ち去る。
加治「あなたー!!」
和田「ヒィー!!」
暗転。
〜CAST〜
社長(和田正人)
社長婦人(加治将樹)
社員(鈴木裕樹)
