「空から地球を記録する男2」 〜世界初!超低空の流氷〜
地上スレスレを飛ぶ超低空で鳥のように飛び回り地球を眺めてみたいーー。
多胡光純さんは、モーターパラグライダーを操り、そんな夢を叶えることに成功しました。
多胡さんは、モーターパラグライダーを操縦しながら映像を記録するエア・フォトグラファーです。高度3000メートルから地上ギリギリまで自由自在に飛び回り「鳥の目線」で見た映像をとり続けています。
フライトを左右するのは風の強さ。毎秒3秒以上の風だと思うように操縦ができなくなるといいます。さらに、操縦しながら映像を撮るのですから、簡単なことではありません。
これまで世界中をまわり100カ所以上の撮影してきました。中国タカラマカン砂漠では、砂に触れるような低空から一気に高度を上げたとき、どこまでも広がる砂の海が目に飛び込んできました。
アフリカのマダガスカルでは、神秘の巨木バオバブの木が続く並木道を、モンゴルでは大草原で生きる遊牧民の暮らしを撮影してきました。
もちろん、日本各地にも出掛けています。「日本の景色はとても繊細」だと多胡さん。中禅寺湖の紅葉、エメラルドグリーンの湖が佇む上高地。すばらしい自然は私たちの生活のすぐそばに残されているということに、改めて気付かされます。
初フライトから6年。今回多胡さんが撮影場所に選んだのが、極寒の知床です。例年2月、オホーツク海からやってきた流氷に覆われる海を超低空で撮影する挑戦でした。
それはもちろん危険と隣あわせです。水温はマイナス1.8度。万が一不時着してしまったときのために地元の漁師が水を通さないドライスーツを貸してくれました。
また、冬の知床、天気は変わりやすく、実際に撮影を決行されたのは何日も後のことでした。
そして、世界初、超低空飛行での流氷撮影が行われました。目の前にせまる一面の流氷。「一つとして同じ形でない氷が、ずっと知床に実感できた」と多胡さんは言います。
次なる目標は、山形県蔵王の樹氷の上を飛ぶこと。「地球の今の姿を記録したい。それを見て欲しい、感じて欲しい。それが何かの芽になればいい」。多胡さんの挑戦は続きます。
ナレーター:橋爪 功
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多胡光純さん
大学時代は探検部に所属。写真家を志し、頻繁にカナダを訪れ、大自然に生きる「先住民」を撮り続けていた。 -
モーターパラグライダー
排気量200ccのエンジンをガソリンで動かす。満タン10リットルで2時間のフライトができる。平均速度は約30キロ。 -
知床半島
世界遺産にも登録されている貴重な自然が残る名所で知られる。今年の流氷の接岸は過去2番目に遅い記録だという。