水俣病の被害実態を解明する一斉検診が20日、熊本、鹿児島両県の不知火海沿岸8市町の17会場で始まった。21日までの2日間に全国から集まった1412人が受診を予定している。1956年の公式確認以後、最大規模の検診で、潜在患者の年代的、地域的広がりが明らかになる可能性がある。【西貴晴】
7月に成立した水俣病救済特措法に反対する水俣病不知火患者会(熊本県水俣市)など7団体と民間の医師らが作る調査実行委員会が主催した。
受診者は、27~92歳と幅広い。チッソが有害な排水を止めた後に生まれたとして、国が救済対象から外している69年以降生まれも57人いる。救済に手を挙げたことがない人が9割を占め、医療費が無料となる「新保健手帳」交付か認定申請を大半が希望しているという。
実行委は地域的な被害の広がりを検証するため、認定制度や救済の地域指定外となる熊本県天草市や鹿児島県阿久根市などにも会場を設けた。
検診は、代表的な症状とされる四肢末梢(ししまっしょう)優位の感覚障害や舌の二点識別覚障害、聴覚・視野異常や運動失調の有無を調べた。全日本民主医療機関連合会(東京都)を中心に医師140人が検診にあたった。被害者団体の要請に基づき、環境省の椎葉茂樹特殊疾病対策室長が検診に立ち会った。
実行委員長の原田正純熊本学園大教授は「被害実態を明らかにして、現実を踏まえた対策を考えたい」と話している。
水俣病の大規模検診は87年、全日本民主医療機関連合会などが1088人を対象に実施した例があり、858人を「水俣病」「水俣病の疑い」と診断した。
毎日新聞 2009年9月21日 10時20分(最終更新 9月21日 17時36分)