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アニリール・セルカンが今考えているコトとは?
ライター: 蘆澤雄亮   
「ウマが合う、合わない」の判断というのは案外、一瞬の判断であったりしません?ウマが合う人というのは、大抵5分ぐらい話をしてみれば意外とわかちゃうもんですよね。アニリール・セルカン、どうやらボクはこのヒトととてもウマが合うかもしれない。まぁ、彼がどう思っているかはわかりませんが・・・。先日、ひょんな事から彼にお会いした。そして彼は、一枚の紙を持っていました。これがまた面白い紙だったんです。というわけで、今日はそのことについて少しお話ししましょう。 と、その前にアニリール・セルカンという人物について簡単にご紹介しましょう。
アニリール・セルカン
トルコの宇宙物理学者。トルコ人としては初のNASA宇宙飛行士候補生。イリノイ工科大学、バウハウス、東京大学大学院工学系研究科を経て工学博士を取得。
日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部宇宙構造物工学研究室講師を経て、現在、東京大学大学院助手、エール大学客員教授などを務める。
8ヶ国語+古代語3ヶ国語の計11ヶ国語を操る。学問だけでなく、トルコのスキー代表選手に選ばれた経験をもつ。
長野オリンピックではトルコスキーチームのスーパーバイザーとして来日。
主な研究としては「宇宙エレベーターに関する研究」や「多次元(11次元)空間に関する研究」、「インフラフリー」など、その分野は非常に多岐に渡る。

と、なんとも華々しいというか、「すげぇな」の一言しか出てこないぐらい別世界のヒトな経歴の持ち主なのですが、そんな彼が持ってきた紙に書いてあったのがコレです。


どうでしょう?面白そうな予感がしません?といっても、詳しく説明しないとわからないですよね。というわけで、今日はこのことについてお話しします。その前に少しだけボクら(リエゾンセンター)とアニリール・セルカンとの"繋がり"について説明しましょう。ボクらが彼と初めてお会いしたのは、ほぼ2年前になります。ちょうどインターナショナル・デザイン・リエゾンセンターがオープンして1ヵ月ほど経った頃、こんなイベントを開催したんですね。

Web Site Expert Academia特別企画
-情報のセレンディピティ 宇宙につながる「関係性」の未来-
http://www.liaison-center.net/content/view/55/49/lang,ja/

gihyo.jpのアーカイブ記事
http://gihyo.jp/design/serial/01/wsea/0013

ボクはその時、事務局として二人の対談を聞いていて「あ~、この人、すごい面白いコト言うヒトだなぁ」なんてぼんやり思っていた程度で、特に会話を交わすコトもなく終わっていたのですが、どうやら上司はこのイベントを機に密かに繋がっていたようでして。
約2年を経たある日、上司に「アニリール・セルカンが面白いコトを考えてるから、お前も打ち合わせに出ろ」と突如言われ、ボクはこうして再びセルカンさんとお会いすることになったわけです。しかも今度は、直に話をするという状況で。そして感じたのが冒頭の話です。
やはり、このヒトは面白い!!
何が面白いか?では、いよいよ説明に入りましょう。

紙に書いてあったのは写真のとおり「SERKAN College」という言葉です。いわば、その企画書だったんですね。SERKAN College・・・、直訳すれば「セルカン大学」です。こんな言葉を聞くと「アニリール・セルカンが何かすごいコトを教えてくれる」という「セルカン・スクール開講!!」みたいなイメージを持ちそうですが、そこはちょっと違うんですね。そして、そのちょっと違うところがミソなんです。彼がやりたいのは「みんなで集まって、新しいアイディアを考える」というコトだったんです。
(ボクの認識が間違って無ければ・・・)

彼の持っていた紙に書いてあったキーワードは「Evolution」「Intelligence」。直訳してしまうと「進化と知性」という、これまたなんとも胡散臭い言葉になってしまうのですが、彼の意図するところはそれとはだいぶ違います。日本語と英語のギャップですね。では、彼の真意とは何か?それは2つの言葉をキチンと紐解いていくと見えてきます。彼の企画書にはInteligenceという言葉が多く書いてありました。

「Inteligence」を日本語に直すと「知性」になるのですが、この知性という言葉のイメージは本来の意味とは若干かけ離れている気がします。知性という言葉を聞くと、何となく「知的、博識、頭がイイ、賢い」といったイメージを思い浮かべませんか?ボクはそんなイメージを抱いてしまいます。ですが、本来の知性ってもう少し違った意味合いがあるんですね。知性という言葉を辞書で引くとこんな言葉が出てきます。

「物事を知り、考え、判断する能力」

先ほどのイメージとは少し意味合いが違いますよね。
さらに、英英辞書で「Inteligence」という言葉を調べてみると、こんなコトが書いてあります。

「the ability to learn, understand, and think about things」
(何かの事柄について学び、理解し、そして考える能力)

つまり、Inteligenceという言葉は「世の中にある多くの事象を知り、それらを頭の中でちゃんと理解(咀嚼)して、そして考えるコトができる能力」というのが本来の意味になります。彼が使うInteligenceという言葉はこの意味において使われている・・・はず。同じように「Evolution」もその本来の意味を引いてみると、こんなコトが書いてあります。

「the scientific idea that plants and animals develop and change gradually over a long period of time」
(動植物が長い期間に渡って徐々に変化・展開するための科学的な着想)

これは「進化」という一言でまとめるには、大きくズレがありますよね。Evolutionって、基本的には「scientific idea(科学的なアイディア)」なんですね。きっとここが大きな違いなのでしょう。と、このように本来の意味をおさらいした上で、「Evolution」と「Intelligence」を繋げてみると、何となく意味が見えてきます。実は彼の企画書に掲げられたテーマは、

「人間には物事を知り、考え、判断する能力が備わっている。だから、その能力をフルに活かして、"未来"のキーとなる科学的なアイディアを考える」

というコトだったんです。「進化と知性」と言われると「う~ん・・・」という感じがしますが、こう言われると「あ~、なんかちょっと面白そう」って感じがしません?まぁ、そんなメインテーマが彼の企画の根本にあったんです。

さらにもう一歩進めましょう。そんなようなテーマが根底にある「SERKAN College」という構想なのですが、何故にCollegeなのでしょう?それは「三人寄れば文殊の知恵」です。ボクも一応、研究者の端くれなので、なんとなくこういった気持ちがわかるのですが、研究って一人で悶々と続けていると近視眼的な状況に陥りやすいんですよね。本当はもっと色んな視点・方向性から物事を考えなければならないのに、どうもステレオタイプな考え方に偏ってしまう。ボクも研究をしてい時によくその状態に陥りました。そんな時に全然違うバックグラウンドを持った友達と話していると「あっ!そうか!」と思う瞬間があるんですね。その時の「あ!」が文殊の知恵ほどあったかどうかは置いておいて、「三人寄れば三通りの考え方があって、それが新たな発見に繋がる」コトがある。そして、その発見は「自分一人で考えてたら1万年経っても出てこなかった気がする」という事態が往々にしてあるんですね。と、考えると「SERKAN College」って

「人間が持ってる素晴らしいIntelligenceをフル活用して、Evolutionをアニリール・セルカンも混ざって"みんなで一緒に"考えてみないかい?」

という構想なのでは?と感じたワケです。そう考えるとワクワクしちゃいません?
(ボクの捉え方が間違っていなければ、きっとこういう話のはず・・・)

ということで、そんな話を聞いちゃったボクは少しワクワクしているワケです。と、企画書を読んでいない皆様にとっては、やや「???」な話だったかもしれませんが、最後に簡単にまとめると「どうやらアニリール・セルカンが、"みんなで未来のキーとなる科学的なアイディアを考える"ためのSERKAN Collegeという企画を考えている」というのが今回の話で、インターナショナル・デザイン・リエゾンセンターではそれをフルサポートしようではないか、と奮い立った。という話でした。まだまだ頭の中がキチンと整理できていないので、色々と整理しつつ、また随時情報をお伝えできればと思います。

おそらく、この企画自体の募集も近々公開する予定なので、どうぞお楽しみに。

で、最後に余談なのですが、実はセルカンさんと妙に意気投合したコトがあります。それは「お互いに"セミナー"というのが大っ嫌い」だというコトです。かたや、これまで何百回と講演をしている人間、かたやセミナーを企画している人間が言うべきコトじゃないのかもしれないですが、事実そうなのだから仕方ない。いっつもセミナーをやっていて「人の話を一方的に聞いていて楽しいのかなぁ」なんてコトを思うんですね。もっと言ってしまえば「一生懸命メモとってるけど、そのメモって後から見ます?」なんてコトも思うんですね。ボクなら、最初からディスカッションしまくるようなものじゃないと参加したいとも思わないんだろうなぁ、なんてコトを思いながらセミナーをやっているワケでして。実際問題、この仕事に就くまでセミナーとやらに一切行ったコトがなかったんですね。セミナーどころか、授業すらろくすっぽまともに聞いた記憶がない・・・。な~んてコトをセルカンさんに言ってみたら「ボクもそう!!」っていうリアクションが返ってきまして。そんなところが妙に意気投合してしまいました。
そんなこんなで、この企画。きっと、ふつ~うのセミナーみたいなモノには100%ならないでしょう。どんな企画になるのか?それもちょっとワクワクしちゃいますね。というワケで、どうぞ乞ご期待下さい。
最終更新日 ( 2009年02月25日(水) )
 
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