2009年7月27日10時29分
知り合いの経営者から教えられたこの言葉の正確な表現は、「努力不足の四段活用」です。(1)努力不足→(2)責任転嫁→(3)被害者意識の醸成→(4)加害者への転嫁――とつながる過程を「四段活用」と呼んでいます。
さまざまな事柄について、私たちはついつい、「自分はなんと、人と比べて(あるいは自分の過去と比べて)、不幸なのか」と、身の回りの不幸を嘆きがちです。
いわく、自分が出世できないのは、自分よりも仕事をこなしていないのに、上司にえこひいきされているAさんがいるからだとか、自分の営業成績が上がらないのは、ライバル社のBさんが美しく、取引先からかわいがられているからだ、などです。
そして、Aさん、Bさんと自分を比べてどっぷりと落ち込み、揚げ句の果てに、嫌がらせしようと必要な業務連絡を行わなかったり、会議で意味もなく反対したり、取引先や他の部署に率先して悪口や根も葉もない噂(うわさ)を言いふらしたりしてしまいます。
この段階で、この人たちは自分が出世できないことや業績が上がらないことを、周りの人のせいだと「責任転嫁」しているのです。次に、「自分はAさんやBさんのせいで不幸だ」と「被害者意識を醸成」し、最後に、噂や悪口をばらまく「加害者への転嫁」を行っています。
しかし、このような転嫁の前に「自分のどこかに努力不足の点はないか」と冷静に振り返ってほしいのです。
例えば、Aさんは本当にえこひいきされているのでしょうか。実際は短期間で成果を上げ、問題解決能力に優れている実績があるのではないでしょうか。Bさんも単に美しいだけなのでしょうか。言葉のやり取りや身だしなみが気持ちよく、もともとの営業提案も優れているのではないでしょうか。
どうしても私たちは、何かがうまくいかないときや困ったときに、自分の努力不足や能力不足を棚に上げて、外部環境が自分たちを不幸にしているという被害者意識をついつい醸成して自分のプライドを守ろうとしがちです。
そんな落とし穴に陥らないためにも、自分が努力不足に陥っていないか、常に冷静に見つめられる目を養わなければならないのです。(経済評論家・公認会計士)
1968年東京都生まれ。経済評論家・公認会計士。早稲田大学大学院ファイナンス研究科、慶応大商学部卒。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得し、マッキンゼー、JPモルガンなどを経て経済評論家として独立。05年、「ウォール・ストリート・ジャーナル」から「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれる。著書に「お金は銀行に預けるな」(光文社)など多数。
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