2009年9月7日10時48分
これは私がコンサルタント時代、さまざまな評価基準から「ここを直してほしい、あそこを直してほしい」という要望に悩んでいるときに、上司から教えられた言葉です。
なぜ、短所を好きにならなければならないのか。それは、私たちの短所は長所の裏返しだからです。
例えば、私は物事の目標をつくって、そこに向かって最短距離で近づくのが大好きですし、とても得意なことだと自負しています。
しかし、その方法は半面、「目標がないとまったく動かない」ということですし、近づくのが早いということは、場合によっては「拙速だ」ということになります。
私たちの個性、すなわち他の人の平均的な性質と異なる部分は、長年の習慣づけと成功体験から来るわけです。すなわち、こういうやり方をしたらうまくいったということを学び、次からそれを使い続けるため、それが長所と呼ばれるようになります。
ところが、私たちの時間も気配りも一定の資源しかありませんから、何かを達成しようとした場合、必ず何かが犠牲になります。慎重で、きっちりした人は、どうしてもスピード感が犠牲になりますし、気配りができるまじめな人は、何かを割り切ろうとしたときになかなかうまく決断できないこともあります。
だからこそ、短所そのものを是正しようとするより、短所は自分の長所の裏返しだと認めて好きになり、長所で補えるようにすることが、実は短所克服の鍵なのです。
また、このような短所をカバーする場合には、自分の長所で補うだけでなく、他者の力を借りることもとても重要です。例えば、私が苦手とする細かい文章の推敲(すいこう)、すなわち、どの部分の意味がわかりやすく、どの部分の文章が不十分かについては、編集者の方をはじめ何人もの人に読んでもらって、自分では気づかない部分を指摘してもらい、直すようにしています。
私たちにとって自分の長所は、得意なあまり、空気のようになかなか自覚できない一方、短所についてはついつい目につき、人から指摘を受けるので悩んでしまうのです。
しかし、自分の長所と短所が表裏一体であることが分かると、急に短所がいとおしくなってくるのです。
(経済評論家・公認会計士)
1968年東京都生まれ。経済評論家・公認会計士。早稲田大学大学院ファイナンス研究科、慶応大商学部卒。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得し、マッキンゼー、JPモルガンなどを経て経済評論家として独立。05年、「ウォール・ストリート・ジャーナル」から「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれる。著書に「お金は銀行に預けるな」(光文社)など多数。
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