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地域住民を巻き込んだ事業スタイルや、自治体との連携をした事業、地域の特産品を活かした事業等、地域と連携をしながら発展する事例を紹介します。
新着情報先進事例地域連携就労支援工賃アップ助成先訪問バックナンバー
 ふっくりあハウンの分場「モォンマール」の外観
更新日 : 平成21年06月25日
地域連携と機能分化により就労の継続を実現する維雅幸育会
三重県 社会福祉法人維雅幸育会

インタビュー風景(動画)

※動画の視聴条件などはこちらをご覧ください。


一人ひとりの希望や状態に合わせて利用できる施設を目指して

びいはいぶ施設長奥西利恵さん
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 三重県伊賀市は、伊賀忍者の里、松尾芭蕉生誕の地として知られる人口約10万人の城下町です。
 伊賀の里に拠点を構える社会福祉法人維雅幸育会は、昭和63年に「ふっくりあ」のセンター長奥西利江さんが、障害者の親やボランティアたちと一緒に立ち上げた作業所を前身としています。現在は一人ひとりの希望や状態に合わせて利用できるように、それぞれの事業所に特色ある機能を持たせ、「上野ひまわり作業所」(知的障害者授産施設)、「びいはいぶ」(就労移行支援事業所)、「ふっくりあ」(就労継続支援B型、生活訓練・生活介護、グループホーム・ケアホーム、ヘルパーステーション、地域活動支援センター)を運営しています。


くみひもづくりに励む利用者
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 「ふっくりあハウン」は、就労継続支援B型の施設です。ここでは、利用者のみなさんが「パンづくり」や伊賀上野の伝統工芸である「くみひもづくり」に励んでいます。


毎日食べたくなる食パンにこだわった「ふっくりあハウン」

生地を成形する利用者
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 「ふっくりあハウン」でパンをつくりはじめたのは、奥西さんがデンマークを視察した際、パンの焼ける香りが立ち込める空間で障害の重い子どもたちがとてもリラックスして過ごす様子をみて、「うちのメンバーたちもこんなふうに過ごせる空間があったらいいだろうな」と思ったことがきっかけだそうです。
 「ふっくりあハウン」では、パンづくりをはじめる際、職員ではなく利用者の手でつくること、また、バザー等で不定期に販売されるパンではなく、毎日食べていただける美味しいパンをつくることにこだわりました。
 まず、作業の工程をシンプルにするために、多くの種類のパンを焼くのではなく、角食パンに絞り込みました。また、付加価値を付けるために、天然酵母の生地にこだわりました。
 しかし、天然酵母のパンは、気温や湿度で発酵の具合が変わるため、品質を一定に保つのが大変です。そのため、機器の購入先から指導員を紹介していただき、職員が専門的なアドバイスを受けることで、日々、品質管理を徹底するようにしました。
 販売面では、不特定多数の顧客に販売するのではなく、地域の学校や市役所など、特定の取引先に絞り込み、注文ありきで製造、販売、配達までを行なうようにしています。生産に無駄が出ませんし、お客様の顔が見えるので、利用者にとっても張り合いがあるようです。また、「万が一、味が落ちた時には遠慮なくご指摘くださいね」と取引先にお願いすることで、「美味しいパンを焼かないと注文が続かない」と、いい意味で緊張感を保てている様子です。


天然酵母の食パンを焼き上げる利用者
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 利用者が生地をまるめて成形し、一本一本生地を確認しながら丁寧に焼き上げ、直接届けられる天然酵母のパンは評判となり、地元で有名なホテルから「宿泊客に提供したい」と声がかかるまでになりました。そして、利用者のスキルアップとともに、少しずつアイテム数を増やし、現在は、角食の他にも、山食の黒糖パン、ゴマパン、ロールパン、ソフトフランス、レーズンパンをつくることができるようになりました。さらに、従来の工房での生産が限界を越えたため、今年3月に「モォンマール」という独立したパン工場を新築し、現在は角食だけでも一日平均約80本を焼き上げるようになっています。


利用者の総合的な働く力を育む「びいはいぶ」

びいはいぶの利用者のみなさん
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 仕事内容は、まず、美容室向けのシャンプー、トリートメントなどラインに流れてくる製品に、しっかりとロット番号が打たれているか、押しても液もれしないかどうかを検品します。検品の結果、製品に問題がなければ、ラベルを貼り、商品をクリアケースに入れて梱包し箱に詰め、パレット上に積んでいきます。その箱をダンボールに入れて積んでいきます。取材当日は、これら一連の工程を専門職員1名とパート社員2名と利用者6名の計9名が役割を分担し黙々と仕事を進めていました。
 「びいはいぶ」が取引先の工場に出向いて作業を行なうのは、「本当の働く力は、本物の働く場所での体験の中でしか育たない」(奥西利江施設長)と考えているからです。奥西さんの言う“働く力”とは作業能力を指すのではなく、仕事を続けていく体力や社会人としての立ち居振る舞い、マナーやあいさつ、援助の求め方まで含めた総合的な力のことです。


びいはいぶの利用者とパート社員のみなさん
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 現在の活動スタイルは、法律上の制約があるためミルボンの社員から仕事上の指示を受けたり、一緒に働いたりすることはありません。それでもトイレや休憩室で顔を合わせれば、礼儀正しく挨拶をし、ミルボンの社員から声をかけられることもあります。また、前述した通り、「びいはいぶ」で一緒に働くグループの中には、利用者だけではなく、パート職員の方々が含まれています。取材で訪れた日も、工場のラインでパート職員と利用者が一緒に作業をするのはもちろん、一緒に休憩をとり、楽しそうに会話しながら食事を取っていました。専門職員との関係とは異なり、共に働くパート職員との関係は、社会との関わり合いそのものです。「びいはいぶ」では、こうした社会との自然な関わり合いによって、利用者の意識に変化をもたらし、“社会性”や奥西さんの言う“本当の働く力”を育んでいくのです。


企業との信頼関係を積み重ねる

びいはいぶサービス管理責任者民田絵都子さん
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 「施設内で働いていた時と比べ、利用者のみなさんが休まなくなったことが何より大きな変化です」。こう語るのは「びいはいぶ」のサービス管理責任者の民田絵都子さんです。利用者たちは企業の現場に出向いて働くことによって「自分が頼りにされている」と実感することができ、仕事に対する責任感が芽生えるようです。
 一方、企業サイドは、「びいはいぶ」の活動をどのように受け止めているのでしょうか?


(株)ミルボン上野工場の工場長立石明弘さん
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 以前から障害者の就労に対して理解を示していたというミルボン上野工場の立石明弘工場長は
 「障害のあるかたたちが大人数で来られることに対しては正直不安もありました。でも、実際は、常時、職員のかたがついてくれるので、コミュニケーション上の問題もありませんし、また、ISOをはじめ安全衛生面もうちの会社の方針にご協力いただき安心して任せることができています。彼らが無駄話をせずに真面目に作業する姿を見て、我々も見習わなければならないと感じているくらいです」と語り、利用者たちの働きぶりに感心している様子です。
 工場の現場では、当然、不良品や欠品、納期の遅れは許されません。また、現場では増産や納期の急な変更もよくあるそうで、民田さんは「行き違いによるミスが起こらないようミルボンの担当者のかたと綿密な打ち合わせを繰り返し、要求に応えられるよう常に企業との関係に気を配っている」と言います。こうした職員の努力や利用者たちのがんばりの結果、ミルボン上野工場からは複数の仕事を受注できています。「びいはいぶ」が運搬用のパレットの洗浄やシャンプー剤のラベル貼りだけではなく、工場のラインをまるごと任されているということは、何よりもミルボンから信頼されている証でしょう。


地域で働き続ける環境づくりを

松尾芭蕉を祭った俳聖殿
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 さらに、行政との関係作りという点では、最近、指定管理者制度を活用しています。
 伊賀上野城のある上野公園の敷地内には、「俳聖殿」という伊賀市で生まれた松尾芭蕉を祭った重要文化財があります。この「俳聖殿」の指定管理者として伊賀市から管理を委託され、週に一回、「びいはいぶ」の利用者たちが清掃にあたっています。近年、多くの自治体は、管理運営経費を削減するために指定管理者制度を活用しています。指定管理を委任された施設側のサービスレベルを十分に確保することができれば、指定管理者制度は管理者の裁量の自由度が高いため、障害レベルに合わせて仕事を組み立てることができます。そのような利点からも、維雅幸育会では今後も積極的にこの制度を活用していくとのことでした。


俳聖殿の掃除をする利用者
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 維雅幸育会は、利用者のニーズや特性に合わせて『事業の機能分化』を図るとともに、『地域の消費者』『地域の企業』『地域の社会資源・公共サービス』、それぞれとうまくつながることで「働くニーズ」を満たす環境づくりをおこなってきました。職場開拓や事業拡大は、地域の良好なコミュニケーションに発展し、この街の障害者理解にも着実につながっています。そのすばらしい好循環がもたらしたものは、利用者が心地よく地域で働き続けられるというあたりまえの生活でした。
 今回は、利用者と地域の資源を結びつけ、障害のある人の活躍の場を支え続ける、そんな福祉事業所の存在意義を強く感じた事例でした。


取材日 : 平成21年6月
今回のポイント

@ 取り扱い商品を角食パンに絞り込み、また、顧客も安定した需要が見込める特定の取引先を選定し、質を保ちながら、利用者の成長とともに少しずつ商品アイテムや取引先を広げている
A 企業が望む生産量の確保と品質管理に対応し、企業からの信頼を得ている。
B 地域と連携し、利用者の能力や希望に応じて働き続けられる環境作りに成功している。
経営コンサルタント 石田 和之
施設概要

  施設名 びいはいぶ
ふっくりあハウン
  開所時期 平成18年10月
  設置者名 社会福祉法人維雅幸育会   利用者数 びいはいぶ 定員20人 現員14人
ふっくりあハウン 定員20人 現員19人
  所在地 三重県伊賀市菖蒲池1848-1   職員数 びいはいぶ 常勤5人 非常勤7人
ふっくりあハウン 常勤6人 非常勤5人
  電話番号 0595-39-0797   FAX 0595-39-0797
  代表者 前田 俊二 氏   連絡担当者 奥西 利江 氏
  施設種別 就労移行支援事業所(びいはいぶ)
就労継続支援B型(ふっくりあハウン)
  事業内容 〔びいはいぶ〕
ヘア化粧品の加工、医薬部外品のリサイクル、パレット洗浄、文化財「俳聖殿」の管理清掃
〔ふっくりあハウン〕
パン製造、くみひも 他
  障害種別 知的   平均工賃 びいはいぶ 428円(時給)
ふっくりあハウン 245円(時給)


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