以前タクシー運転手について、僕なりの意見を書いた事がある。
今日はそれのちょっとした続き。
少し前に仕事でタクシーを使った時、伝えた行き先がわからない運転手がいた。
目的地はそれほど遠くなく、更には地元のタクシー会社だったので、知ってるのが当然だと思っていた。
だが運転手は道を知らない。
仕方なくルートを細かく説明しながら、目的地に向かう事にした。
タクシーの中でゆっくりくつろいでから、仕事に挑もうという僕のもくろみは崩れさり、ちょっと不満が残る気分だった。
もちろんそんな気分は、自分の胸の内だけにしまっておいた訳なのだが。
それから数日後…
同じ仕事現場へ行くのにタクシーを使ったら、偶然にも先日のタクシー運転手と同じ人だった。
運転手さんもすぐに先日の客だと気付いた様子。
こうした状況になると何故か不思議と、2人の中で会話が始まってしまうのだ。
会ったのはたったの2回目…
しかも1度目は会話すらしていない状態なのに、妙な親近感が沸いてくるのである。
海外で日本人に会った時って、こんな気分になるのだろうか。
とにかく僕の中の喋りたい虫が、ウズウズし始めるのだ。
と言ってもたいした事はない、ただの世間話しである。
到着するまでの暇つぶし感覚だ。
しばらくして運転手さんとの会話も尽き始め、そろそろ目的地に到着しようとした瞬間、運転手さんが僕に言った。
「こちらの道でしたよね?」
道を確認したのだ。
そこは普通ならあまり通らない狭い道。
ほんのちょっとだけ近道という理由で、僕がこだわって使っている狭い抜け道だったのだ。
そんなこだわりのマイルートを、運転手さんが覚えていてくれた事にビックリした。
そして僕は運転手さんに、1つの質問をした。
「道って結構たくさん覚えているんですか?」
そんな風な質問だったと思う。
すると運転手さんの答えはこうだ。
「このルートはお客さんに教えてもらって知ることが出来たんですよ。僕らはお客さんに育てて貰ってるんです。」
そう答えたのだ。
お客さんに育てて貰ってる…
僕の心にすごく響く言葉だった。
わからなかった道を、次には必ず把握しておく勉強熱心さに加え、お客さんからの教えを素直に請う、謙虚な気持ちを持っている訳なのだ。
素敵なタクシー運転手だと思った。
最近あまりタクシー運転手に良いイメージがなかった分、とても衝撃的な出来事だった。
自分の中にあるタクシー運転手に対する偏見的な見方も、見直さなければいけないと思った。
こんな気持ちにさせてくれた運転手さんに、心から感謝なのだ。
仕事に対する意気込みや熱意…
プロならば当然、大切にしなければいけない要素である。
運転手さんが一生懸命道を覚えようとした努力は、客の僕には充分伝わってきた訳なのだから。
出来ない事があっても、とにかく一生懸命な姿が見られたら僕はそれでもいいと思う。
一生懸命な想いが伝われば、満足感だって生まれてくるのだ。
サービス業、いや…
人と人とのやり取りってそういうもんだと思う。
タクシー運転手も芸能人も…
結局は人に与えてなんぼの仕事な訳だから。
どんな仕事もハートでするって事を、絶対に忘れてはいけないと思う。