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派遣元事業主と派遣先の間に別の派遣会社が介在する「二重派遣」、派遣事業主による日雇い派遣労働者の給与からの不正な「天引き」、製造業者が派遣労働者を「請負」と偽り、労働者の使用に伴う責任を免れようとする「偽装請負」など、派遣労働をめぐる問題が次々と発覚している。非正規雇用者は全雇用者の33.2%となり(2006年総務省調べ)、派遣社員や契約・嘱託の約30%が年収200〜300万円未満の低水準に集中する状況となっている(労働白書2007年)。生活に多大な影響を及ぼす雇用環境、拡大する格差にどう対応していくのか? 労働者派遣法改正について各党議員に話を聞いた。 |
【労働者派遣法改正の推移】
労働者派遣法は、「労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業に関する条件の整備等を図ることにより派遣労働者の雇用の安定や福祉の増進などに資する」ことを目的として、1985年に制定された。正式には「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」という。
この時点では、法の対象業務が通訳やソフトウェア開発など専門性の高い13業務に限定されていたが、1996年には26業務に拡大され、1999年には“規制緩和”により対象業務が原則自由化となった(派遣期間は一般業務で最長1年)。2004年においては製造業も解禁され、派遣期間は最長3年に延長、専門的な業務は無制限となった。
【対立する使用者と労働者、厚生労働省の動向は?】
今年6月に日本経団連が発表した「2007年度日本経団連規制改革要望」、このなかで経団連は「働き方の選択肢を多様化し、生産性の向上を図るべく、労働法制を見直すべき」とし、派遣禁止業務の解禁や企業側から派遣労働者への雇用契約申し込み義務の廃止、派遣期間制限の撤廃など、現行法のさらなる規制緩和を求めている。
一方、労働者側は、これまでの一連の経済界の要望による法改正が、企業の人件費削減を図った正社員から派遣社員への転換や派遣労働者の不安定雇用、生活保護水準に達しないワーキングプアやネットカフェ難民などを生み出した温床となっているとし、派遣先が決まったときだけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」から派遣会社に常時雇用される「常用型派遣」への転換、「日雇い派遣」の原則禁止など、現行法の抜本改正を求めている。
現在、厚生労働省では、公益代表、労働者代表、使用者代表21名からなる「労働政策審議会 職業安定分科会 労働力需給制度部会」において、現行法の見直しについて検討中だ。「現段階においては法改正を前提としたものではない(担当者)」としているが、使用者側、労働者側双方から法改正を求める声は高く、来年の国会での動きが注目される。(10月31日現在)
【関連リンク】
労働者派遣法(厚生労働省)
労働政策審議会 職業安定分科会 労働力需給制度部会(厚生労働省)
日本労働組合総連合会(連合)
全国労働組合総連合(全労連)
2007年度日本経団連規制改革要望(日本経団連)
「派遣法は改正を」国会内シンポで訴え(Janjan)
動画撮影・編集:永尾理恵子、森田鉄平、兼古勝史/七尾功
テキスト・編集:七尾功/緑川綾子
写真:野村昌二
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