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きょうの社説 2009年11月2日
◎臨床研修医が増加 充足率高める一層の努力を
大学医学部を卒業する新人医師が研修先を選ぶマッチング結果が公表され、北陸3県は
いずれも来年度の臨床研修医が増えることになった。前年度比の増加数は石川が38人、福井が24人、富山が21人となり、3県が全国ベスト3を占める健闘ぶりである。とりわけ前年の定員充足率が全国最下位だった富山県が39・2%から59・2%へと 巻き返したのが目を見張る。3県は大学を中心とした医師供給で補完し合う面もあるだけに、北陸全体で研修医が確保できたことの意味は大きい。 臨床研修制度は都市部に集中する研修医の偏りを是正するため、都道府県や病院ごとの 募集定員を設定し、地域への医師派遣機能を持つ大学病院の定員枠を優遇するなどの見直しが行われた。その効果がどの程度表れたのか詳細な検討が必要だが、北陸では各病院が精力的にプログラム改善やPRに取り組んだことが一定の成果を挙げたのは間違いないだろう。 ただし、県全体の充足率をみれば、大都市を抱える都府県には及ばず、採用内定ゼロの 病院もいくつかある。医師不足を背景に地域間の研修医争奪戦は当分続くとみられ、医師確保策の手を緩めるわけにはいかない。それぞれ大学を核にして自治体や病院が連携を強化し、充足率を高める一層の努力を望みたい。 県全体の充足率は石川が67・5%(前年56・5%)、福井は74・4%(60・4 %)で、富山とともに伸びが目立った。トップは東京の92・0%で、続く神奈川、愛知、大阪、福岡が88%を超える一方、鳥取、島根は3割台にとどまり、全体としては地域格差が改善されていない現状が浮かび上がった。臨床研修制度の仕組みになお不備があるのか、それとも地域固有の事情が反映されているのか検証が不可欠である。 北陸の大学病院では、金大の充足率が81・6%、金沢医科大が56・3%、富大が6 8・8%、福井大が78・6%となった。大学病院は地域の医師供給の司令塔であり、充足率はできる限り100%に近づける努力がいる。確保した研修医も地元に定着してこそ戦力である。勤務環境を整え、地域医療を担う志を大事に育ててもらいたい。
◎事業仕分け縮小 無駄削減には力不足
来年度予算の無駄を洗い出す行政刷新会議が1週間ぶりに業務を再開した。全体的な作
業の遅れもさることながら、仕分けチームに新人議員が入っていたことに、民主党の小沢一郎幹事長が「聞いてない」と不快感を示し、当初32人だった国会議員が7人にまで減らされ、作業まで中断したのは残念というほかない。今後、民間からのメンバーを増やすとしても、この程度の人員では、あまりにも力不足ではないか。無駄の排除は、民主党のマニフェスト(政権公約)の骨格部分であり、国民の関心も高 い。鳩山由紀夫首相がメンバーを「必殺事業仕分け人」と激励し、鳴り物入りで作業をスタートさせながら、小沢幹事長の一声で4分の1以下にまで削られてしまった。作業の遅れと人員不足により、仕分け対象の事業は減ることになる。こんなことで無駄の洗い出しが十分できるのか、はなはだ疑問だ。 小沢幹事長の意向で、仕分けチームは当選3回以上の議員に絞られた。当初のメンバー には新人議員14人がいたが、作業が本格化すると、国対が行う新人研修や国会の委員会活動との両立が困難になるという理由で外された。 だが、新人議員といっても、官僚出身者など財務に明るい人材もいただけに、党からの 横やりには違和感も残る。事業仕分けの実務より、新人研修の方が重要という理屈は納得し難く、143人の1年生議員を「子ども扱い」するのはいかがなものか。仙谷由人行政刷新担当相とグループ統括役の枝野幸男元政調会長は以前、「反小沢」の代表格と目されていただけに、小沢幹事長との距離感を思わざるを得ない。 議員7人でヒアリングを再開した仕分けチームは、当初240程度としていた対象事業 を200前後まで減らす見通しという。鳩山首相が激励したメンバーがあっという間に空中分解したことで、行政刷新会議の「金看板」は早くも色あせてしまった印象がある。小沢幹事長の異常なまでの影響力の強さと意思決定に至るプロセスの不透明さは、民主党が抱える危うさでもあろう。
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