記事の立ち読み
米国はいつまでも鳩山政権にやさしくはない 「政治のウソ」を暴く米ウェブサイトの威力
「サイバー戦争」に向き合う米国の不安 「政治は数」さらに高まる小沢幹事長の「存在感」
[深層レポート 日本の政治 200]
「政治は数」さらに高まる小沢幹事長の「存在感」
「政治は数」さらに高まる小沢幹事長の「存在感」
>>本誌96ページ
 民主党の小沢一郎幹事長にとって「政治の師」とも言える故田中角栄元首相はかつて「政治は数であり、数は力、力は金だ」と語ったという。かなり乱暴な言い方ではあるが、政治の一面の真実を突いた言葉である。田中氏が逝去して十五年以上たつが、小沢氏は、師の言葉のうち少なくとも「政治は数」の部分だけはしっかりと受け継いだようだ。この場合の「数」とは議員数のことである。実際、最近の小沢氏は、「数」に尋常ではない執着ぶりをみせている。
 小沢氏が九月三十日に静岡市を訪問した際の記者会見でこんなことがあった。この日、静岡駅北口の「ホテルアソシア静岡」で、十月二十五日投票の参院静岡選挙区補欠選挙に民主党公認で立候補した土田博和氏の記者会見が開かれた。同席した小沢氏は、記者団からの予期せぬ質問に少しうろたえ、困惑した表情をみせた。
 記者「土田候補に期待することは?」
 小沢氏「質問の趣旨は、何を期待しているのかっていうこと? うーん、何を期待しているかって言ったって……」
 そして再び笑顔に戻って、こう言った。
「当たり前ですが、参院の安定した状況に寄与することによって、国政の安定した運営を行なうということを……(中略)……期待しています」
 小沢氏の言う「参院の安定した状況」というのは、つまり民主党が参院で過半数を制することだ。
 こうした記者会見の席では、土田氏の人物像や得意な政策分野などを説明した上で、国会で得意分野を生かして活躍してほしい、などと答えるのが模範的な回答だろう。だが、小沢氏はきっぱりと、土田氏に何よりも期待しているのは、土田氏当選によって民主党の議席がひとつ増えることなのだと言い切ったことになる。正直と言えば正直である。民主党会派(国民新党などを含む)の参院での議席数は現状では過半数の百二十一議席まで三議席足りない。社民党の数を足せば過半数を超えるとはいえ、同党とは政策面で相容れない部分もあり、政権の不安定感は否めない。小沢氏がひたすら「政治は数」の原則を追求する姿勢を強調してみせるのには、そんな背景がある。

「選挙で勝つのが新人の仕事」

「政治は数」という数の論理にこだわるのなら、当然、選挙戦での勝利が不可欠である。小沢氏はもともと選挙好きで知られており、最近は特に「何でも選挙に結びつけて考える」(民主党職員)傾向にある。
 十月五日、民主党国会対策委員会のメンバーが小沢氏のもとを訪ねた。国会の各委員会のメンバー構成が主な話題だったが、十月下旬に召集される予定の臨時国会での法案審議に話が及ぶと、小沢氏は少し渋い顔をみせた。
 同席者によると、小沢氏がもっとも気にしていたのは、民主党が衆院マニフェスト(政権公約)に掲げた目玉政策のひとつである子ども手当のことだったという。当初、民主党内では、子ども手当支給に関する法案を秋の臨時国会で処理する計画だった。だが、手当の財源となる来年度予算の成立前であるとの事情などもあって、この問題を所管する厚生労働省では、法案処理は来年の通常国会に先送りする方針が固まりつつあった。席上、小沢氏はこう言ったという。
「子ども手当は早くやった方がいいんじゃないか。参院選に間に合うのか」

(続きは本誌でご覧下さい)

「創刊20周年記念キャンペーン」のページで、最新号の記事数本を全文公開しています。更新は週に1本ずつです。現在公開されているのは >> こちら
定期購読の申し込み  
新潮社 フォーサイト