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山にも行くし勉強もします
金曜も色々な事があったが、手術も無くまあまあの時刻に帰宅できた。幸いな事に夜から日曜にかけて急遽差し替えで代務の先生が来てくれている。
天気予報では土曜が晴れ、日曜午後から雨だ。また土曜夕にはどうしても出席勉強しておきたいテーマの研究会が名古屋であった。金曜の仕事が激務でなかったので、多分土曜日は早起きできるだろう。
というわけで様々な事を考慮し、土曜は早朝出動下呂周辺の藪山を登り、下呂温泉で汗を流してから、名古屋に移動学会出席という計画を立てた。
さていわゆる南飛騨地域には、ボチボチだが味わいある低いが幾つかある。ただどれも積雪量少ないので山スキーには不適だ。夏は暑いので、どちらかと言うち秋から冬が登山最適期だろう。
なお下呂温泉周辺で一番高い山は御前山の北にある1650m峰で、登山道は無い。御前山は御岳修験道の山として知られ良く登られているのに、対照的な誰も知らない?藪山だ。
今回はそこで藪漕ぎGPS登山を楽しむ事にした。新型GPSの使い具合を調べるのが最大の目的なので、御前山から稜線藪漕ぎするだけではつまらない。反対側の湯屋温泉側から入山し、不明の道からコテコテ藪漕ぎで頂上を目指す事にする。
予想通り笹薮の嵐で、登路に使った沢も苔でツルツルの藪沢だった。とはいえそれがある意味目的でもあるので、せっせと背より高い藪を漕いで、頂上に至る。
目印も景色も何も無い頂上だが、付近で一番高いというのが嬉しかったりする。
目論見は当たり昼過ぎには下山、温泉経由で名古屋の学会にも間に合った。しっかり勉強と情報収集も出来てこれまた嬉しい。
というわけで慌しい土曜日だったが、好きで楽しい事をやっているのだから、それが苦でも無いし大変だとも思わない。
新型GPSで訳分からん頂上を目指した

背より高い笹薮の尾根を行く

どうやら登り尾という名前がある山らしい
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人も治療も皆異なります
昨夜は夕食後、就寝前の時刻に分娩室、続いて救急外来からの要請で出動を要した。既に少し飲んでいたので、ケッタマシーンで寒空を飛ばす。
分娩はいわゆる飛込み急墜早産で救急隊員や付き添いの方も大変だ。小児科の先生の緊急出動も要する。
とはいえこういう時の定例通りで、母体は安産で新生児は良く泣いてくれる。周囲の方々はびっくり大変だったろうが、こういう事に慣れている産科医には珍しがったり驚いたりする程のものでもない。
それよりも僕にはその後の急患さんの方が気の毒だった。とはいえその理由は書けない。ともかく睡眠時間が削られる事は無かったから、それは良かった。
たまたまそういう流れにあるのか、今日の外来も非常に幸運な方から、とても気の毒な方までバラエティーに富んでいた。シリアスな方の直後にコミカルな方も受診される。どの方も真剣なのだが、対応する医師は心のチャンネルを切り替えるのに大変だ。
臨床上困難や珍しい症例も多く、僕の外来をそのままテレビドラマにして流しても成り立つんじゃないかと思う。それはともかくテレビと異なり、僕は現実に仕事を先に進めないといけない。同時並行で立ち止まる事無く次々と数をこなしていく。
さてさて僕は分娩対応のみならず、多数のガン患者さんも常日頃診察治療している。
ガン治療でも、常に何らかの形で、どこまで積極的に抗がん剤や手術を行うかの選択を迫られている状態だ。この判断は医療に関する高度な知識も要するし、医師や患者の人格でも左右される。
医師に時間が沢山あって、患者さんや家族の判断レベルも問題ない程度だったら、医師と患者さんが良く話し合ってその上で治療方針を決めるのがベストだろう。
医療ジャーナリストやニュースキャスターもテレビでそう言うし、教科書的にもそれが正しい。
しかしもちろん現実は教科書と異なる。家庭環境は人それぞれだし、持っている時間も人により異なる。説明の土台となる基礎知識も皆違う。
一般的には健康は何事にも代え難い価値あるものだと思われているが、お金や家族や時々の安楽の方が大事だと考える方もたくさんいるものだ。もちろん日本の医療制度のあり方も、これらの判断には関係してくる。
僕はそれが悪いと言うつもりは欠片も無い。病名は同じでも人はそれぞれで、治療は全て異なって良いと思う ただその後始末は勘弁してもらいたいと、内心思う事はあったりする。 |
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藤原紀香効果を期待しますよ
急に寒くなったからだろうか、今週は外来が比較的空いてくれている。
昼ごろに外来が問題なく済んでくれれば、午後の各種業務の段取りが随分と楽だ。緊急手術や分娩にも余裕を持って対応できる。
昨夜も上手い事夜中の呼び出し業務は無しで済んだ。寝不足感無しで、多くの重症ガン患者さんに対する説明にも比較的時間をかける事が出来る。時間に追われて大急ぎで話す必要が無いと、それだけで何となく嬉しい。
僕は多くの分娩と共に、多くのガン治療も取り扱っている。分娩業務に余裕ある内に、先送りしていたガン治療の段取りも出来るだけ済ませておかないといけない。
さてさて昨日地元産婦人科医同士の情報交換会?から帰宅したら、たまたま産婦人科医を主役としたテレビドラマが放送されていた。どうやら主人公の女産婦人科医を藤原紀香が演じているらしい。僕は普段テレビドラマはまず全然見ない人間なのだが、家人が見ているので、ついつい一緒に見てしまう。
当然ながら予想通りドラマの内容はプロから見て可笑しな事が多い。何から何まで変でとても見ていられないに近い。しかしそれはテレビドラマだから仕方ないし、いちいち指摘注文する気もしない。
医療関係や山岳関係の映画やドラマに共通して言える事だが、リアルに描こうとすればするほど変てこなアラが出る。もしリアルを追求するのなら産科医の宿命である寝不足の辛さ、説明やカルテ記入の煩雑さ等を描かないといけないだろうが、それではドラマにならんのだろう。
僕の希望としてはどうせならもっと徹底的にフィクションや娯楽を追及してもらいたいと思う。藤原紀香を最高にカッコよく描いてくれたら、もしかしたら産婦人科がそういう仕事だと勘違い?した研修医が産婦人科医志望になってくれるかもしれない。そうすれば僕としては一番有難い。
考えてみたら僕も、大学受験の際に、医学部にするか理学部にするか迷った時、手塚治の「ブラックジャック」で決めたような所がある(それだけではもちろん無いですが・・)。登山では新田次郎の「孤高の人」の影響を大きく受けた。
収入や権力や社会的使命に目覚めて、自分の将来を決める若者なんて、実際にはほとんどいない。
だいたいほとんどの若者は、カッコよい主人公が活躍するテレビや漫画や本の影響を受け、自分の将来を決める。つまらないリアルを追求するくらいなら、ここは徹底的にカッコよい藤原紀香に期待しちゃったりする方が、僕には随分とマシで楽しかったりもする。 |
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良く働き、良く遊び、良く食べます
火曜の夜も日付が変わる頃に分娩出動を要する。ちょうど昼間の疲れで凝った身体を、テレビニュース見ながらストレッチでほぐしてる所だった。
一仕事終えて更に追加で深夜ストレッチをし、風呂に入って遅い眠りに付こうとする。
そうしたらちょうどテレビでU17ワールドカップサッカーの衛星中継が盛り上がってる所だった。試合はナイジェリアの首都ラゴスで行われているという。
まだ若い高校生のサッカー選手が日本代表として、こてこてのブラックアフリカ都市まで出かけ、永世中立国スイスと戦っている。トップレベルのサッカー選手と言うのはまさしく世界を股にかけて戦うのだなあと思い、ついつい深夜遅くまでテレビを見てしまった。
というわけで、水曜日の仕事はまたまた寝不足業務となった。分娩絡みとはいえ、自業自得でもある。ここは文句言わずひたすら書類業務に励んだ。
とそこにまたまた要注意分娩が入ってきた。これは間髪おかず手術にしておいた方が良い。幸い午後の集団検診と看護学校講義の予定がこの日は無くなっていた。
外科の先生に協力して頂き都合の良い時刻に手術をねじ込ませていただく。手術はやや修練を要するものだったが、もちろん問題なくこなした。
その後も書類を大急ぎでこなして、何とかまあまあの時刻に業務一段落できた。
身体は既に十分疲れているが、ここで挫けてはいけない。隔週のフットサル練習に夕方から参加して、ゴールも決めてくる。
更にその後は大急ぎでビックアリーナからグリーンホテルに移動し、3人しかいない業界懇親会に参加、中華料理など堪能した。
そんなこんなで睡眠時間短く、かつ良く働き、良く動き、良く飲み食いできた。こういう毎日を送っていれば、随分と世間の経済も活性化するんじゃないかなんて思ったりする。 |
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結果次第で裁かれる時代
昨夜は仕事も早く終わり、夜中に呼びだされる事も無かった。今日も思ったよりは外来が空いてくれて助かった。内科や救急外来ではインフルエンザ関係で大変だし、婦人科関係の心配の種はたくさんあるのだが、分娩も無く比較的業務は落ち着いてくれている。
さて、今朝の中日新聞朝刊に今や岐阜県で唯一?残った貴重な県警ヘリが、白山で山岳救助の訓練を行ったという記事が載っていた。普段良く山に入る僕としては、警察がこういう訓練をしてくれる事はとっても有難い事だと普段から思っている。
今や山岳遭難の救助にヘリコプターは必須の時代だ。山好きの人間としては、とにかくヘリのお世話にならない様、常日頃気をつけておくべきなのだが、人生いつ何時何が起こるか分からない。僕だっていつ、山の事故でヘリコプターのお世話になるか分からない。
本当はいけない事かもしれないが、僕みたいな単独で山に入る人間は、イザとなればヘリコプターがあるということを、誰もが少しは考えに入れて、山に入っているものかもしれない。
そういう中、先日ジャンダルムで起きた防災ヘリの事故はやはり気になる事故だった。
もしあの事故が起訴されて業務上過失致死で有罪と言う事になれば、将来山岳遭難救助に公共のヘリコプターが全く飛ばなくなる可能性がある。そうなるとやはり困る。
県警ヘリが遭難救助の訓練を行ったというニュースの裏を読むと、おそらくあの事故が起訴される見込みが減ったという事かもしれない。そうであれば良いと思う。
僕は山から若者がいなくなった理由は、過去の検察の判断が大きく関係していると考えている。
学校の引率登山で事故がおきると教師?が有罪となる時代になり、高校山岳部は絶滅した。大学山岳部も絶滅危惧状態だが、それも山登研の大日岳の事故が大きく影響している。それが良いか悪いかは別として、これで公共のヘリコプターが山岳救助で飛ばないとなれば、日本から趣味の登山は無くなるかも知れない。別に世間から登山と言う趣味が無くなっても、世の中は回っていく訳だが、僕はそれでは悲しいのだ。
さてさてこの土日の子供のサッカー大会の送り迎えに、多くの親さんがマイカー出動した。
本当は皆で乗り合わせて行けば良いのだが、交通事故とかあった時のために、自分の子供は自分で引率した方が良いと考えた親さんも多いだろう。
かく言う僕もその一人なのだが、危険を伴う善意というのが結果次第で裁かれる時代となれば、世の中更に生き辛くなる。
被害者や犠牲者の考えも別にあるだろうが、生き物が生きていくこと自体既にリスクが含まれているのだと言ったら、それは言い過ぎだろうか。 |
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たまには映画やDVDで
今朝は早朝未明の時刻から、勝負誘発の方が2名入院されてきていた。
別に経膣分娩が勝ちで、帝切分娩その他不測の事態が負けと定義されてる訳では無いのだが、代務の先生が名古屋に帰ってしまうまでの間に、これらの方の決着?はつけてしまっておきたい。やはり医師が二人いるのといないのとでは、緊急時対応能力というのが大分変わってしまうのだ。
というわけで分娩室の動向を逐一気にしながらの、やや落ち着かない外来業務となった。胎児心拍が落ちたという話もあり、緊急手術にするのなら躊躇なく決断しないといけない。
幸いな事に分娩はスムーズに運んでくれた。代務先生の大活躍のお陰で緊急手術は避けられる。お陰で僕は午後の時間に余裕が出来、きちんと指定された時刻に新型インフルエンザワクチン一回目?接種も済ますことが出来た。
多方面からの情報によると、今や新型インフルエンザは本格的に大流行の兆しが出てきたらしい。僕は医療従事者として最優先のワクチン接種対象者となっている。
多くの妊婦さんの接種もまだなのに、僕だけいち早く接種してもらうなんて、ちと申し訳ない気もする。
これがどこぞの映画の正義の主人公なら、自分のワクチンをもっと本当に困っている方?に差し出したりするのだろうが、僕はもちろんそんな事はせず、何だか妙に価値高そうな注射をサラリと打ってもらった。
さて話は変わり、この土日は子供のサッカー観戦がメインイベントで、山には行かなかった。お陰で珍しくまとまった自由時間?が出来る。こういう時は読書か映画が一番だ。
と言うわけで今回は映画に気分をフォーカスし、映画館で20世紀少年、更に夜はレンタルDVDでダークナイトとマラドーナのドキュメンタリー映画を見た。たまにしか見ないからだろうか、どれも中々に面白くて得した気分になったりする。
特に今時のレンタルDVDは1本100円で、こんなに安く時間を潰せる?娯楽は他に無い。しかも英語字幕で見れば英語の勉強にもなる。ダークナイトなんていわゆる子供の時に見たバットマンのリバイバル作品なのだが、期待しないで見たら面白かった。思わず感想を日記に書こうかと思うが、それは恥ずかしい?から止めとこう。
さてさて映画では、正義と悪は分かりやすく描かれる。
しかし当たり前だが現実社会では通り一遍の正義や悪で世の中が分かれる訳は無い。現実は複雑なのだ。そして面白い映画と言うのは、正義と悪の複雑さが絶妙な感性で描かれている。
インフルエンザワクチンを他人より早く打ってもらう事に、罪悪感を感じるなんて、そちらの方が映画よりもっとわざとらしい感性だと思うが、そんな事は日記に書くまでも無いだろう。 |
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ちょっと控えの休日
まあまあ好天が期待できる土日だ。なんと代務の先生も名古屋から来てくれている。当然何処かの山に出動して汗と日頃のストレスを流しておきたい。
とはいえ結局まず土曜朝は早起きできなかった。理由はやはり金曜のハードワークと暴飲暴食?によるものだろう。目覚まし時計で早起きしても、アドレナリン不足と疲れからやる気が湧いてこない。
というわけで土曜は、次男のサッカー観戦とか、合間の映画やDVD鑑賞、その他諸々雑務でのんびり過ごすことにした。
また今日日曜日は三男のトレセンサッカー大会の送り迎え兼観戦で、朝から関まで出かける事になっていた。そんなこんなでこの土日は子供達のサッカー応援がメインイベントとなる。
まあこの時期の山は雪が降るのか雨が降るのか今ひとつ読めない。しかも日の照る時間が短くて結構寒い。長男とのハード?山行にも体調と季節的に少し無理が出ていたので、サッカー観戦あたりがちょうど良い過ごし方だろうと思う。
さてさて当然ながら、次男三男のサッカーでの活躍は大いに期待したい所だった。
しかし試合結果は今ひとつで、しかもかなりの試合時間において、二人とも控えでベンチ暖め役立ったりする。
2人のプレーや立場?を見る限り、それは仕方ないだろう。僕の子供がそんなに運動神経良い訳は無いと思ったりもする。
そんなこんなでこの土日は、ちょっと控え選手気分の土日という感じだった。
僕の場合職場で産婦人科医は一人しかいないので、仕事では先発完投が宿命だ。
しかしそればかりでは身体も心も長く持たない。スポーツでも仕事でも、一部のスーパースターを除き、リリーフや控えが必要なのが当然なのだと思ったりもする。
ウォームアップや球拾いは大事ですが、何時試合に出れるのかなあ


チャンスに決めないとレギュラーは取れません
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説明する事は難しい
今週は特別に木曜夜から代務の先生が来てくれている。お陰で木曜深夜に呼び出される事は無いだろう。金曜はまたまた最初から辛い一日なることが分かっている。前日夜にゆっくる眠れるという事が見込めるのは、それだけでとても有難い事だ。
というわけで木曜夜はしっかり眠れた。金曜の外来も比較的空いてくれた。これは僕と手術を受ける患者さんらにとってラッキーだ。
金曜午後にはややタフな手術が2件組まれてたが、寝不足感は無かったため何とか無事にこなす。思ったよりは早めに仕事がひけてくれたお陰で、久しぶりに金曜夜は朝日町方面に飲みに行く事が出来た。
ただ例によって飲みすぎ食べすぎてしまったので、消化器系はかえって疲れてしまった感じがしたりする。できれば土曜日は何処かに出かけたいと思っているが、どうなることだろうか。
さてさて僕は仕事柄、毎日多くの方に色々な事を説明する必要がある。説明無しで仕事を進めれるのならどれだけ楽かと思う時も多々あるが、今の世の中そうはいかんだろう。当然患者さんの方では少しでも多くの情報を医療行為に対して得たいものだ。
しかし短時間に多くの情報を言葉で伝えるというのは、本当に難しいと思う。
世の中には子宮とか卵巣とか話しても、それが何の事だかさっぱり分からない方はたくさんいる。性交渉といっても通じない方も多い。ましてお年寄りの方は耳が遠かったり、理解力がやや落ちているのが普通だと考えなければならない。
そういう方々に言葉の意味から説明していた日には、僕はとても仕事が出来ない。説明だけで日が暮れてしまう。
とはいえ、子宮とか卵巣とか膣壁とかいった言葉無しで、産婦人科医療行為を説明する事は事実上ほとんど不可能だ。つまるところ共通の土台が無ければ、説明なんて単なるプロの責任逃れでしかないとも言えるだろう。
今僕はあちこちから頼まれた各種原稿を校正している所だが、改めて情報を伝えるという事が如何に難しいか考えてしまっている。
「言葉になればそれは全て嘘なのだ」と誰かが言った名言があるが、言葉で伝わる納得なんて、確かに何処かにファジーなものが無い限りありえないものだと思う。 |
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全館当直の方には感謝しています
忙しかった先週と打って変わり、今週は比較的余裕を持って仕事を進められている。昨夜も家族の夕食前の時刻には帰宅でき、夜中に呼ばれる事も無かった。入院中の患者さんの急変もあったが、僕が呼ばれる事は無く、内科的なもので内科医師に対応していただけた。
さて話は変わり、病院の夜間救急外来には毎日様々な患者さんが受診される。そういうものの中には産婦人科なのか内科なのか精神科なのか、境界分野の病気も意外に多いものだ。
昨日と一昨日の夜間にも、妊娠中出血の他に、月経痛のイライラ、性交渉?による外傷もどき、性器出血が重大な静脈出血?なのだと思い込んだ方、などなどが救急外来に受診され、夜中に僕の携帯に問い合わせ電話がかかってきた。
詳しく説明すると長くなるから止めといて、それらは皆とても緊急処置を要するものとは言えない。
全て電話対応で済ませたが、全館当直の医師や看護師さんはそれなりに大変だったかもしれない。これらのビミョーな分野に僕が全て出動対応していたら、ただでさえ少ない僕の睡眠時間は更に削られ、もちろん通常業務に支障が出る。その場で対応していただいた全館当直医師には感謝である。
おそらく何処の病院でもそうだろうが、夜間緊急に病院を受診される方には、中々ビミョーな方も多い。それら主訴が本当に重篤な病気によるものなのか否かを、選別するのは救急当直医師の最重要な仕事と言えるだろう。
全館当直医師の医師は、きっと僕の知らない間に、沢山のビミョーな産婦人科患者さんを診察し、フィルターかけていただいているのだと思う。
心の病の方も多いのだが、患者さんはともかく心配で救急外来を受診されている。それをむやみに止めろと言う事は出来ない。しかしこれから先、高齢化が進むと更に心の病の方も増えていくだろう。大変な事だ。
それはともかく僕が夜眠れるのは、多くの医療関係者が自称?急患さんにフィルターかけてくれるお陰でもある。それは何時も思って感謝している。 |
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コンクリートから人だそうです
昨夜も一件遅くまで分娩が残った。通常の夕食の時刻を大分過ぎた辺りで安産で産まれてくれる。帰宅は遅くなったが睡眠時間を削られる事は無しで済んだので、言う事は無い。
今日も朝から書類、ドック、集団検診、看護学校講義、急患さん診察多数であっと言う間に時間が過ぎる。とはいえ手術や通常外来業務は無いから比較的楽な方だ。未来の看護師さん相手に講義するのも、仕事にアクセントが出来て楽しかったりする。
さてテレビニュースでは今は来年度予算編成の重要な時期らしい、新政権民主党の手腕が大いに注目されている。鳩山総理によると予算編成のキャッチフレーズは「コンクリートから人へ」というものであるらしい。
確かに医療関係の仕事をしていると、人にお金をかけないとどうにもならないと思う事は多い。
高山郊外にも訳分からない世界??センターなどが、多額の公金を使って作られたりしているが、そんな金があるなら、少子高齢化対策にもっと直接役立つお金の使い方を考えるべきだと、マジに思う。
そういえば民主党の補正予算切り崩しにより、東海北陸自動車道の4車線化が見送られる事になった。
自分で言うのも何だが4車線が2車線となる衝撃よりも、高山にいる産婦人科医が4人から2人になる方の衝撃の方が、きっと飛騨人にとって、ずっと影響大きいだろう(これはあくまでも喩えです、何の謂れもありません)。
そう考えれば「コンクリートから人へ」というキャッチフレーズはもっともだと思う。出てくるのが遅すぎるくらいだ。
自動車道が2車線となる代わりに、高山の産婦人科医が今の実質?4人から、実質6人くらいに増えれば言う事無いが、果たしてどうなるだろうか(これもあくまで喩えです。これまた何の謂れ無いですから、誤解無きよう念のため)。
話は少し変わり、とっくに引退している僕の父親は、日立コンクリートという会社でコンクリートを作る仕事を何十年としていた。父はコンクリートは世界を変えた発明なのだと言い、高度経済成長の真っ只中を走り続けていたのだと思う。
その子供の僕は医学部に進み、産婦人科医となり今に至っている。
なお祖父は満州の石屋及び北海道の山師だったらしい(詳しく話すと長くなるので、この件については省略)。考えてみれば僕の家系は、時代に翻弄され、「コンクリートから人」と言った時代の流れに沿って生きてきたと言えなくも無い。
今高校生の長男は、そろそろ将来の進路を決める時期が来ている。
僕は長男に「医者になれ」なんて言うつもりは無い。次の世代の変化は、「コンクリートから人」から何になるか? 結局それは自分で考えて決めるのが一番良いのだとしか、僕には思えない。 |
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郵便局はどうなるの?
緊急手術やらなんやらで帰宅こそ遅くなったが、月曜の夜中に呼ばれる事は無かった。今日は一日中ひたすら外来の火曜日だ。様々なレベル年代の多くの患者さんを診察し、後半は不整脈に悩まされたが、何とかもう少しで一段落しそうだ。
あとちょっとと思い、がんばろうと思う。
話は変わり、どういう訳か今年は今までに無く年賀状葉書のセールスが身の回りで盛んだ。
直接の訪問販売やら携帯メールやらで何かと盛んに売込みが入る。おそらくはインターネットを通じたメール年賀状に危機感を感じての事だと思うが、それ以外にも民営化に伴う売り上げノルマとか色々な事が関係しているのだろう。
多くのベテラン郵便局職員は、就職時に親方日の丸の安心感と、郵便事業の使命感を胸に、就職を決めたに違いない(と思う)。
しかし小泉改革とインターネットの隆盛により、時代は完全に変わった。郵便局の存在意義は昔と今では丸っきり変わったと言えるだろう。郵便局職員には気の毒な事だと思うが、このご時勢で年賀状の売り込みに力が入るのも当然だと思う。
どうせなら郵便局ごとに独立会計にして葉書の値段も自由競争にしたら良いのにと、他人事の様に思ったりする。何といってもメールで年賀状を送れば葉書代が無料同然となるのだ。
さて亀井氏が金融担当大臣となり、郵便局株の上場は無期延期となると言う。郵便局の社長さんも近々事実上の更迭が決まった。郵便局の将来は客観的に言って暗いだろう。10年後には今の日本航空の様に倒産寸前の大変な状況になっているんじゃないかとも思える。
さてさてかく言う僕も、郵便局がこういう風になるとは、約20年前に全く予想してなかった。
親方日の丸の絶対安心を信じて、結婚時の記念?に2人して郵便局の養老保険に入り、長男と次男が産まれた時には郵便局の学資保険に入ったものだ。
まさかこの手の郵便局保険事業が破綻する訳は無いと信じるが、最近の金融情勢とか亀井氏の言動とかニュースで見聞きする限り、ちと心配な気もする。
何事も不安定で予測つかない時代だ。安心なんて時代によりどんどん変わる。次世代に安心を与えるなんて夢の様な話で、今は次世代に負担ばかり押し付けている感じだ。とはいえ一寸先も分からないのに、10年先の事なんて分かる分けは無い。
産婦人科の仕事を割に合わない仕事だと思っていた事もある。しかし考えてみたら次世代を作る?事を直接的に助ける産婦人科の仕事は、まさしく素晴らしい仕事だったなんて、なぜか郵便局を見て思っちゃったりしている。 |
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分娩と手術とシャワー
日曜夜は経過中の分娩こそ残ったが、微弱遷延となっていた。夜中の分娩は無い方に賭けて、デパスを飲んで早めに眠る。その賭けは当たり、きちんと朝まで眠れた。
今日は午前中は秒単位の予約外来、午後からはとある理由の緊急手術と分娩が各一件となった。緊急手術が無ければ午後には少し楽できるかと思っていたが、その望みはあえなく砕かれる。
さて例によって今日も、ちょうど緊急手術の時刻に促進経過中の分娩がぶつかってきた。
こういう事は今まで数え切れないくらいあったので慣れている。状況を冷静に分析して最善の時間差攻撃?で両方ともきちん切り抜ける。ただ分娩はリスが大きく、もう少し状況に応じて何とかできないかと、言葉には出さなくても思ったりする。
また手術、分娩と手の離せない仕事している最中にも、各種レベルの各種問い合わせが次々と入る。
特に患者さんがたくさん待っているから早く回診して欲しいと言う類の連絡が入ると、さすがにイライラしたりする。僕は独りしかいないのだから、最初から無理な事は言わんで欲しい。
さて僕は土日には重症さんのみの回診で済ませる様にしている。従って月曜日の夕方〜夜は、僕の回診を首を長くして待っている切迫さんが多い。多くの切迫さんの問い合わせはシャワー浴びたいとか歩いてトイレ歩いて行きたいとかだ。
なお僕は未だ勝って一度たりとも、シャワー浴びちゃダメとかトイレ行っちゃダメなんて言った事はない。大体シャワーと流産に関係があるとも思ってない。
しかし何故か毎週月曜日にはこの手の問い合わせを、日に10回くらい受ける。これは看護師さんも含め、世の中の多くの方はシャワーと流産に因果関係があると思ってるからだろう。
しかし多分学会でシャワーと流産の関係なんて発表したら、ちょっと恥ずかしい。ある意味どうでも良い?レベルの話なので、誰も問題にしない。
まあ要するに、他にいろいろ大事な事があるのだから、この手の事は後回しになるのです。忙しい僕の回診が遅くなる代わりに、そうとりあえずここに書いておくとしよう。 |
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キャンペーンに弱いものですから
土曜の夜に名古屋から帰り、深夜病院に電話を入れると経過中の方が2名入院してみえていた。とはいえ陣痛は微弱で夜中の分娩にはならなさそうだ。お陰で日曜の朝まできちんと眠れた。
週末という事で2名の方はそのまま様子観察とし、各種雑用の日曜日とする。家の掃除や整理整頓、車関係、子供とのサッカーこそ練、それに週末の病棟業務も加わるとあっと言う間に時間は過ぎる。
分娩は夕方に一件。残りは微弱となり月曜朝からの促進とした。代務の先生はみえないからこそだが、僕には珍しく本当に休むための休日になった感じだ。
さてそういうお出かけ無しの日曜日の最大の楽しみは、先日通販で購入してしまった最新型GPSの出来具合チェックであった。
今まで山でのGPSに、必要な時のみゲコという廉価簡易型?GPS(それでも十分役立ちましたが)を、僕はずっと使用していた。
しかしこの春、エベレストやカルステンツで各国プロガイドの方々が、とても素敵な新型GPSを使用しているのを見て、どうしても新型カラー地図付きGPSが欲しくなってしまったのだ。
しかし最新型GPSは機能もすごいが、お値段もすごい。ちと簡単に購入する気にはならない金額だ。
しかし雑誌の広告でタッチパネルでかんたんキャンペーンという、いかにもキャンペーンに乗せられ、ついに思い切って最新型GPS購入に踏み切った。本来は山の安全を確保するための機械だが、なかなか機能満載商品で、これからこれで結構遊べそうな気もする。
もう少しで山には雪が積もる。そうなると本格的パウダースキーシーズン到来だ。
僕は自分の実力の無さを、機械でカバーしないといけない。GPSで少しでもレベルの高い山スキーに挑戦でき、安全無事に生還できるのなら、この手の出費は決して高くないはずだ。
しかしそれにしてもこういうIT機器は、僕は今ひとつ苦手だ。せめて元が取れるほどには、今度のGPSも大事に使いこなせる様に早くなりたい。そう思いながら、昨日も最新マシン相手にブツブツ文句を言っていたりする。 |
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たまの電車が楽しかったり
金曜夜は分娩も残らず比較的早く帰宅できた。身体はじわりと疲れているので、夕食を食べるととっとこ寝てしまう。とにかく寝ないと元気は出ない。
しかしまた土曜早朝の時刻に、分娩室からの出動依頼電話で起こされた。どうせ休日といってもやる事はたくさんある。そそくさと起きてさっさと仕事はこなした。
さて今週末は誰も代務の先生は来てくれない。とはいえ土曜夜までの時間は、キャンセルとなった講演の関係で、開業医先生に以前から病院お留守番をお願いしていた。
こういう時間はある意味貴重だ。仕事を落ち着かせると、学会シールを貰い?に名古屋まで出かけ、更に週末夜の名古屋で飲んで帰る事にする。
そのために昨日は車をやめて、電車で名古屋に出た。愛車イプサムはその間ディーラーさんに預け、壊れたクーラーの修理をしてもらう事にする。
普段車でばかり移動していると、たまの電車での移動が楽しい。
車内でゆっくり本が読めるし、何と言ってもお出かけ先で飲めるのが有難い(泊りがけで行ければ最高なのですが、僕にはそれが難しいのです)。
しかし高速代1000円の時代に、やや列車運賃は高い気はする。帰宅の時刻がダイヤによって制限されるという問題もある。
結局帰宅は高山本線の各駅停車最終便となり、深夜日付変わってからの帰宅となった。
学会に出ている時間よりも、列車に乗ってる時間の方が長かったりする。まあお陰で本はたくさん読めた。
さて昨日土曜日の行きの電車内は外国人ばかりで賑やかだった。一方帰りの各駅はガラガラだ。これから高速代が更に安くなると、電車の競争力は更に落ちるのだろう。
とはいえ仕事さえ落ち着いてくれさえいれば、電車の名古屋往復は随分と贅沢な旅気分が味わえる。
きっと途中で至急の呼び出し電話を受けても、列車だとどうにもならないと言い訳できる(かも?)。そんな所が、実は一番嬉しい理由かもしれないと思ったりする。 |
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僕にも分らんもんですから
昨夜は帰宅こそ大分遅くなったが、夜中の業務は無しで済んだ。
今週は大きな仕事の波があり、ぐったりと身体が疲れている。夜に起こされずに眠れたのは本当に良かった。しかしどうも一晩寝れただけでは疲れが取れない。それほどは忙しくなかったのだが、今日はそれでも休み休みじゃないと、なかなか仕事を先に進める事が出来なかった。
代務の先生は来てくれてなくても、明日からはいちおう休日だ。心身ともに癒される休み日になって欲しいと思う。
さてさて僕は毎日多くの患者さんを診察し、朝から晩まで様々な事を質問をされる。当然患者さんはイエスノー式の明快な答えを期待している事が多いだろう。
しかしそんなイエスノーで答えれる事は世の中それほど多くないという事は、大人なら誰もが知っている事だ。
中でやはり産科で代表的な質問は、胎児に奇形等の異常が無いかどうかという質問だろう。
もちろんそんな事は僅か一人1分程度の超音波診察で分かる事でない。妊婦検診の超音波検査では、よほど大きな異常しか分からないと思っておいた方が良い。
薬や放射線の影響も良く分からない。この薬を飲んだら100%必ず奇形ができるなんて薬は無いし、全く薬を飲んで無くても、何らかの異常を持った新生児が産まれる事も当然ある。
帝王切開後の経膣分娩が上手く行くかどうかという質問も、毎日の様に良く受ける質問だ。しかしこれも当然上手く行くか否かなんて、未来予知能力でもない限りは分からない。あくまでも確立でしか僕は答えられない。
最近ではインフルエンザワクチンの安全性について質問された。何でも海外産ワクチンは防腐剤?が含まれているらしく、その影響が心配されているらしい。その防腐剤の危険性を質問されても、はっきり言って僕にはさっぱり分からない。このレベルになると確率の話すらできない。全く見当が付かないのだ。
僕は当然仕事柄、そういう質問を良く受ける立場の人間だ。誰かが何らかの答えや示唆を出して上げないといけない事なのかもしれないが、できれば僕にはあまり期待しないで欲しいと、内心少し思っていたりする。 |
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誰のせいでもないんです
昨夜は帰宅こそ遅くなったものの、夜中に呼ばれる事はなかった。きちんと夜は眠れる。これは僕のみならず手術患者さんにとっても幸運な事だ。
今日も昨日に引き続き、大変な手術が午後に控えている。朝から上手くペース配分しないといけない。
とはいえ外来が始まった途端に、分娩室続いてCT室から呼び出され、中々外来の椅子に座る事すら出来ない。
外来は例によってもちろん混んで、午後の手術に間に合わせるため、綱渡りの秒単位外来がひたすら続いた。午後の手術はこれまたタフで要注意だったが、何とか満足行く程度にこなせたと思う。
その後も回診や緊急処置が続き、できれば夜に行きたいと思っていた2週に一度のフットサル練習も、今日はキャンセルするしかなかった。
それどころか夕方からは不整脈の自覚が次々と出たした。こうなると患者さんが死ぬか自分が死ぬか、どちらかしかないなんて思うが、どちらも死なないと信じて、先に進むしか僕には他に選択肢が無い。
さて多くの方々はガンになったり、流産したり、死産したりすると、なぜそうなったかその理由を知りたがる。誰が悪い訳でもないのに、何処かに原因があり、何かがいけなかったと思いたがるのだ。
理由は何処かから出された薬のせいかもしれないし、何かの医療処置のせいかもしれないし、帝王切開のタイミングからかもしれない。とにかく何かの説明が欲しいのだ。
しかし僕は思う。世の中のほとんどの生き死にの事象は、説明のつかない人智を超えた運命みたいなもので起きている。何かが悪いのではなくて、生まれてこのかた積み重なったどうしようもない因果から来るものじゃなかろうか。
そんな事を医師が説明したら、変な医師だと周りから思われるから、もちろんしない。しかし僕はこの仕事をしていて、そういう気持ちになる事がしょっちゅうある事は確かだ。 |
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皆がお年寄りの時代
昨夜残ってしまった分娩は、恐れいていた通りに深夜未明の分娩となった。もちろん夜中に起こされて出動を要する。とある理由で早くから呼び出され、しかも会陰裂傷も大きく時間もかかった。というわけで今日も当然寝不足となる。
今日は午後からやや大きな手術がある。どんなに眠くても手術に業務を間に合わせる必要がある。幸い今日は書類業務が主なので、とにかく早く字を書いて枚数をしのぎ、ドックや検診もせっせと所定の時間内に済ませた。
午後からの手術もこれまたとある理由でタフなものとなった。寝不足手術は辛いが、ここは外科の先生の頼もしいヘルプを得て何とかこなす。その後に更に追加処置も入り、今日も遅くまでひたすらの寝不足業務が続いた。
さて話は変わり、ガン手術や開腹手術を行う場合、僕は必ず術前説明を本人の他に、家族にも行う様にしている。本人は気が動転している事が多いし、これらの手術処置の同意書は第3者にも書いてもらう必要がある。
必ず複数の方に同時に説明するよう心がける事は、話に客観性を持たせるためにも重要だろう。
しかしここの所家族も様変わりしている。原因はもちろん高齢化だ。
手術を受ける方がお年寄りならば、多くの場合その家族もお年寄りだ。耳が遠いくらいならまだしも、説明の理解力も年相応になっていると考えないといけない。
しかもお年寄りのフットワークは重い。術前説明を受けた家族と、術直後の説明を受ける方が全く異なり、それらの方の間に全く意思疎通が無い事もしょっちゅうある。
それならまだしも手術時に誰も家族が付き添えない孤独?な方も少なくない。連れ合いが手術を受けている時に、家族が病院内を場所が分からず彷徨していたりした事もある。
テレビでは医療訴訟のニュース番組などで、「同意と納得が大事だ」としたり顔でコメンテーターが話していたりする。それは全くもってもっともだろう。しかし現実は理想と大きく異なっている。高齢化社会というのは多くの方が思うより遥かに厳しく、また難しい時代なのだ。 |
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インフルエンザは待った無し
今日は朝から晩までひたすら外来業務の一日だ。連休明けでもあり当然混む。何がなんだかで今日も沢山の患者さんを診察したと思う。明日からもまた更に忙しい。今が一つの山だと思って何とか無事に切り抜けたいと思う。
さて来週土曜日に、愛知の中学校で予定されていた僕のエベレスト?講演は急遽中止される事になった。理由は新型インフルエンザの学校内蔓延によるものである。我が子と同じくらいの子供相手の講演で、自分なりにいろいろ張り切って準備していただけに少しがっかりしたりする。
また今朝の医局会で、やっと新型インフルエンザワクチン接種の段取りが出来てきたとの報告があった。
とはいえ実際にワクチン接種が始まるのはまだ大分先で、久美愛厚生病院では11月9日からやっと新型インフルエンザのワクチン接種が可能になる。
しかもそれには優先順序があって、妊婦さんとか抗がん剤治療中の方とか、特別な方しかまずは接種できない。世の中大部分の一般の方は後回しで、希望しても最後まで接種されない可能性もある。つまり今からワクチン接種の優先順序の振り分けを始めておくのがどうも大事らしい。何処かの映画で見たシナリオみたいだと思う。
しかし学校閉鎖も所々で起こってきている状況なのに、最優先の方へのワクチン接種が始まるのが一ヶ月近く先と言うのだから、このワクチン接種はどう見ても、時期を失している。せいぜい全体の流行期をなだらかにする位の効果しか無いと考えた方が良さそうだ。
一応妊娠中の方は全員最優先でワクチン接種される事になっていて、それは有難い事だと思う。
しかしそれでも残念ながらまた大分先だ。と言うわけでインフルエンザが怖い方は、自ら身体を整え、うがい手洗いに気をつけておく位しか方法が無いと、思っておいた方が良い。
僕もできるだけ規則正しく生活して、身体を大事に過ごしたいと思う。しかし今夜も夜中に分娩で呼ばれそうだ。明日は大きな手術がある。毎日毎日僕はたくさんの風邪患者さんも診察する。
妊婦さんと触れ合う事が人一倍多い仕事の僕が、身体を壊す分けには行かない。できれば患者さんのためにもインフルエンザにも罹りたくは無い。
まあ気にしていてもキリが無い。なるようなるしかないと思って楽天的に、今夜そして明日の仕事を切り抜ける事を第一に考えるのが、インフルエンザの事を考えるより現実的で、まず大事な事なのだろうとは思う。 |
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そういえばまた一つ
11日は朝から秋山の一人歩きを楽しんできたが、考えてみたらその日は僕の誕生日でもあった。
今さら誰かに祝ってもらう事も無いのだが、夜は旬のご馳走を食べて、ちょっとお出かけしたりもする。
山からの帰り道に温泉に入り、更に帰宅してからもまた温泉に入りに行ったから、一日に2度温泉と言うのが誕生日ならではの贅沢だったかもしれない。美食と温泉でそれなりに疲れた身体を癒してあげる。
12日はこれまた貴重な休日晴天だった。とはいえ代務の先生は昼には名古屋に帰ってしまう。山への出動は控えて各種雑用で過ごす事にした。
愛車のオンボロイプサムも定期点検に出す。クーラーも壊れてマフラーもガタガタ音を出しているのに、また車検を通すつもりだと話すと、ディーラーさんもさすがに呆れた様子だった。
多分車と自分の身体をシンクロして考えているのだろう。エンジンを交換する事はできないのだが、車も自分の身体も大事に長く使いたいと思う。
午後からは何処にも行かず、仕事と原稿書き、講演のスライド作りに励んだ。何時もの様に夕方には分娩業務も入る。
特別な事が何かあった訳ではないのだが、そうやってまた一つ何時の間にか年を取る。きっとそういうのが普通の事なのだろう。 |
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三段紅葉も楽しめました
土曜日は平日の疲れからか、気力が湧かずどこにも出動できなかった。とはいえせっかく代務の先生に来ていただいているのに、全く何も無しで過ごすなんて事はありえない。午後から岐阜に行き、周産期の学会に出席し、ちょっと買い物だけはしてきた。
日曜日はサッカーの祭典という三男のサッカー大会があった。試合応援に行くか山に行くか迷う。
サッカーはまだまだ次に大きな大会が控えている。ここはやはり運動不足対策と日頃のストレスを少しでも汗として流すため、山に行く事を選択した。せっかくだから紅葉が既に始まっているであろう富山の山に出かける事にする。
高速飛ばして魚津ICまで行き、片貝山荘から僧ヶ岳と駒ヶ岳を往復してきた。どちらも僕にとって馴染みの薄い山なので、新たな山域を探っている様で楽しかった。
時々雨がポツポツくる生憎の天気だったが、毛勝は早くも冠雪しており、麓の緑と共に三段紅葉も楽しめる。
昼過ぎには下山して夜は高山で家族サービス?もできた。これまた美味しいと評判のお店で旬の食材を堪能する。疲れてはいるが紅葉登山と美食で元気回復し、また来週からのハードワークに備えようと思う。
紅葉が始まる稜線

毛勝では雪化粧が始まっていた
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朝から夜まで頭が走り続けてます
木曜はまあまあ早めに帰宅できた。各種雑用を済ませると、夜中に起こされない事を祈って早めに眠りに着く。金曜日は猛烈に忙しくなる事が最初から分かっている一日だ。
まず外来は台風のしわ寄せもあり、当然混む。午後からは比較的大変な手術が3件待っている。外来で疲れきってしまったら、手術の最後まで緊張感を持続できない。
外来のカルテの束が山積みになり、待合患者さんの診察券でトランプができそうになった頃で、これはたまらんと外来受付を満員御礼ストップとした。苦労して病院まで来てくれている患者さん方に対して、できればこういう事は避けたいが背に腹は変えられない。
お陰でちょうど手術時刻30分前に外来終了できた。ちょっと早めに病院まで到着してくれた代務の先生と共に、ひたすらこれまたやや気を使う手術に励む。
手術はとある理由で大変だったが、それでも当然中味はきちんとこなした。麻酔から手術手技まで入れると中々出来ない高度業務だと思う。手術が終わった頃には精根尽き果てる感じだ。
カルテをまとめて、回診をするのも、もう何とかして状態だった。
それでも周りの看護師さんらは次々と仕事の話や問い合わせをしてくる。しかし僕はもう目の前の仕事以外は何もしたくない。
できればこの週末は長男と共に泊りがけ登山に行きたいとも思っていたが、そんな根性はとても出ない。土曜日に早起きは絶対に出来ないだろう。身体は元気でも、アドレナリンの枯渇?で意欲が湧かないのだ。
というわけで、またまた長男とのテント泊登山はキャンセルとした。
せっかくだから夜は、仕事場から直接高山祭りの夜祭の名残を見に行って、ついでにお気に入りのお店で美味しい海山の食材を堪能する。
枯渇した脳内ホルモンを、鱧や舞茸、鮎、飛騨牛、赤むつなどの美食でで補充する。ところがどうも食事のエキス?は頭には回らず、皮下脂肪に回ってしまいそうだ。身体はともかく心が疲れているので、夜も目が覚めてなかなか寝付けないでいたるする。 |
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これでも僕は無欠勤
昨夜は台風で嵐の晩になった様だ。もちろんできれば出動しないで済むに越した事は無い。
幸いの事いつもの切迫時間に切迫入院一件あったのみで、嵐の中の深夜出動は無しで済んだ。夜はきちんと眠れる。
台風は今回も北アルプスの向こう側を、微妙にそれて通過してくれた。
北アルプスに守られたのか風も強くなく、大雨の時間も短かった。朝通勤時の大八賀川の水量をみれば、昨晩どれだけの降水量があったか大体見当がついたりする。
今朝は台風の影響で外来は混まないんじゃないかと少し期待しつつ、長靴合羽で病院に向かった。
ところがその期待は簡単に裏切られ、今日の外来もしっかり混んだ。足腰弱いお年寄りガン患者さんが多数、苦労して雨降りの中、数分の診察のために通院してくる。そんななかで台風を理由にして休む医師がいたりすると妙に面白くなかったりする。
さて話は変わり、僕はほとんど毎日の如く、患者さんが仕事を休むための診断書を書く。
ほとんどは流産や切迫関係の方の診断書だ。今世間の流れは、妊婦さんに優しい。入院期間や診断書の安静期間はほとんど妊婦さんの言いなりだ。なかにはこれは無いだろうという長期間の欠勤?診断書を、後から書いてくれと言われる事もある。
これでたくさんの保険金や手当金が動くことがあるのかと思うと、時に複雑な気持ちだ。
ただ仕事を休む事に関して言えば、僕も偉そうな事は言えない。
何と言っても僕はこの春に、連続108日間病院を休んだ。この休みの為に僕は全ての有給を使用したし、色々と気を使っていただけた上に休職扱いとなっていた時期もある。
しかし一方この春までの僕は、10年間有給を一日も使った事の無い皆勤賞人間だった。使用しないで溝?に捨てた有給の日を合わせると108日間を軽く越える。
風邪引いてどんなに熱が出ていようとも、何日間も仕事で寝れてなくても、僕は必ず仕事に出た。
台風如きで休むなんて考えた事も無い。職員旅行の時も午前中仕事してから、一人で病院観光バスを追いかける。今回のエベレストでもぴったり予定通りの時刻に仕事を離れて、予定通りの日付時刻に仕事復帰した。
まあ日本人は昔から働きすぎだと言われている。病気になった時とか妊娠中とかの時に、休めるだけ休んでもそれはきっと許されるだろう。僕のエベレスト休暇の方がよほど許されないことかもしれない。そう思うとこれ以上この件について書くのはやめておこう。 |
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雨足が強くなってきたもので
昨日も何だかんだで疲れ果てての帰宅となったが、夜中に呼ばれる事は無かった。きちんと朝まで眠れる。台風前の静けさだけだったかもしれないが、ともかく平和に夜を休めたのは良かった。
今日は朝から沢山の書類、及び検診、ドックで追われる一日だ。間に看護学校の講義も入ってくる。若い看護士さんの卵相手に出来る限り面白い話をして、僕も生徒も少しでも楽しくなれる様に気を使って授業した。
さて今現在近づいてきている台風は、テレビによると伊勢湾台風並みの規模の大型台風らしい。
飛騨では5年前に台風23号の災害があり4方の国道が通行止めになったという経緯がある。
僕が高山に引っ越してきて以来、高山で最大の災害がこの台風23号だ。今回もそんな事にならなければ良いと思う。ただ当時より河川は整備されたし、高速道路も出来た。前の様に高山が陸の孤島になる事は多分無いだろう。
心配なのは停電だ。高山は都市部と比べて停電が多い。それでいて5年前と比べて医療は格段にIT化が進んでいる。自家発電があるとはいえ、全ての医療機器は電機で動いている。停電したら分娩の危険度も格段にUPする。
また僕の家は去年からオール電化住宅となっている。停電で自宅のライフラインも一気にストップする。ここは電線マンの☆さんの活躍に期待しようと思う。
昔から台風とか大雨の時には分娩が多いとされている。僕も大雪、大雨の中分娩室からスクランブル出動を依頼された事が何回もある。午前3時の大雪の中、車が路側帯にはまって大変な目に遭った事もあった。だから今回はそういう風にならない様祈るのみだ。
ただ統計的には、雨の日、風の日、満月の日に分娩が多いという言い伝えは、全て間違いだという事が分かっている。
ただそういう時の分娩が強く記憶に残るから、印象的な気象条件下の分娩が多いような気がするのだろう。
少し話は変わり、三男は今年の夏休みの宿題に、ちょうど50年前に起きた伊勢湾台風の事をまとめて、パネルにして提出していた。
三男の生まれた時に、僕等家族は名古屋市港区に住んでいたので、なかなかリアルな出来になったらしい。出来が良かったようで今度、何かの展示会に出される予定とも聞いた。言い方良くないかもしれないが、今回の台風は三男にとって、ちょうど良い生きた勉強になるかもしれないと思ったりもする。 |
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長生きすると必ずなるもの
昨夜は帰宅してからも2件の分娩が残っていた。どちらも何時呼ばれるか分からない状況だ。夜中に車で出動しなければならなくなりそうだから、晩酌はノンアルコールビールで紛らわす事にする。
それは正しい判断で夕食後就寝前にまず分娩出動を要する。ついでもう一人の方の分娩は深夜未明となった。こちらは助産師さんに上手く対応してもらう。
新生児の方で小児科先生の深夜出動を必要としたが、僕は朝まできちんと眠る事が出来た。
今日は朝から晩までの外来火曜日だ。色々な意味で深刻な方も多くみえる。ひたすらの秒単位外来がやっと終わった時には、心身ともに疲れ果てる感じだった。寝不足でなくて済んだのは本当に良かったと思う。
さてさて今週から来週にかけて、高齢者の手術が目白押しに並んでいる。適応は様々だが、共通して言える事は皆たくさんの合併症を持っておられるという事だ。糖尿病や高血圧といった一般的?な病気のみならず、更にシリアスな病態の方も少なくない。高齢者のほぼ全員の方が、血をサラサラにするお薬を飲んでいて、それも手術に対してプレッシャーとなっている。
誰もが年を取ると必ず病気になる。特にある程度以上の高齢の方になると何らかの腫瘍性疾患を持っておられる方がほとんどだ。今や日本人の大部分がいずれ何処かでガンになる時代となってきたが、その最大の理由は高齢化である。
高齢になるにつれて、身体の細胞分裂のトータルの回数は増え、免疫力は落ちる。それに伴い身体の彼方此方に腫瘍性疾患ができてくる。
僕が産婦人科医になった頃は、婦人科手術の大部分は閉経直前の筋腫や内膜症だった。
しかし医療の進歩、及び高齢者の増加によって手術の適応は様変わりした。今や高齢者の各種腫瘍が婦人科手術のかなりの割合を占めている。
ほとんどの高齢者は何らかの慢性合併症をもっている。従って一見当たりの手術のストレスは高齢者手術の方が格段に高い。しかも生き物には全て寿命がある。苦労して手術摘出しても、そこから先に幸せで長い人生が待っていると言えない事が多い。
また現在日本では高齢者の医療費負担が大問題となっている。この問題はこれから先、更に深刻さを急速に増していく。
エベレストに行った時、アドベンチャーガイズ社の謙ちゃん隊長はお年寄りの方を高峰に登らすために、大変な苦労とリスクを取っていた。僕もせめてその姿を見習い、高齢者の腫瘍摘出手術のために、大変な苦労とリスクを取るべきなのだろうか。
運良く長生きできれば、誰もが何時かは高齢者だ。
周囲にに長生きしてもらいたいと思われるような、素晴らしい高齢者になれれば良いと思うが、それは客観的に考えてすごく難しい事に違いないのだろう。 |
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未来が予測できれば
昨夜は山からの帰宅途中に救急外来から問い合わせ電話があったのみで、ゆっくりきちんと眠れた。長男は風邪気味でしんどそうな感じだったが、僕はこういう長時間行動には慣れているので、心地よい疲れから気持ちよく眠る事が出来る。
今日は午前中は予約外来。急患さんも少なく珍しく楽な外来だった。
分娩経過中の方は2名見えた。そのうちPROMの方の心拍が時々下がるという連絡が入る。緊急手術を睨みながらの要注意状態となった。しかしこういう事は良くある事だ。慎重な経過観察を指示する事で、昼頃に無事分娩となってくれた。
お陰で午後からは各種雑用業務をしながら余裕を持って過ごせて助かる。
さてさて分娩には、予想できない突発的な事が突然起こる時がある。ノーマークの分娩経過が突然変化する事は少なからずあるのだ。また全ての妊婦さんを、その経過中から事細かに僕が把握しておく事も不可能だ。
経験を積む事である程度危険度と言うのを推し量る事が出来るが、24時間365日緊張した状態で分娩を見張っていられる産科医はいない。
そこでどの程度普段から用心するかが、問われるようになる。
最も慎重な判断を下すのなら、心拍が下がるという連絡を受けた時点ですぐさま緊急帝王切開を決断する医師もいるだろう。だが僕はそれでも比較的様子を見る事が多い。多少心拍が下がっても、そのまま経過良く進んでくれる事は多いのだ。
今日はそういう例で何の問題も無く何時もの様に分娩となってくれた。しかし先週はそれで上手く行かなかった事があった(ほんの僅かな間ですが)。だからこそ世界中で周産期死亡率ゼロには決してならない。
僕は産科医として未来が予想できれば良いと思う。しかし全てが予想通りに進む世界も、どんなものかとも思う。
現実はテレビとは違う。予定調和の世界ではないのだ。死ぬ人生きる人、成功する人失敗する人、それはある程度推し量る事は出来る。しかしこの世に生きている以上、最後はやっぱり運不運とか祈りに任せるしかないのじゃなかろうか。
未来が予測できれば、こんな事にもならない。ご冥福をお祈りします
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長男のK点越えましたか
天気予報が変わり、日曜日は終日の晴天が期待できる日となった。代務の先生も午後5時までは高山にいてくれている。ここは長男を誘い、最後?の夏山登山を楽しむ事に決めた。
サッカー部を退部した長男との夏山も、回数を追うごとにどんどん過酷さ?を増しレベルアップしている。
ここはいよいよ飛騨山脈を代表する西穂〜奥穂岩稜縦走に挑戦を決めた。
朝2時起きで高山を出て、小鍋平からボッカ道を登り、西穂〜奥穂と周回日帰り縦走してくる。自転車も入れて14時間行動だ。
僅かな期間のトレーニングだけでこんな困難な山登りに挑戦して良いかという話もあるが、バランス抜群の高校1年生には、この手の岩稜縦走の危険はそれほど高くない(と僕は思う)。
ただ長男には早起きと、登ったらまたすぐ下るという岩稜縦走の宿命が辛かった様だ。
もともと風邪気味だった事もあり、ジャンダルムを越えた辺りから長男のペースは落ちて、無料駐車場に帰り着いたのは、暗くなる寸前だった。
5時には代務の先生が帰ってしまうというタイムリミットありの登山だったから、子供を急がせたのが、かえって良くなかったかもしれない。幸い分娩は無く病院は大丈夫だったが、帰りに温泉にも寄らず直行帰宅する事となった。
長男はどうやらK点越えしてしまった様で、帰宅するとコンビニの蕎麦だけ食べて寝込んでしまう。
長男は歩きながら「俺もう限界を超えた」と話していた。しかし山では誰も助けてくれない。自分が最後まで歩きとおさない限り、途中で逃げる事は出来ない。途中で歩く事をやめたら、それですなわち遭難だ。それが登山とサッカー、マラソン、他のスポーツとの大きな違いと言える。
それにしても僕はどうも高校大学山岳部の頃から、山となると「行け行け」でパートナーの都合を考えないところがある。
僕は晴天下豪快な岩稜縦走を楽しめて、十分ワークアウトできる一日となった。しかし山を始めてまだ数ヶ月の長男にはちと過酷過ぎる一日になってしまったようだ。
早起きが応えます
徐々にペースが落ちてきて

バランスは良いから、馬の背も全く危なげ無し
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ごっつぁんゴールですみません
昨日も手術後に分娩がまだ残った。夕食後就寝前の時刻に一回出動を要する。これでともかくは一段落だ。
今週も金曜夜遅い時刻から、週末にかけて優しい代務の先生が高山に来てくれる事になっている。そう思うとそれだけで十分嬉しい。
今週は大手術こそ無かったものの、いろいろあってジワリと疲れは貯まっている。ちょうど土曜日の天気は良く無さそうだ。
長男には土日にかけて一泊山行に行こうと話していたが、仕事もあるしキャンセルに決める。土曜日はできるだけ休んで心身の疲れを癒そう。
とはいえ僕に完全な休みなんてありえない。結局は何だかんだと貯まった雑事をひたすらこなす一日となった。
さて今日の午前中には次男との中学親子サッカーが組まれていた。明日から始まる新人戦壮行試合と新ユニフォームお披露目も兼ねているらしい。親さんチームには監督コーチが入ってくれる。しかも何と親さんチームは一回ゴールすれば3点加点されるという特別ルールだ。
壮行試合とはいえ、もちろん僕は全力で戦う。
例によってフォーメーションも考えずあちこち走り回り、コーチのアシストからごっつぁんゴールを決めさせていただいた。これ一本で3点ゲットだからハットトリックだなんて密かに思ったりする。
結局親さんチームの決めたゴールは僕の一本だけで、試合結果は5対3で中学生チームの勝ちとなる。考えてみたら当たり前の結果だ。
試合は25分ハーフで親さんには辛い長さだった。子供たちは壮行試合で気持ちよく勝てて良かったと話している。一方親さんは全員怪我無く済んでこれまた良かったねと話していたりする。
そんなこんなで今日は午後から雑用もそれなりにこなせた。山には行けないが十分幸せで楽しい休日だ。
新人戦でも頑張ってね
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生死の前には
昨夜は何だかんだで帰宅こそ遅くなったが、夜中には呼ばれずに済んだ。一週間の仕事でジワリと疲れが貯まっていたので夜眠れて嬉しい。
今日は何時もの秒単位外来に午後から手術。その合間に何時に無い辛い仕事が入ってきたりもした。もともと僕の仕事と言うのは、辛い仕事を内含している。それに世の中何から何まで楽しい仕事なんてモノは普通無いだろう。そう思い我慢しながらミスなきよう今日も仕事を続けた。
さて今日PCをあけたら、一緒にアフリカを横断した古い友人からのメールが入っていた。なんだろうと思い開いたら、ナイロビその後日本で何回かあった別の古い友人の訃報だった。実家に帰って闘病しているという風の噂は聞いていたが、数日前に亡くなられたとある。一瞬数々の古い思い出が浮かび、アフリカの風が脳裏に走った。
今からもう20年以上前のアフリカは、コンゴ(当時ザイール)の政情が一時的だか比較的安定していて、普通?の旅行者がアフリカ中央部を冒険横断旅行できた。
その頃アフリカで会った旅行者はやはり僕に似て?変わり者が多く、会う人会う人面白い方ばかりだった。
その多くの方々とはもう会わなくなって久しい。様々な理由で亡くなられた方も実は少なくない。何だか昔の思い出の歯並びがどんどん欠けていく様な気がして、寂しく感じる。
人は必ず死ぬ運命だ。生まれる前に死ぬ人もいれば、生まれてからすぐに死ぬ人もいる。僕くらいの年で早世される方もいるし、年取ってから更に意気盛んで花咲かせる幸運な方もいる。
しかし誰もが必ず何時かは死ぬし、老化も避けられないものだ。若い頃どんな立派な業績を上げた人でも老いていけば立場は狭くなるし、死んでしまえば何時かは記憶の遠くに行ってしまう。それが生き物の太古からの営みなのだ。生死の前には様々な雑事などで一喜一憂する事自体、まったく持って取るに足らない事だと思う。
どんな人間も一人一人有限だ。だからこそつまらない事に拘らずに、ひたすら前向きに急いで生きていかなければならない。そう改めて感じていたりする。 |
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8000mの上と下
水曜夜には3件の分娩が残ってしまった。ちょっとした用事もあり、帰宅はまた少し遅くなる。
何時呼び出されるか分からないので晩酌はノンアルコールビールで我慢する事にした。その判断は正しくて日付が変わる頃にまず一件めの分娩で呼び出される。飲酒してなかったので車で出動できた。
続いて夜中にも呼び出される可能性は高い。状況を判断すると分娩は遷延しそうだ。夜中に起こされる事は無い方に賭けて、マイスリーを半錠飲みきちんと眠った。中途半端な眠りでは翌日の業務に響くのだ。その判断も正しくて夜中に起こされる事は無かった。
外来はもちろん今日も混んだ。残った分娩に定石通り誘発と促進の指示を出す。外来の真っ最中に一つ分娩がぶつかってきたが、もちろん問題なくこなした。
何とか秒単位外来を終え、一服ついてネットチェックしたら春に一緒にエベレストの登った謙ちゃん隊長の隊が、ちょうど8000m峰チューオユー頂上に向けて頂上アタックをかけている所だった。真夜中にアタックキャンプを出発して現在登高中らしい。
リアルタイムで状況が分かるケンケンブログは中々に面白い。心が遠くチベットの空に飛んで行ったりする。
しかし心飛べたのはホンの僅かな時間だけだった。すぐさま助産師さんから胎児心拍が下がるから大至急病室に来てという連絡が入る。それからは嵐の時間だった。すぐさま状況判断し緊急帝王切開を決断、手術室、小児科、外科、研修医の手も借りての超緊急手術となる。
幸い寝不足手術でこそなかったが、とある理由で手術は簡単なものでなかった。
しかしそれらの努力は残念ながら全て報われない結果になる。誰もが全力を尽くしても上手くいかない事はある。それが人間社会に最後に残された自然の営み、分娩と言うものなのだろう。
様々な事に疲れ果てて、夜遅くに外来逃げ部屋に戻り再びネットチェックする。謙ちゃん隊長の隊は無事に登頂成功したらしい。
8000mの上でも下でも冒険はあるしドラマもある。
エベレストの頂上に向けて夜中にひたすら歩いていた僕も、緊急帝王切開で無念の思いをする僕も、それはそれで同じ僕のはずだ。とにかくあきらめたり挫けたりする事無く歩き続けるしか、僕にはもう選択肢無いのだろう。 |
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