ACL準決勝でアルイティハドのホームスタジアムに入場する名古屋グランパスの選手たち=21日、サウジアラビア・ジッダで(畦地巧輝撮影)
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名古屋グランパスが初めて挑んだアジアチャンピオンズリーグ(ACL)。決勝進出はならなかったがアウェーの海外遠征は貴重な体験の連続だった。訪れたのは韓国、中国、オーストラリア、サウジアラビアの4カ国。DF吉田が「勝ち進めば進ほど、新たな魅力が出てきた」と振り返った大会のこぼれ話をまとめてお届けします。 (グランパス取材班)
◆サウジ 王族用のVIP待遇
4カ国の中で「もっともインパクトがあった」(DF吉田)と選手を驚かせたのは、準決勝のアルイティハド戦が行われたサウジアラビアだった。
チャーター機が到着したジッダの空港で、いきなりVIP待遇を受けた。王族用ターミナルに誘導され、スタッフが「あっという間だった」と驚くほどのスムーズ入国。しかもアラビアコーヒーを供されるもてなしまで受けた。もっとも、粗びきしたコーヒー豆を香辛料と一緒に煮立てた独特の風味は、普通のコーヒーと全く別物。それでも「出されたものは残せないよね」とスタッフたちは苦笑いで飲み干した。その後の練習でも天然芝グラウンドを用意されるなど好待遇だった。
日本人にとっては、異なる食文化もハードルの一つ。記者は脂っこいケバブに苦しんだが、チームは一足早く現地入りした先乗り部隊が1・8リットルの大型炊飯器4つと大量のカリフォルニア米を調達して対応。バイキング形式の夕食では鉄板焼きなども用意され、選手から好評を博した。炊飯器は今もクラブハウスに保管されている。「(クラブW杯が行われる)UAEにも持って行くはずだったんですけどね」(スタッフ)。今回は大敗したが来季以降も使う機会があってほしいものだ。
競技場では約150人の日本人がグランパスに声援を送ったが、勝利を願っていた人がほかにもいた。試合前日、選手宿舎を、同じジッダ市内でバレーボールのコーチをしているセルビア人が訪問していた。ストイコビッチ監督の古巣レッドスター(セルビア)でも指導していた人で、旧交を温め「健闘を祈っているよ」と激励された。さすが世界のピクシー、人脈は中東でも健在だった。
試合翌日、塚田記者は思わぬ人と遭遇した。帰国前に何気なくビーチへ立ち寄ったところ、そこにはアルイティハドのカルデロン監督がいたのだ。しかも水着にサングラス姿。ひとりで日光浴を楽しんでいた。
アルゼンチン人の敵将は「女性を見に来たんだよ」とニヤリ。サウジでは、街中の女性はみな黒い民族衣装に身を包んでおり、“目の保養”ができるのは外国人向けホテルのプライベートビーチくらいのもの。戒律が厳しく飲酒もできず娯楽の少ないこの国で、ささやかな楽しみだったようで……。
◆韓国 控え室の湯船にくぎ
開幕戦となった蔚山現代戦の韓国では、アウェーの洗礼を受けた。試合前日練習の文珠スタジアム。控室の湯船にくぎが5本ほどまかれていたのだ。事前にスタッフが競技場職員に清掃を頼んだ時には「何もなかった」という。別メニューで調整し、先に練習を終えていたバヤリッツァが「こんなものが入っていた」と血相を変えて風呂場を飛び出してきて発覚。出番がなかったバヤリッツァの、場外“ファインプレー”だった。これでアウェーのワナを逃れ、3−1で快勝した。
◆中国 野菜投げつけられた
1次リーグ突破を決めた後、若手主体で臨んだ5月20日の北京国安戦。北京工人スタジアムは、中国の熱狂的なサポーターに驚かされた。“被害者”は、主にスローインを行った左右のDF。プロデビュー戦だった右DF松尾は、サイドライン周辺まで投げ入れられた野菜やペットボトルに目を疑った。「野菜は投げやすい大きさにカットしてあった。アウェーの罵声(ばせい)には、逆に負けたくないと奮起しました」。左DF佐藤は足にナスの直撃を受けたという。それでも1−1で引き分けた。
◆豪州 グラウンドがボコボコ
ニューカッスル戦が行われたオーストラリアは、ラグビーのプロチーム「ナイツ」の本拠地でもある。試合があった4月は、ラグビーシーズンで、「しめった感じの土質」(DF増川)「バックパスは避けたい」(DF阿部)と話したほどグラウンドはボコボコ。ストイコビッチ監督は「ハイクオリティーとは言えないピッチに慣れなければ」と警戒したが、テクニックを発揮し、1−0で逃げ切った。
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