西武は夢への超特急 菊池“最もメジャーに近い球団”入り

2009.10.30


水沢スカウト(左)から西武の帽子をかぶり、ガッツポーズの菊池。仲間にも胴上げされた【拡大】

 29日に行われたドラフト会議では、注目の花巻東・菊池雄星投手(18)の交渉権を6球団の競合の末、西武が獲得。引き当てた西武は狂喜乱舞しているが、将来のメジャー挑戦を視野に入れる菊池自身にとっても、西武は願ってもない球団といえそうだ。

 「メジャー? その辺はお答えは…まだ交渉権を獲得しただけですから」。それまで満面に笑みをたたえていた西武・前田球団本部長が、表情を引き締めた。

 ドラフト直前まで、メジャーか、国内かで悩み、「日本の方全員に認められてから世界でプレーしたい」とも語った菊池。FAでメジャーへ行く権利を得るには、最低でも9年かかる。その点西武には、松坂(現レッドソックス)を在籍8年間でFA権取得前にポスティングシステムでメジャーへ送り出した“実績”がある。

 菊池にしても、今すぐ渡米ならマイナーリーグからのスタートは必至。西武で来季、いきなり活躍し、新人王でも獲ろうものなら、黙っていても「今度はメジャー契約で」というオファーが舞い込むだろう。

 また、松坂のメジャー移籍の際には、入札金約60億円(実際には法人税などで約4割を差し引かれ、約36億円)を手にした西武にとっても、決して悪いビジネスではなかった。仮に西武が近い将来、菊池でもう一度…と考えるなら、菊池にとって“最もメジャーに近い球団”といえそうだ。

 松井稼頭央(現アストロズ)もFA権を行使し、29歳の年にメジャーデビューを飾っている。西武も今月16日の面談の際に鈴木編成部部長が「松坂、松井(稼頭央)がそうだったように、国内で腕を磨いてからメジャーへ行ってもおかしくない」と訴えた。

 さらにドジャース、メッツでメジャー在籍4年の石井一久がいて、経験談は聞きたい放題。同じくメジャー志向が強いといわれる中島、涌井らもいて、刺激にはこと欠かない。現在西武が獲得を検討中で、菊池が尊敬する選手でもある工藤(横浜を自由契約)が入団すれば、こちらも毎オフのように米アリゾナ州で自主トレを行い、メジャーの名投手ランディ・ジョンソンらと親交があり、メジャーへ行かずしてメジャー通になれる。

 もともと清原、松坂ら「金の卵」といわれた鳴り物入りの高卒新人をきっちり球界の顔に育て、一方でアマ時代にはそれほどの有望株とはいえなかった松井稼頭央、中島、中村らも鍛え上げており、育成能力には定評のある球団。西武のユニホームを着てパ・リーグを沸かせた後は、何年後に海を渡るのかが注目されるようになるはずだ。

 ちなみに、菊池はメジャーにあこがれる一方で「西武の本拠地は埼玉。自分は田舎者なので心配です」と不安をのぞかせたが、埼玉県在住の記者が断言しておこう。所沢は12球団の本拠地で最も“田舎”。ご心配なく。(宮脇広久)

【「素晴らしい投手いっぱい」菊池雄星に聞く】

 −−西武の印象は

 「素晴らしい、尊敬する投手がたくさんいる球団に(当たりクジを)引いていただいた。たくさんのことを学びたい」

 −−選手については

 「昨年、日本一になっているし、涌井さんもいる。(現レッドソックスの)松坂さんも在籍していた。素晴らしい投手がいっぱいいる印象です」

 −−まだ決まっていないが、工藤公康投手の入団の可能性があるが

 「一番尊敬する投手。ご縁があればたくさんのことを学びたいです。少しでも近づけるように練習したい」

 −−どんな選手になりたい

 「結果を残せるか分からないけど、『雄星みたいな投手になれ』と語りつがれるような投手になりたい。愛される球界の顔、日本中に認められる投手になりたい」