【パリ福原直樹】パリで地下鉄・バスを運営する「パリ交通公団」などフランス企業に雇用された不法移民約4000人が労働条件改善や就労ビザ発給を求め、雇用先の企業など約40カ所を占拠、社会問題になっている。政府は事態是正に乗り出した。
不法移民を支援する大手労組「一般労働連合」(CGT)のブランシュ書記らによると、交通公団の場合、不法移民の雇用を約10年前から始めた。駅の改修工事が多く、十分な防護服や靴もないまま高温のコールタールを運び、手足をやけどした例も多い。賃金は深夜~早朝労働で70ユーロ(約1万円)と通常より低い。公団にはこれまで延べ約1000人が就労したとみられる。
不法移民らはほとんどがアフリカ出身で、偽名で派遣会社に登録。派遣会社が公団に仕事をあっせんした。交通公団や派遣会社は彼らが偽名を使ったことを理由に「不法移民は雇用していない」と突っぱねているが、03年から交通公団で働くモーリタニア出身の男性(31)は毎日新聞に「派遣会社は偽名と知りつつ雇った」と語る。
不法移民らは現在、パリで派遣会社や建築会社の団体など雇用先の各事務所で10~300人単位の座り込みを続けている。移民省は先週からCGTなどと交渉を開始。ブランシュ書記は「不法移民への就労ビザ支給などが得られれば、妥協する」と話している。欧州連合(EU)によると、EU内に流入する不法移民は年間約50万人と推定され、仏には現在、20万~40万人が不法滞在しているとみられる。
毎日新聞 2009年10月31日 東京夕刊