長期金利が上昇している。財政難にもかかわらず、鳩山政権が政策実行のために増発、国債投資を見送る投資家が増えている。個人向け国債も売れ残っている。国債の「投げ売り」に火がつくのも、そんなに遠くないのかもしれない。
国債の発行残高は約600兆円に達し、すでに国内総生産(GDP)を超える規模に膨れ上がっている。国の負債比率は、米国でGDPの81.2%、G20平均で72.5%だ。日本はそれが217%にも達する。にもかかわらず、鳩山政権は国債をさらに発行しようというのだから、長期金利が高まるのは必然だし、国家デフォルトを懸念する声が高まるのも無理からぬところだ。
長期金利の指標となる新発10年もの国債の金利は2009年10月27日、2年半ぶりに年1.4%台に乗り、28日には前日比0.015ポイント高い1.42%まで上昇した。
財務省が27日に国債の買い手となる機関投資家を集めて開いた意見交換会では、「財政再建への不信感が金利上昇の圧力となっている」と、金利上昇を心配する声が少なからずあった。
たとえば、個人向け国債の2009年の販売は当初の予定額に達していない。個人向け国債は年4回、1回6000億円をめどに発行しているが、これまでに3回の募集が終わり、予定された1兆8000億円のうち7000億円程度が売れ残った。
これに銀行や証券会社などが個人に販売している国債をあわせると、09年に4兆2000億円を集めるはずのものが、いまのところ計画より約2兆円減っている。個人投資家に保有してもらうつもりが思うようにならなかったわけだ。
鳩山首相はこれまでに、たびたび「これ以上国債を増やすと国家がもたない」と、発行抑制を口にしていた。ところが政権をとると、マニフェストの実現のためには「やむを得ないことになる可能性がないとはいえない」と発言し、国債増発を容認した。景気悪化による法人税などの税収不足もあって、「発行やむなし」との空気が広がっている。
これらが長期金利上昇の要因だ。
国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「現状はデフレ経済で、低金利なので、誰もがなんとなく、金利が上がるとは考えていない。だから、急上昇していない。しかし、ある段階でこれがはじける。しかも、そのタイミングはそう遠くないのではないか」と指摘する。
世界的な景気悪化で、欧米でも国債の発行は増えているが、その中にあって日本の約45兆円(2010年度見通し)、総残高600兆円は異常なほど多い。「発行額が増えて買い手である投資家が不安になるのは当然のこと。95%を日本人がもっているから大丈夫とか、郵貯がもっと買えばいいといった意見もあるが、ひとたび信用力を失ってしまうと落ちるのは早い。銀行や生保ももっていられなくなって、2%台に達することは十分にある」(枝川氏)という。
現状で長期金利が急上昇しないのは、機関投資家、なかでも地方銀行や信用金庫の貸し出しが伸びないため、融資にまわらない資金を国債で運用していることもある。
ある市場関係者は、「国債市場は飽和状態にあって、新規の発行規模があまりにひどい(多額)と、何らかのタイミングで金融機関が買いを控える可能性がある。その意味で危うい状況にある」と警告する。金融機関が「売り」に転じたとき、それを「合図」に長期金利は一気に上昇、国債の「投売り」がはじまるのもしれない。
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