この問題を解いていくにあたっての方針を立ててみます。まず、最も時間的に遠い場所が分かれば、そこに移動するまでの最短時間を求めることは比較的容易です。ところが、対角線上の点であることは予想できるのですが、その場所がはっきりしないので、とりあえずある点Pに移動するまでの最短時間を求めて、その後に点Pをプールの内部および周上で動かし、最も時間的に遠い場所を求めることにします。前半は単純な微分計算の問題、後半は2変数関数の最大・最小問題となります。以上の方針に基づいた略解を示します。尚、以下の解答では厳密な議論は適宜省略します。
これは、東京工業大学のAO型入試初年度で最も話題となった問題です。同校のAO型入試は、数学1教科のみ、出題数は4題、試験時間は5時間という特殊な形式を取っており、これは「飛び抜けた数学的思考力を持った生徒」を発掘し、「類型化された問題の解法を覚えるだけの学習成果」ではなく、「理解力」を問うことを目的としているからです。実際に試験問題には、「この試験は現時点での諸君の論理的理解力の習熟度を測るためのものであり、…」という序文がありました。
さて、「論理的理解力」を身に付けるためには、当然論理的に物事を考える力、つまり「論理的思考力」が要求されます。ただし、通常、人は知識と経験を基に思考を巡らせることから、まずはしっかりとした知識と経験、つまり受験生で言えば「類型化された問題の演習」が必要となります。そこでまず、代表的な過去の入試問題を例題として、その類題を数多く解くことによって解法を身に付けるといった学習法を一般的には取ることになります。
しかし、城南予備校では違います。数多くの問題を解くという学習指導ではなく、授業で扱った問題を、「自らの言葉で説明でききることを目標に解き直す」ことを目的として指導しています。教えられて知識や経験を増やすだけではなく、自ら説明することによってその問題の真の意図を「論理的に」捉えていくことができるからです。教える側の目線で再びその問題と対峙することによって、新しい発見、真の意味での理解が得られると私たち城南予備校は考えるからです。
良問とじっくりと向き合いながらそうした学習を積み重ね、さらに、1題の問題を単なる1題として終わらせず、その問題の本質を理解することで、「思考力」を引き出せる「学力」が備わり、引き出された「思考力」は、大学側の求める「理解力」となっていくのです。
城南予備校では、教科の境界線を越えて、このような指導法を一貫して実践しています。だから、たとえ見たこともない問題、一見複雑な問題に入試本番で出合ったとしても、決して臆することのない本当の「実力」が身に付くのです。