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政策制度要求と提言
2-10. 平和・人権・環境政策
10. 平和・人権・環境政策
軍事拡大と脅かされる「平和憲法」
日本においては、防衛庁の「省」昇格、米軍再編・強化、軍事一体化、海外派兵など日米安保条約の強化、憲法の拡大解釈により「戦争のできる国づくり」がすすんでいる。また、基地問題、在日コリアンの権利確立、被爆者援護、戦後補償など戦争責任の課題は未解決のまま山積している。歴史認識を歪める発言や沖縄戦における「集団自決」の記述変更など、政府や日本軍の責任を否定する動きがあり、戦争による多くの被害者の思いを踏みにじる事態が続いている。
07年5月、安倍政権は国民投票法を強行成立させ、2011年にも「新憲法草案」にもとづく改憲案を発議することを目論んでいた。安倍・福田両首相の政権投げ出しにより、その政治日程は困難となっているが、憲法審査会の動向を注視しなければならない。
「核」依存の進行(すすまない核軍縮と脱原発)
現在、約27,000発余りの核兵器が存在しているといわれており、その多くはアメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスの5大国が保有している。また、NPT(核不拡散条約)未加盟国のインドやパキスタン、北朝鮮などで核開発の動きがある。NPT会議での合意事項の実行、包括的核実験禁止条約(CTBT)未批准国への早期批准、全ての核保有国が参加する核軍縮交渉など、核軍縮の課題を前進させることが強く求められている。
政府はエネルギー政策に原子力発電を法的に位置づけ、現在稼働中の原発を利用したプルサーマル発電、青森県六ヶ所再処理工場の本格稼動、地震によって被害を受けた原発の再稼働などを強引に推しすすめようとしている。再処理工場が稼動することになれば余剰プルトニウムをさらに保有することになることから、周辺諸国をはじめ世界から核拡散への懸念の声があがっている。
求められる人権確立にむけた法制度の充実
08年12月10日で世界人権宣言60周年を迎えた。この間、国際人権規約の他、女性、子どもなどの各分野において30の国際人権条約が策定されてきたが、日本は12の条約に加入したにすぎず、批准した条約も国内法整備の不備、留保や未批准部分があるなど、人権救済についての遅れがある。国連人権理事会は、理事国でもある日本に国内人権機関の設置、差別撤廃のための諸措置、マイノリティ・先住民族への権利保障、「従軍慰安婦」問題の解決など26項目にもおよぶ勧告をした。日本政府はアイヌ民族を先住民族とした国会決議を含め、いくつかは受け容れたものの、なお多くの勧告について受け容れていない。
「人権擁護推進審議会答申」から7年が経過し、国連からも独立した救済機関の設置を再三勧告されており、「人権侵害救済法」の早期成立が求められている。自民党人権問題等調査会は、「人権擁護法案」として検討を始めたが、人権委員会の独立性やメディア規制などの問題が争点となっており、法案提出に至っていない。
狭山事件再審弁護団は、新証拠(補充書)を08年に東京高裁へ提出し、再審を求めているが依然として難しい状況である。一方で、警察の密室の取り調べのもと自白強要によるえん罪事件が多発していることに対し、取調べの可視化が求められている。また、「盗聴法」「住基ネット法」の施行に続き、少年法の厳罰化、「共謀罪」新設をめざすなど、人権侵害と国民への監視強化がすすんでいる。
200万人を越えた日本の外国籍住民の人権確立は重要課題である。すでに、欧州各国やアジアでも地域社会に参画する権利として定住外国人の地方参政権が広がっている。外国人学校の差別的な位置付けの解決、出入国における指紋押捺をさせる入管法の見直しも含め、在日外国人の人権確立の早期実現が求められている。
食・農・環境の危機
地球温暖化、森林の減少、砂漠化、農地の減少などが進行しており、特に地球温暖化問題では、「京都議定書」にもとづく対応が求められている。日本においては、CO2の排出量は増加しており、政府の対応の遅れが指摘されている。一方、CO2削減を理由に温暖化対策として原発が推進されようとしていることは大きな問題である。
人口の都市集中や市場経済優先の産業活動、第一次産業の衰退等によって食料や木材の自給率は低い水準まで低下した。その結果、農山村の過疎化・荒廃がすすみ、災害の多発や水不足・水質悪化、廃棄物の不法投棄に見られるように、国土や環境、都市の生活にまで影響を及ぼしている。
循環型社会形成推進基本法が施行され、ライフスタイルの見直しをはじめ地方分権、規制改革、国と自治体・行政と民間の役割や責任分担の見直し、市場経済と環境の調和など、具体的な環境政策の論議が行われている。これらの課題を社会システムとして具体化し、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から「循環型社会」への転換が求められている。
05〜14年は、持続可能な開発の実現に必要な教育へのとりくみと国際協力を推進するよう各国政府に働きかける国連のキャンペーン「持続可能な開発のための教育(ESD)」の10年とされている。あらゆる学習や啓発活動を通じて、持続可能な開発のあり方を考え、その実現を推進するための場や機会が設けられることが求められている。
EIにおける基礎教育保障の実現
日本教職員組合は、世界最大の産業別労働組合(GUF)である教育インターナショナル(EI)に日本で唯一加盟する教職員組合であり、EIの主要目標である「万人のための質の高い教育」、子どもの権利条約の完全実施、人権・労働組合権及び教職員の福祉・地位の改善、教育におけるあらゆる差別の根絶等の達成にむけ、EI加盟組織、NGO等と連携してとりくんでいる。
「万人のための質の高い教育」の実現
EIは、「万人のための質の高い教育」の達成にむけ、?2015年までにあらゆる人に基礎教育を実現する、?国民総生産の6%以上を国家教育予算に割り当てる、という2点をめざしている。
公教育による質の高い無償義務教育の完全実施にむけ、(1)児童労働の根絶、(2)有資格教職員の採用、(3)教育の民営化・商業化の課題把握、(4)教育の機会均等、(5)ICTの効果的利用などにとりくんでいる。
教職員の福祉と地位の改善
EIは、すべての国において、教職員の福祉と地位の改善をはかるため、人権、労働組合権及び職業の自由を完全に確立するようとりくんでいる。
具体的には、下記のことを主な目標として運動を展開している。
1. ILO第84号(結社の自由と団結権保護)、第98号(団結権及び団体交渉権)などの労働基本権にかかわる条約の批准、ILO/ユネスコの教員の地位勧告(1966年)および高等教育教員の地位勧告(1997年)の適用をめざす。
2. 教育政策の立案への教職員団体の参加を促進する。
3. 教員の資質向上のために、諸研修制度を公的機関に実施するよう求める。
4. 民間部門の類似した職務に適用されるものと同等以上の適切な賃金水準・雇用条件を公的な教育機関の教職員に保障するよう加盟組織の努力を支援する。
08年4月、ILO/ユネスコ教職員勧告適用合同専門家委員会(CEART)は、日本に実情調査団を派遣し、同年10月に報告および勧告を行なった。勧告においては、特に公務員における労働基本権のあり方に対し、66年勧告にもとづき政府と教職員組合における協議・交渉を制度化し、社会的対話を実現するよう日本政府に勧告した。公務員制度改革において、日本政府は今回の勧告に鑑み、制度設計にあたっては積極的に応じるよう求める必要がある。
教育における差別
ジェンダー、人種、婚姻歴、障害、年齢、宗教、政治的所属・見解、社会的・経済的地位、国家的・民族的出身にもとづくあらゆる形態の差別を根絶し、地域社会における理解、寛容、多様性の尊重を確立することを主要目的にしてとりくんでいる。
主な戦略的目的は、次の通り。(1)あらゆる教育機関で女性・女子の教育を受ける平等な権利をめざす。(2)あらゆる形態の女性差別の撤廃に関する条約の批准・適用と、意思決定ポストへの女性参画を支援する。(3)教育と社会におけるジェンダー平等を促進する政策の立案・実施を政府に対して提言する。(4)学校における暴力・反社会的行動とたたかう為のプログラムを提唱し、その実施を援助する。
政策制度要求と提言(2009・2010年度): PDF形式 / 4.3MB / A4・74ページ |