北九州市と山口県下関市を隔てる関門海峡で海上自衛隊佐世保基地(長崎県佐世保市)配備の護衛艦「くらま」(5200トン)と韓国籍のコンテナ船「カリナ・スター」(7400トン)が衝突した事故で、くらまの進路上にコンテナ船が進入し衝突した疑いが強いことが28日、第7管区海上保安本部の調べで分かった。コンテナ船長(44)は調べに対し「前に遅い船がいた」と説明。7管は業務上過失往来危険の疑いで両船内の現場検証を開始し、事故原因を慎重に調べている。
7管によると、衝突痕がコンテナ船の右舷前部分にあり、現場が山口県寄りだったことなどから、右側通行が原則の海峡で、くらまの進路上にコンテナ船が入ってきたと判断した。コンテナ船が前の貨物船を追い越そうとしたか、追突を回避するために左側にかじを切ったとみている。衝突現場の航路幅は約500メートルで最も狭いが、前の船を追い抜くこと自体は禁止されていないという。
北沢俊美防衛相は同日の記者会見で「通常の夜間航行では乗員の3分の1を配置しているが、事故当時は狭い海域であり、総員配置をしていた」と述べた。くらま艦長は、コンテナ船の接近を感知し衝突を避けるために艦を後退させようとしたが間に合わず、乗組員に退避命令を出したと説明しているという。海保からも民間船接近の連絡を受けたが「総員を退避させるので精いっぱいだった」と話しているという。
くらまは出火場所の艦首付近がくすぶり続けたが、事故から10時間半後の午前6時半に鎮火した。消火活動中にくらま乗組員が脱水症状を起こすなど、負傷者は計6人となった。現在は門司港岸壁に接岸されている。
事故は27日夜に発生。くらまの艦首とコンテナ船の右船首付近が衝突し、くらまの塗料庫が炎上した。コンテナ船の乗組員にけがはなかった。
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●防衛副大臣が知事らに謝罪
関門海峡の衝突事故を受け、榛葉賀津也防衛副大臣が28日午前、地元の北橋健治北九州市長と麻生渡福岡県知事を相次いで訪問。「ご心配、ご迷惑をおかけし遺憾に思っている」と謝罪し、事故当時の気象状況などの事実関係を報告した。
麻生知事が「極めて迅速に事故に対処されており、感謝しています。あの海峡は重要な海の動脈で早く事実関係を究明し、正常化することが大切」と応じると、榛葉副大臣は「知事の言葉を総理、防衛大臣に伝えたい」と語った。
一方、北橋市長は会談後、記者団に「徹底した原因究明と再発防止を望みたい」と述べた。
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●原因究明待ちたい
▼佐世保地方総監部・加藤耕司総監の話 昨年の「あたご」の事故後、再発防止に取り組んでいたが、事故が起きたことは誠に残念だ。事故の背景があたごと同一なのか、原因究明を待ちたい。私の役目として「くらま」をできるだけ早く修理し、前線に復帰させたい。
=2009/10/28付 西日本新聞夕刊=