関門海峡で海上自衛隊護衛艦「くらま」と韓国籍コンテナ船「カリナ・スター」が衝突、炎上した事故で、第7管区海上保安本部は28日、7管の「関門海峡海上交通センター」が衝突の数分前、コンテナ船に対し前方で低速航行する貨物船を左側から追い越すよう誘導していたことを明らかにした。その直後にコンテナ船は左へ進路を変え、対向してきたくらまと衝突した。7管は「管制官の情報が事故の一因になった可能性も否定できない」として、同センターの運用管制官から事情を聴く方針だ。
同センターは7管に属し、関門海峡を往来する船舶の位置をレーダーで把握し、船舶に運航情報を提供している。
7管や海上保安庁によると、センターは27日夜、2隻が衝突する約4分前、コンテナ船と距離が接近していた前方の貨物船と英語で交信。「左舷側を追い越してほしい」と言われ、コンテナ船に貨物船を左側から抜くよう伝えたという。コンテナ船が左方向に進路を向けたところ、直進して来たくらまと急接近。センターはくらまに回避を呼び掛けたが、その直後に衝突した。
コンテナ船を運航する南星海運(韓国)釜山事務所は「船長からは管制官から追い越すよう指示を受け、それに従い、衝突したと報告を受けている」と話す。これに対し、7管は「センターには船に指示を与える法的権限はなく、あくまで情報提供の範囲。どのタイミングで追い抜くかは船長の判断」としている。
門司海上保安部は28日、業務上過失往来危険容疑で両船内の現場検証を開始。国土交通省運輸安全委員会の事故調査官も現地入りし、事故原因究明に乗り出した。くらまの火災は10時間半後の同日午前6時半に鎮火。乗組員が消火活動で脱水症状を起こすなど負傷者は計6人となった。
=2009/10/29付 西日本新聞朝刊=