<リプレイ>
−秋の華を止める− レンズの向こうに映るのは、藍色の髪をそよがせる少女。 幹に触れる手は優しく、上をふいと見上げて花弁を待つ。 「この十月桜には一種の清廉さを感じますね」 その、一瞬を章人のトイカメラがおさめる。彼女の言う清廉さと、そしてそれを見る是空の表情がうまく撮れているといいが。 是空の巾着には、春に手に入れた桜の花びらがある。 春と秋、対のように花弁が手に入ったのは偶然だろうか? 「風邪をひきますよ」 傍らの章人に、是空はショールをさしかけた。
周囲は和やかに歓談する人々、サンドイッチを差し出す少女。どうやら皆、ピクニックの方を楽しんでいるらしい。 克乙はシャッフルしたサンドイッチが龍麻の持って来たものだと知り、ローザも交えて取り留めもない話をしていた。 龍麻はポテトサラダとレタスのサンド。 「最近お米に凝っていたので、お粥にしようともおもったんですが」 「でもこういう所で食べるおにぎりは美味しいよね」 克乙にもらったおにぎりで、龍麻も一息つく。 桜を見上げる乙姫に気付き、克乙も上を見上げた。 「栞、作りにいこうか?」 龍麻に誘われ、克乙と乙姫も腰を上げる。 ぐるりと見まわし、円は和紙に花弁を乗せる。 「神凪様は栞をどうなさいますの?」 ローザに聞かれ、円は少し照れたように応えた。 「ん、最近あんまり会えない友達が居てね」 栞のデザインや、友達が受け取った時の顔を思うだけでほんわりと楽しくなる。 白い花弁一枚一枚、丁寧に貼り付けながらつい笑みがこぼれた。 そしてそんな人の声から離れるように、桜の下を歩く結伽とザディール。 「風が冷たいな」 落ち着きなく後ろを歩く結伽の手を取り、彼は引いて歩く。 十月桜は優れた美人、心の美って意味だっけな。ザディールはそう考えながら、結伽を振り返る。 そこに居るのは、彼の心を暖かく美しい気持ちにしてくれるひと。 「あ、あの…」 顔を紅くして俯いた彼女が言い終わる前に、ザディールの方から。 I love you. 「これからは、恋人として…俺と一緒に居てくれないか」 嬉しさにじんわり涙を浮かべ、結伽はこくりと頷いた。 晴れた桜色の通りを、シャナルと紅葉も仲良く手を繋いで歩いてゆく。 「不思議ですねぇ紅葉さん」 『紅葉』と桜、双方が同時に見られるとは。 寒空も、こうして美しい景色と同時に楽しめば吹き飛ぶ。 「そろそろランチにしよう」 シャナルの黒パンを楽しみにしていた紅葉。 ドイツ風カツレツとハムフライにポテトサラダ! 対してシャナルとザワークラウトにマッシュポテトと…。 「具だくさんですねぇ」 「ああ、時間は一杯あるからね」 ゆっくりとティータイムが過ぎてゆく。
桜の下を、人ならぬモノがゆく。 晴れた空、今日はお花見日和。 レンズを覗く視線は、いつもよりずっと真剣。 弥琴はしばし手を止めて歩き、また構える。そんな弥琴の側で司は、シートの上にお茶の用意をして待っている。 ふと、側に居た日方さんが離れ。 「あれ、司兄ぃ、その鞄にもしかして食べ物入ってる?」 「ええ…」 中身はカップケーキ。 だって、司兄ぃが出かける時に作ってくれるケーキだから。 「わかりました、日方さんも待ち遠しいようですから」 ふと司は笑って鞄を辿り寄せた。
ひーさんと先生、ふわふわ尻尾ともふもふ毛玉。粗目は、彼らの様子見守るように視線で追う。 「あちらはあちらで交換するようですね」 「なんか超なごむよね、さぁちゃん」 二人(?)が交換する、サンドイッチの中身は何だろう。 微笑ましく見まもる粗目と灰であったが、纏と宴が現実に引き戻す。 「おい、シャッフルするまでもねえよ、中身把握したよ!」 纏が二人のサンドイッチを指して叫んだ。 とりあえず野菜らしきものは無く、生クリームが詰まっているのは分かる。 「そっちは中身なんなの?」 「サンドイッチは肉だろ、チッキーン!ちょい辛!」 「うわ、脂っこそう…」 纏のサンドイッチを見て、灰が首を振った。 二組に分かれて交換した方が懸命だね、と宴がぽつりと呟いたものだから、結局甘い物は甘い物、辛い物は辛い物で交換する事に。 粗目は嫌いなものがないが、灰はどうやら駄目そうだ。 ちょい辛チキンを食べながら、宴がそっと灰のフルーツサンドに手を伸ばす。 「みんなで食べるのが美味しいもんね」 「では、ねえさんのサンドイッチも頂きます」 粗目が取った宴のサンドイッチは、マスタードの味がつんと鼻に通った。
色んな使役が行き交う中過ごす一時は、ほっと心を安心させる。 道中きょろきょろ見まわしていた琉姫も、場所を決めて座ると落ち着きを取り戻した。 「サンドイッチ…結構上手くいった、から…」 琉姫がサンドイッチを差し出すと、じぃっとマルメロが見つめる。 余りトマトが好きではないマルメロであったが、琉姫の手作りだ。 「よし決めた!」 シャッフルした後手に取ったのは、アトラのアボガド入りサンドであった。 「アボガド…」 食べる? シンに差し出してみるが、悩んだ末にぱくりと口にした。 彼女らの様子を心配していたのはアトラであったから、半分こにしている二人に満足そうな顔をした。 「うん、トマトと玉子はやっぱり合うね」 琉姫のサンドをアトラが美味しく頂く。 そして琉姫は朔のサンド、朔とマルメロのシンプルなエッグサンドを。 「玉子人気だなぁ」 アトラが言うが、彼女と朔は玉子が入っていない。朔のサンドは和風で、金平牛蒡とそぼろが入ってあるのだ。 「欲しいの、皆で分けて食べたらええやん」 欲しそうにしているアトラに朔が差し出した。
仲の良さそうな主と使役達を見ると、ラクシュもふと睡蓮の事を考える。 こうして久しぶりに連れ立つと、寂しさを痛感した。 「やっぱり一緒が良かったんだね」 未都に言われ、ラクシュは側から離れぬ睡蓮を撫でる。 海苔やじゃこの入った和風サンドを未都は取り出し、睡蓮と三人で分けた。 「あっ、ど、どこかに間違って辛子入れてしもたかもしれん」 フルーツサンドを慌ててめくる、ラクシュ。 ラクシュがあたふたすると、睡蓮もあたふた。
−和やかな昼下がり− ざわざわと風邪が揺らす桜の下、足を止めてフィカスが見上げる。 「迷子にならないように、繋いで、行こう?」 差し出した細い手。 果徒はしっかりと握り返し、歩き出した。 優しい日差しの下、二人で時を紡ぐ。 歩き疲れたら、ランチタイム。 「あ、あのね、頑張ってつくったわー!」 ぐい、とフィーはサンドを差し出す。ハムと野菜のシンプルなサンド、交換に果徒は自分のものを出した。 嬉しそうに食べるフィーを見る果徒の表情は優しい。 こちらに来たばかりのグラーレアを連れ、舞皇は桜を見歩く。 秋に見る桜が楽しみだったから図鑑で調べて、本物を見てまた更にワクワクさせられた。 「写真とは違う儚さがあるね。うん、でも綺麗」 見上げるグラーレアは、うっすら目を細めた。 そう、桜を見ながらお茶をするんだった。 舞皇は場所を探すと、二人で鼻を見ながらサンドイッチを見せ合った。 「デザート用だからね」 保冷剤でひんやりとした舞皇のサンドは、苺とホイップクリーム入り。
この時期に桜なんてな、と話ながら誡矛はテキパキと用意をしていく。 いつもながら誡矛の料理は美味しそうで、パンも綺麗に焼けていた。 皆で交換もいいけど、誡矛のサンドは独り占めしたいという桃弥の気持ちがある。 「寒うないか?ポットにパンプキンスープ入れて来たんやで」 なんだかいつも、気を使われてばかり。 だから今日は桃弥もデザートを作ってきたのだ。 「桃のコンポート、自信作だぞ」 また、何度でも作ろう。 またどこかに二人で出かけて…。
まったりとした雰囲気に、錦は緊張ぎみだった。 花見というとどんちゃん騒ぎではないのか。 しかも皆、普通に二人で…。 正座をして待っている錦をちらりと見て、依空はくすりと笑った。 「お口に合えばよろしいですが」 畏まった口調で言う依空からサンドイッチを受け取る。 錦も、サラダチーズがお気に召した様子。 しかし食べたら眠くなったと、錦は依空に膝枕をしてもらって仰向けになった。何時も通りで元気な錦が、そこにある。 そっと依空が額を撫でると、くすぐったそうに錦が笑い声を立てた。
半熟目玉がとろりと美味しいサンドの後は、嘉月お手製のパウンドケーキ。交換の約束だから裕也作ってきたが、やはり嘉月にはかなわない。 「裕也が作ったの食べるのって初めて」 「…こんなので良けりゃ、いつでも作るぜ」 照れ隠しに視線を逸らし、裕也は答える。 ずっと続く桜の木々と、紅葉と。 一息ついたら、また二人で歩こう。 「春とは違って、なんか不思議だな」 嘉月はこくりと頷く。 二人で見る景色は、いつもより綺麗。
ティアリスと柳、美琴と瓜。 二組+ベビーのラルフでお出かけ。 美琴はいつも瓜の側で優しい視線を向けていて、仲が良い。ティアリスはそんな二人を見て、少し赤面する。 自分もそうある事が出来れば、と思いはする。 「パンプキンパイ作って来たの」 とりわけながら、美琴がひょいと瓜の口元に差し出した。 ハロフィンだものね、と美琴が言う。 一瞬ええっ、という顔をしたのは恥ずかしいからではなく、南瓜が苦手だから。結局ぱくりと口にした。 その仕草があまりに自然で。 見上げるラルフの視線に何か感じ取ったのか、思い切ってティアリスはパイを柳に差し出した。 「り、柳先輩…あーん」 鼓動が早まる一瞬、頂きますと小さく言った柳の横からかすめ取ってラルフがキャッチ。 呆然とする一行の前で、ラルフは満足そうにもぐもぐ。 「あはは、腹減ってるらしいな」 瓜が笑うと、釣られて皆が笑い声を上げた。 でも、おかげで少し勇気が出たかもしれない。 「もう一度頂いてよろしいですか?」 柳はティアリスに言った。
どうやら、はぐれてしまったらしい。 神威は小さくため息をつき、立ち尽くした。 こんな時、手の中の荷物が重く感じる。 「…一緒に食べませんか?」 声をかけたのは、ローザだった。 口を閉ざしたままの神威の手を、彼女が引いて座らせる。 美鈴に悠樹、ふらりと参加した人々が集う。 「ジャムのようですけれど…これが釣様の桑の実ジャムかしら?」 不思議な味に、美鈴が首をかしげた。 「僕のは鴨肉だね。篠原さんの、美味しそうだ」 悠樹が美鈴のサンドイッチを見ると、隣に居た斎が口を開く。 ティーセットも持ち込み、自分でいれた紅茶を斎が悠樹や美鈴達にも振る舞う。 「サクラチップでスモークした鴨肉だ。紅茶が良く合うだろう」 「丁度良い、タルトタタンを持って来たんだ!」 斎の紅茶に悠樹のタルトタタン、ローザはその料理に感心する。 自分ではとても出来そうにない。 その悠樹お手製のサンドは、美咲の手に。 だけどスルガは、それとは別に美咲に作って来たものがある。保冷剤で冷やして持って来た、フルーツサンドだ。 「スルガさんが作ってくれたの?」 美咲が口に入れると、苺の甘みが口に広がった。 「今日日、男も料理が出来なければならんようだから」 スルガはこう言うが、美咲は首を振る。 「美咲もお料理頑張るから、スルガさんも無理しないでね」 美咲にとって、スルガが作ってくれた気持ちが何より嬉しい。 悠斗が口にすると、バナナとクリームの甘い香りが広がった。どうやらこれは、ローザの作ったものであるらしい。 「ふむ、サンドは高確率で胡瓜が入っているものだが」 「美味しいの、美味しくないの?」 満足そうにしている兄に、紗耶がため息。 むろんこれは冷えていて美味しい。 カレー味のチキンソテーが入った紗耶のサンドもまた、悠斗がぱくり。秋の桜を見ながらの一時に、二人の息が一瞬止まる。 「そういえば、冬に咲いた桜の写真を見た気がするな」 ひらりと花弁が、紗耶のカップに落ちた。
そわそわしながら美珠は、各人の様子を伺っている。 わくわくしながら智秋は、皆の反応を待っている。 察する人は、とっくに察している訳である。 「私のは普通の苺ジャムが入ったサンドイッチよ」 皆が取ったのを待って、里奈が言った。 みんなで来る事が出来て…本当に良かった。しみじみと言いながら、里奈はサンドを口にした。そして一秒、二秒。 ゆっくり飲み込んだ後、静かに言った。 「…な、何ともないわよ。それで、この独特の味は何かしら」 「あ、わたしのせい…ろ…」 言いかけて、美珠が手をしずしずと下ろした。 謝った方がいいかもしれんな、と誠が冷静に助言をする。おろおろ見まわした後、ダッシュで美珠は逃げようとした…のを里奈がキャッチ。 「イニシアチブは私の方が上なのよ」 …。 さて、シャッフルは続く。 長閑に桜を見上げながら、斗志朗は目を細める。 「十月桜はこの時期と春とに咲くらしいな」 斗志朗の言葉に、ちらりと秋野が洋子を見やる。 何か言うんじゃないかと思われているらしいが、生憎と洋子は何も言う気がないらしい。 「私が作ったのと正反対ね」 洋子が取ったのは、六華の苺とチョコクリームのサンド。 誠のサンドを食べている秋野と二人、甘い匂いを漂わせている。 「花の美しさは理屈じゃないわ」 返答を返さず、洋子はただ微笑して肩をすくめた。 花を見ると、その平和な時間を守っているのだと感じる。だから秋野は花を見るのが好きなのだ。 「その気持ち、分かり、ます。…こんなにも、浮き立つのは、結社の皆と、一緒だから」 結社の皆と見る花は、一層綺麗に見える。 小夜はそう言うと、サンドを口にした。 甘酸っぱい、苺の味。 「また、皆で…来ましょうね」 ふわりと小夜は笑った。 この長閑な時間が、いつまでも続けばいいのに。 誠は斗志朗の様子を伺っていて、嵐を予感していた。自分のサンドは、秋野のお手製らしい。美味で安心、といった所。 「…いつ食べるんた?」 「そうだな…」 斗志朗は、凄い臭いのサンドを見下ろす。 ちょいと勇気が必要だ。 「ドリアンはコクがあって美味しいんですよ?」 しかも、智秋秘蔵のドリアンジャムだ。 智秋の笑顔が眩しい。 静かに桜ジャムのサンドを食べながら、六華が息をつく。側にハバネロサルサがあるが、洋子にしてみれば気取られるのは承知の上らしい。 「ドリアンお好きなんですね」 六華はふんわり笑みを浮かべる。 …旨いのだろう。 旨いのは分かる。 「…桜が綺麗だな」 再び視線を桜に向けた。
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参加者:55人
作成日:2009/10/30
得票数:楽しい3
ハートフル12
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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