カメラ探訪：８２年の歴史に幕　北陸鉄道石川線・終着駅、加賀一の宮　／北陸

　◇客足減った“神社前駅”
　金沢市と石川県白山市を結ぶ北陸鉄道石川線（１５・９キロ）の終着駅・加賀一の宮駅（白山市）から鶴来駅（同）までの２・１キロ区間が、１１月１日で廃止されることになった。加賀一の宮駅は１９２７年、霊峰・白山の入り口に鎮座する白山比〓（しらやまひめ）神社の「神社前駅」としてオープン。毎年、初詣で客を運んできたが、利用客が減る中、８２年間の歴史に幕を降ろそうとしている。
　カンカンカン−−。踏切の警報機が古めかしい金属音を思わせる音を響かせると、そばの橋の上で川を眺めていた人たちがカメラを手に線路脇に集まった。車体が近づく。一斉にシャッター音が響く。廃止を知り、全国から集まってきた鉄道ファンだ。
　廃止が決まったのは８日。マイカーの普及などで乗客増は見込めず、初詣で客でにぎわう以外は１日の平均乗客数は５人という状態が続いた。「空気を運んでる」とさえ言われた。住民の間では石川線全体の存続への危機感も高まってきているという。
　それが、廃止が決まってからは、２両編成の車両の席が埋まることもあるという。「いつもこのくらい乗っていてくれたら」。近くに住む男性が、乗客でいっぱいになったホームを眺め、こぼした。駅構内には存続を求める署名用紙。「どうにか残してください」とあった。鉄道ファンではない私も、のんびり走る車両が愛（いと）おしくなった。【宮嶋梓帆】

１０月２９日朝刊

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