今から17〜18年前のこと。
私はモンブランの日本総代理店に勤務していた。
品質管理、アフターサービス部門にいた私には新製品や限定品の情報は直ぐには入ってこなかった。
何時だったかは憶えていないが、私にもモンブランが限定品を造るという情報が入った。
それは『ロレンツォ・デ・メディチ』というらしい。
しかし、価格が225,000円(本体価格)。
(そんな高い万年筆売れねぇ〜よ)が私の偽らざる感想。
ただ、実際にサンプルを見たらこれが凄い。
スターリングシルバー軸に手彫金が施されて、更に私が好きな八角形。
ストレートの円筒形も好きなのだが、何故か角型が私の好みに合っていた。
私が持っていた1920〜30年代のモンブランや、酒井さんが造られた様な国産のインク止め式の万年筆にも八角形のものがあった。
円筒形がメインの中に八角形(六角形でも十二角形でもいいと思うが)の万年筆があって欲しい、と思っていた。
常々そんな思いがあった私には待ちに待った姿、形、そして素材だった。
それにしても、高すぎる。
今ではこの万年筆業界でも二桁万円の万年筆は珍しくはなくなったが、当時では有り得なかった。
女房には内緒の金で求めてしまった(共感してくれる方も居られる筈)。
それ程魅せられてしまった、モンブラン『ロレンツォ・デ・メディチ』。
今でも私にとっては、「パトロンシリーズ」の中で群を抜いて好きな、『ロレンツォ・デ・メディチ』である。
余談だが、モンブランでは当時発売後3か月で売り切れると見こし、その指示もあったようだ。
私は、(そんな訳ねぇ〜だろう)と思っていたのだが、退職し、店を始めてから聴いた情報によれば、外国からデパート価格で買いに来ていた外国人達も居たと言う。
つまり、225,000円で買い求めても直ぐに倍で売れるというのが、諸外国の状況であった。
(そんな訳ねぇ〜だろう)と思った私は、完全に間違っていたということだ。
モンブランが3ヵ月で売り尽くせると判断したことが正しかったということで、しっかりとしたマーケティングに裏付けられていたことが証明された。
それでは、現在でもシリーズとして続いている「パトロンシリーズ」の第一回目
1992年発売のMONT BLANC 『ロレンツォ・デ・メディチ』をご覧ください。
今も私の手元には『ロレンツォ・デ・メディチ』が表紙に掲載された“Pen World”と発売NEWS、説明書が入ったホルダーがある。
これは別セクションの営業企画がモンブラン社と打ち合わせして作ったもの。
何の為に、どの様な使い方をしていたのか私には判らないが、これから造り続ける「限定品」への思いの表れの様に思う。
では、そのホルダーをご覧ください。