海上自衛隊の護衛艦「くらま」(5200トン)と韓国船籍のコンテナ船「カリナスター」(7401トン)が関門海峡で衝突した事故で、カリナスターは関門橋の真下付近で進行方向に向かって左(山口県下関市側)へ急旋回し、衝突時はくらまの航路にほぼ直角に交わる方向を向いていたことが、第7管区海上保安本部の調べで分かった。くらまと衝突していなければ、座礁したか下関側の岸壁にぶつかっていた可能性があった。7管はカリナスターに操縦ミスがあった可能性もあるとみて、捜査している。
海上保安庁などによると、衝突直前、海峡中央をパナマ船籍の貨物船(9046トン)が約6ノット(時速11.1キロ)で東へ航行。その右後方からカリナスターが12~14ノット(同22.2~25.9キロ)で接近していた。
レーダーや船舶が搭載するAIS(船舶自動識別装置)の記録を分析した7管によると、衝突の数十秒前にカリナスターは貨物船の右後方に急接近。関門海峡海上交通センターの管制官は、貨物船に進行方向に向かって右(北九州市側)へ寄るよう助言し、カリナスターには貨物船を左側から追い越すよう連絡した。カリナスターは関門橋に差し掛かった時点で、通常の追い越しでは考えられない急角度で下関側へ針路変更。その結果、下関側を西へ航行していたくらまの針路をふさぐ形になり、カリナスターの右舷側部とくらまの艦首が衝突したとみられる。
7管の野俣光孝次長は、カリナスターの速度を踏まえ「この速力と角度で曲がれば、その後(航行できるだけの)元の状態に戻すのは難しい」と語った。くらまについては「(衝突回避が)難しいのは間違いない」と述べた。
くらまと管制官との交信内容も明らかになった。くらまに初めて注意喚起があったのは衝突の数十秒前。まず、くらまが管制官へ「こちら自衛艦くらま」と呼び掛けた。ほぼ同時に管制官は「カリナスターが異常に接近しているようです。避けてください」と注意。くらまから次に交信があったのは衝突直後だった。7管の山本得雄交通部長は、くらま側が衝突直前まで「何ら危険を認識していない」との見解を示した。【木村哲人】
毎日新聞 2009年10月29日 22時59分(最終更新 10月30日 0時56分)