埼玉県警に結婚詐欺容疑で逮捕された東京都豊島区の女(34)の知人男性が相次いで不審死していた事件で、女が通っていた診療所の医師が29日、毎日新聞の取材に「今年1月から7月ごろまで月1回ほど睡眠薬を処方していた」と証言した。捜査関係者によると、5月と8月に千葉県野田市と埼玉県富士見市で不審死した男性の血中からは女に処方されていた睡眠薬と同じ成分が検出されているといい、埼玉県警などは死亡との関連を慎重に調べている。
この医師によると、女は08年ごろから同診療所に通っていたが、今年1月初旬に「眠れない。睡眠薬を処方してくれませんか」と訴えてきた。「別の精神科でも処方してもらっている」と話し、数種類の睡眠薬の名前が書かれたメモを医師に示したという。
女は医師から数種類の睡眠薬の処方を受け、この後も7月ごろまで月1回ほどのペースで診療所に通っていた。医師は1回1~2週間分の睡眠薬を処方したが、途中から薬を1種類に減らし、最後は女が「だいぶ良くなった」と言ったため、処方をやめたという。医師は毎日新聞の取材に「(女は)ほかの所でも睡眠薬を処方してもらっているのだろうと思っていた。まさかこんな騒ぎになるとは」と話した。
女が介護ヘルパーとして自宅に出入りしていた野田市の無職、安藤建三さん(当時80歳)は5月15日に火災で燃えた自宅から遺体で発見された。また女と交際していた東京都千代田区の会社員、大出嘉之さん(当時41歳)は8月6日に富士見市の駐車場に止めてあったレンタカー内で遺体で見つかった。
捜査関係者によると、いずれも近くに練炭の燃えかすがあり、遺体の血中から女が処方されていた睡眠薬と同じ成分が検出された。女は大出さんについて「(遺体発見前日の)8月5日夜に自分の部屋で一緒にビーフシチューを食べた」と説明。大出さんから検出された睡眠薬の成分も、シチューを食べた時間帯に摂取された可能性が否定できないため、埼玉県警は女から当時の様子についても詳しい話を聴く方針。
大出さんの遺体からはアルコールも検出され、近くにあった練炭と七輪は女がインターネットを通じて大量に購入したものと同じタイプだったという。【松谷譲二】
毎日新聞 2009年10月30日 東京朝刊