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花岡信昭メールマガジン676号

発行日: 2009/1/23


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★★花岡信昭メールマガジン★★676号[2009・1・23]
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<<「あたご裁決」報道への疑問>>

 昨年2月、千葉県房総半島沖で発生した海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、横浜地方海難審判所の裁決が出た。あたご側の監視不十分が主因とし、所属部隊の第3護衛隊に再発防止に努力するよう勧告するという内容だ。当時の艦長ら4人に対する勧告は見送られた。個人の責任を問うよりも組織としての責任を問題にしたわけだ。

 主要各紙やネットを点検していて、疑問がわいた。各紙の報道は裁決の趣旨を正確に伝えていないのではないか、という疑問だ。

 漁船の父子が亡くなるという痛ましい事故だったが、発生当初、あたご側の責任ばかりが伝えられたことに疑問を持ち、このメルマガやブログにも書いた。かつての「なだしお」「雫石」などと同様、自衛隊全面「悪」論がまかり通る不可解さを指摘したかったのだ。

 その風潮が今回の裁決報道でも見られたのではないか。

 まず、各紙の見出しを並べてみる。

・朝日 1面「衝突、あたごの不注意 海自へ教育勧告」
    社会面「組織に勧告 戸惑う海自」「前艦長 なお『漁船が原因』」

・毎日 1面トップ「衝突 あたご側に主因 海自に安全勧告へ」
    社会面「海自 基本なおざり」「『父と兄 悪くなかった』遺族や仲間 安堵の涙」「前艦長 頭下げつつ『漁船に原因』なお持論」

・読売 1面「海自護衛隊に安全勧告 『監視体制不十分』」
    社会面「『父と兄正しかった』 遺族、安堵と悔しさ」

・産経 1面「海自に組織責任 再発防止へ勧告」
    社会面「『今さら2人は帰ってこない・・』 遺族 涙と不満」

・日経 1面「海自に勧告 『あたご』主因」
    社会面「『監視体制の構築不十分』 海自の責任 厳しく指弾」

 以上が各紙の報道ぶりである。それでは、裁決書の本文ではどうなっていた。ここに全文が出ている。

<http://www.mlit.go.jp/jmat/press/h20/210122yh.htm>

<http://www.mlit.go.jp/jmat/saiketsu/saiketsu_kako/21nen/yokohama/yh2101/20yh029.htm>


<主文
 本件衝突は,あたごが,動静監視不十分で,前路を左方に横切る清徳丸の進路を避けなかったことによって発生したが,清徳丸が,警告信号を行わず,衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 海上自衛隊第3護衛隊群第3護衛隊が,あたごの艦橋と戦闘情報センター間の連絡・報告体制並びに艦橋及び戦闘情報センターにおける見張り体制を十分に構築していなかったことは,本件発生の原因となる。
 指定海難関係人海上自衛隊第3護衛隊群第3護衛隊(旧第63護衛隊)に対して勧告する。>

 これが裁判でいう判決主文である。

 この部分は毎日、読売の要旨には出ているが、朝日にはない。この主文を素直に読めば、「あたご」の監視不十分によって発生したが、漁船が衝突を避ける動作をとらなかったことも一因、ということになる。

 主文は、<「あたご」が・・・、「清徳丸」が・・・>という構成である。「あたご」と「清徳丸」の責任をほぼ同格に扱っているというと言い過ぎかもしれないが、「清徳丸」に対する言及が冒頭から出ているのだ。これは、「あたご」の責任だけを大上段に振りかぶった1面見出しに象徴される報道ぶりだけでは分からない。



 裁決ではこの後、事実認定や原因の考察について詳細に述べているのだが、「清徳丸」については、こう記載している。


< 04時00分清徳丸は,野島埼灯台から187.5度21.5海里の地点において,船首左舷27.5度2.2海里のところに,あたごのマスト灯及び緑色舷灯が視認でき,その後同艦に明確な方位変化がなく,同艦が前路を右方に横切り衝突のおそれのある態勢で接近する状況であったが,警告信号を行うことも,行きあしを止めるなどの衝突を避けるための協力動作をとることもなく続航中,04時06分前あたごの右舷側近距離のところで,大きく右転して279度に向首したのち,前示のとおり衝突した。>

 この部分は各紙の要旨の中には出てこない。

 自衛隊がこの種の事故を起こしてはならないことはいうまでもない。担当隊員の間に連携ミスなどがあったというのであれば、再発防止の対策を取るのは当然だ。自衛隊は最高のプロ集団なのであって、たとえ相手側にミスがあったとしても、これを最大限に回避するだけの力量を求められる。

 そのことは十分に承知しながら、あえていえば、発生当初の「自衛隊側が全面的に悪い」という報道の軸をそのまま引きずってしまったということではないか。

 各メディアはもう一度、この裁決文を真摯に読み込んでみてはどうか。


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