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クローズアップ2009:米国防長官、東アジア歴訪 温度差、顕著に

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 ◇「核の傘」確約、韓国と同盟強化 「普天間」対立、日本にいらだち

 ゲーツ米国防長官は22日、東アジアの同盟国である日本、韓国歴訪を終えた。韓国とは手を携えての同盟関係強化を確認したが、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題でなかなか結論を出さない日本にはいらだちを隠さず、対照的な対応となった。来月12日のオバマ米大統領訪日までに結論を出すよう求められ、日米同盟重視の「真剣度」を試される格好となった鳩山政権だが、あくまでも民意を見極める姿勢は崩していない。

 「韓国がアフガニスタンやイラクに多くの支援をしたことに、とても感謝している。その犠牲も良く認識している」。22日、韓国国防省で開かれた米韓安全保障協議会(SCM)後の共同記者会見で、ゲーツ長官は謝意を示した。韓国は過去にイラクとアフガンへ大勢の兵員を派兵し、同盟国として「汗と血」を流してきた。共同声明では米国が、北朝鮮の脅威に対し「核の傘」を確約する同盟関係強化の方針も打ち出した。

 アフガニスタン情勢を巡って国際的な協力が不可欠となる中で行われた長官の歴訪は、アジアの同盟国とのきずなを再確認し足元を固める狙いがあった。だが20、21両日の岡田克也外相、鳩山由紀夫首相との会談では、普天間移設問題で対立し、ぎくしゃくした日米関係が表面化した。

 「政治的に可能で、運用に支障がない他の選択はない」。ゲーツ長官は、東京に向かう政府専用機内で、毎日新聞など同行記者団に、今回の訪日の主な目的が普天間移設問題の協議で、日米合意通りの計画履行を求める姿勢を明らかにしていた。

 鳩山政権には、アフガン支援策を検討すれば、普天間移設の決断は先延ばしできると解釈していた節があった。現在の米政府にとり外交・安全保障上の最大の課題はアフガン支援だからだ。

 だが、ゲーツ長官はあえてアフガン支援ではなく、普天間移設で早期決断を迫ることを優先させた。日米合意が覆れば、沖縄から離れることに抵抗した海兵隊をねじ伏せてまで合意を実現させた経緯がふいになる。また、将来的に総額200億~300億ドルとされるグアム移転費の承認を取り付けようとしている議会での努力も無駄になる。国内の批判が高まり、アジアでの米軍再編自体が頓挫する恐れもある。

 ゲーツ長官は普天間問題を「リトマス試験紙」ととらえ、鳩山政権の「日米同盟を重視する」との言葉が本物かどうか、姿勢を問いただす狙いがあったとも考えられる。

 鳩山政権発足以来、両政府高官の間で「日米同盟は両国にとって外交の礎(コーナーストーン)」が合言葉となったが、その具体策についての議論は何も進んでいない。9月23日に行われた日米首脳会談でも同盟関係を一層強化する「理念」は確認したが、具体的問題は先送りされたままだ。

 22日の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は、国務省高官の話として、安定し不変の関係だった日本が「今や、中国より厄介な存在になっている」と報じた。【米国防長官専用機上・古本陽荘、ソウル西脇真一】

 ◇「政権公約」首相こだわる

 鳩山首相は、米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市)移設で、計画通りの実施と11月のオバマ大統領来日までの結論を求めたゲーツ長官に、現行計画以外を模索する方針と「来年1月の名護市長選後の結論」の考えを示した。衆院選マニフェスト(政権公約)にこだわり、あくまで沖縄県民の意思を見極める姿勢だ。

 「選挙で公約したさまざまなメッセージがあり、沖縄県民の皆さんの総意もしっかりとうかがっていかなければならない」。22日夕、首相官邸で鳩山首相はゲーツ長官との21日の会談の発言内容を披露し、衆院選中に「最低でも県外移設」と訴えてきたことを踏まえる必要があると強調した。「アフガニスタン・パキスタン支援の方が、オバマ大統領には、はるかに大きなテーマであり、我々がすぐやるべき仕事だ」とも繰り返した。

 鳩山首相は、早期解決に応じる姿勢を見せる岡田外相、北沢俊美防衛相とは好対照だ。「沖縄県民の負担軽減の観点から米軍再編に見直しの方向で臨む」と明記した連立合意の堅持を迫る社民党への配慮に加え、普天間問題の経緯をよく知る外務、防衛官僚の情報にとらわれずマニフェストへのこだわりを貫けることがある。

 この問題で政府は、96年の返還合意以来検討されてきた他の案も検証し、新たな選択肢を見いだしたいと考えている。浮上しているのは、米軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)や隣接する米軍嘉手納弾薬庫地区などにヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)を新設して統合する案。騒音訴訟などを抱え地元自治体が強く反対した。空軍機と海兵隊のヘリコプターの共同使用は運用上問題があると米軍も強く反発し頓挫した。

 ただ、時間や費用が新基地の建設よりかからない。民主党の中堅議員は「最終的には嘉手納統合しかない」と指摘する。防衛省も今月17~18日、沖縄県に井上源三・地方協力局長を派遣、嘉手納弾薬庫地区に加え、過去に統合・移設案が浮上した伊江島補助飛行場(同県伊江村)や下地島空港(同県宮古島市)などを視察した。

 だが、計画変更に米国が簡単に応じる見通しはないのが現状だ。【西田進一郎、仙石恭】

毎日新聞 2009年10月23日 東京朝刊

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