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シベリア抑留「棄兵政策」認めず 旧日本兵の請求棄却…京都地裁

 終戦後、シベリアなどに抑留された大阪、京都など11府県在住の旧日本兵ら57人(80〜91歳、うち5人が死亡)が、旧ソ連側に兵士を労役賠償として引き渡す「棄兵政策」で精神的、肉体的被害を受けたとして、国に1人当たり1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、京都地裁であった。吉川慎一裁判長は「国が違法な棄兵政策を行ったとは認められない」として、請求を棄却した。原告側は控訴する方針。

 シベリア抑留を巡っては、強制労働の補償などを求めた3件の訴訟があり、いずれも最高裁が請求を棄却し、原告敗訴が確定している。

 吉川裁判長はそうした経緯に触れる形で、「現在まで補償を定めた立法がなく、労苦に報いるところがなかったというべきであり、その解決は政治的決断に待つべきもの」と言及した。

 判決によると、旧ソ連は1945年9月から、旧満州(現中国東北部)などにいた日本兵ら計約60万人を収容所約2000か所に抑留。抑留者は劣悪な環境で鉄道敷設工事などの長時間労働を強制され、6万人以上が死亡した。原告も1年8か月〜4年6か月にわたって強制労働に従事した。

 原告側は、旧日本軍が終戦直後に旧ソ連に提出した文書を根拠に、国が兵士らを労役賠償として提供したと主張していたが、吉川裁判長は判決理由で、「文書は、残留希望者については土着させるという内容であり、棄兵政策を裏付けるものではない」と判断。

 国が戦後、元抑留者への補償や賠償などの立法措置を怠ったかどうかについては、「戦争損害は国民が等しく受忍しなければならなかったもので、立法措置が必要不可欠とは言えない」とした。

“政治的決断”原告団が評価

 判決後、原告らは京都市内で報告集会を開いた。弁護団長の村井豊明弁護士は判決を「不当な認定」としながらも、“政治的決断”に触れた点について、「過去の訴訟でも、ここまで踏み込んだことはなく、一定の評価はできる」と分析。

 7月の衆院解散で廃案となった、抑留者らに一時金を支払うなどとする「戦後強制抑留者特別措置法案」を民主党が再検討していることもあり、「司法と立法の両方に、補償の実現を求めていきたい」と述べた。

 原告団長の林明治さん(84)は「ようやく階段の第一歩を踏み出した。今後も支援をお願いしたい」と力を込めた。

2009年10月29日  読売新聞)
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