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「司法修習生は日本国籍必要」条項を削除 最高裁

2009年10月29日8時1分

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 最高裁は11月から修習を始める司法修習生の選考要項から日本国籍を必要とする「国籍条項」を削除した。最高裁は外国籍の司法試験合格者には30年以上、特例の形で修習を認めてきたが、在日外国人や日本弁護士連合会などが「差別だ」として条項自体の削除を求めていた。

 司法試験の受験資格には以前から国籍条項はない。だが合格者が実務を学ぶ司法修習では、検察庁で容疑者の取り調べをしたり、裁判所で非公開の合議に立ち会ったりする機会がある。そのため、最高裁は「公権力の行使や国家意思の形成に携わる公務員には日本国籍が必要」との内閣法制局の見解を準用。外国籍の合格者には日本国籍取得を修習生として採用する際の条件としてきた。

 しかし、76年、司法試験に合格した在日韓国人の金敬得(キム・キョンドク)さん(故人)が韓国籍のままでの採用を希望。全国的に支援が広がり、最高裁は77年に国籍条項は残したまま「相当と認めるものに限り、採用する」との方針を示し、金さんの採用を決めた。

 90年には、外国籍の希望者に提出を義務づけていた法律順守の誓約書の廃止を決めた。さらに、永住権がない人に対しても修習を認めるなど特例扱いでこの問題に対応してきたが、一方で、国籍条項はそのまま記載していた。

 最高裁によると、これまで140人以上の外国籍の合格者が司法修習を受けたという。国家公務員である検察官と裁判官には任用されないため、外国籍の修習生は日本国籍を取得したうえで任官するか、弁護士になっている。

 司法修習生の選考を申し込む際は戸籍抄本などが必要。外国籍の場合は戸籍がないため、最高裁は、日本に定住していることを示す資料などの提出は引き続き求めるという。要項から条項を削除した理由について最高裁は「原則として採用しないと読めるような記載は削除した」と説明している。(三橋麻子、中井大助)

     ◇

 最高裁事務総局の任用課長として、金さんの採用問題に取り組んだ元最高裁判事の泉徳治弁護士の話 自由に職業を選択し、自己実現をはかることは基本的人権の中核をなす。実質的には外国籍の人も司法修習生に採用していたとはいえ、国籍条項は外国籍の人からすれば、差別感を感じることもあっただろう。外国籍の弁護士が増えることは、外国人の権利の救済が進むことにもつながると思う。

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