「水、分け合って飲んだ」転覆漁船救出の3人
10月29日3時7分配信 読売新聞
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転覆した「第一幸福丸」から救出された乗組員たち(八丈島空港で)=竹田津敦史撮影 |
牧山新吾船長(40)(同市)は死亡が確認され、行方不明の乗組員は4人。いずれも船外へ逃れようと居住区を脱出したことがわかったが、見つかっていない。
救出されたのは宇都宮さんのほか、早川雅雄さん(38)(大阪市平野区)、鳰原(にゅうばら)貴光さん(33)(静岡市駿河区)。
3人は同日午後2時頃、ヘリコプターで東京・八丈島に運ばれ、町立八丈病院へ搬送された。八丈町消防本部によると、3人は救急車内で「救出を待つ間、船内にある水だけを飲んで過ごした。船の空間(居住区)にいて、(体は)水にはつかっていなかった」と話した。病院では医師らに「わずかに残った飲料水を容器に入れ、分け合って飲んだ」。いずれも「脱水症状で1〜2日間の入院が必要」と診断された。
伊豆漁協によると、居住区は高さ160センチ程度。4畳半ほどの広さで、普段は休憩や仮眠に使われる。この船室が「空気だまり」となって3人の命を救った。
3人は医師らに、漁船が転覆した日時を「24日午後8時頃だったと思う」と説明したという。24日は、3人のうちの1人が朝食後に激しい船酔いに見舞われるほど、海はしけていた。同船は24日午後4時に僚船と無線連絡をした後、牧山船長が同7時頃まで友人と船舶電話で話していた。
第3管区海上保安本部が事情を聞いたところ、3人は「船が転覆した際、牧山船長だけが操舵(そうだ)室にいて、ほかの乗組員7人は船内の居住区にいた」と説明。転覆後、3人は居住区に残って救出を待ったが、残る4人は船外に逃れようと居住区を脱出した。この4人は救命胴衣を着けていなかった。潜水士らが船内を捜索したが、発見できなかった。
第一幸福丸が消息を絶ったのは、キンメダイ漁から下田港に戻る途中の八丈島の西約90キロ付近。気象庁によると、24日は雨で台風20号の影響もあって波高約4メートル、風速15メートル。台風は26日夜、八丈島の南を通過した。
海上保安庁によると、転覆・沈没船からの救出事例では、1971年に北海道で17人乗り漁船が転覆、25時間後に1人が救出されたのが最長だったという。
最終更新:10月29日3時7分
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