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きょうのコラム「時鐘」 2009年10月29日
佐渡のトキが年内にも、いしかわ動物園にやってくる。待ち望んだ報だが、いま一つ心が弾まない。少し車を走らせれば、黒部の里でトキに出合う機会がある。囲いの中でなく、大空を飛んでいる
分散飼育のトキは当分は非公開で、動物園へ行ってもカメラの映像を見るだけ。そう聞かされてがっかりしたが、国際保護鳥だからやむを得ぬ、とも思った。黒部のトキは、そんなひ弱な鳥というイメージを覆した。長旅に挑み、危険なはずの人里にすみついている。こうなったら、黒部周辺で新たに放鳥すれば野生繁殖の道も広がるのでは、と素人は思う 冗談じゃない、と佐渡や越後の人は怒るに違いない。保護にカネと心血を注ぎ、地域おこしの切り札として育ててきた。簡単におすそ分けができるものか、と トキのたくましい野生は、そんな人間の損得勘定や縄張り根性などをさらりと飛び越えて、黒部に新天地を求めた。「狭い了見だよ」と言わぬばかりに 越後からは、新幹線を巡って似たような声がまだ聞こえる。素通りは許さぬ、などと横やりを入れる。黒部のトキが、大笑いしてはいないか。 |