中医協人事で、全国紙が一斉に社説
日本医師会(日医)執行部の推薦枠がなくなった中央社会保険医療協議会(中医協)の人事について、全国紙朝刊は10月28日、一斉に社説を掲載した。「(医療機関の診療報酬増額の)公約実現に向けて一歩を踏み出した」(朝日)、「政権交代を改めて印象づける人事」(毎日)など、長妻昭厚生労働相の決断を評価する論調が多かった一方、先の衆院選で民主党支持に回った茨城県医師会の理事らを新委員に起用したことから、「論功行賞」(日経、産経)とならないようクギを刺す主張も見られた。中医協人事をめぐって、全国紙が一斉に社説を掲載するのは極めて異例だ。【関連記事】
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■「開業医の再診料引き下げが問われる」―朝日
日医の影響力を排除した今回の人事について、朝日は「(次期報酬改定で)地域の医療を支える病院に大胆に上積みすることが期待される」と意義を強調。日医が自民党政権下で強い力を持ち続けてきた結果、「開業医に比べて病院の再診料は低く抑えられてきた」と主張した。また、長妻厚労相が診療報酬全体を増やす意向を示していることに関して、勤務医と開業医の双方の財源確保に疑問を投げ掛けた上で、「実際には、病院経営を助けるために開業医の再診料を引き下げられるかが問われるのではないか」と指摘した。
■日医は「自民による族議員政治のシンボル的存在」―毎日
長年、自民党支持だった日医が報酬改定に影響力を持ってきたことから、毎日は「(日医が)自民党による族議員政治のシンボル的存在」とし、「政権交代を改めて印象づける人事」と評価。そして、今回の人事を「表向きの理由は病院勤務医の待遇改善」と位置付けた。
また、前回の報酬改定が日医の抵抗で「中途半端な改定に終わった」として、「民主党は来年度の診療報酬改定に向け、日医の影響力の排除を図ったといわれる」と指摘。次期改定について、勤務医や産科、小児科などに対する手厚い報酬へ向けた論議を求めた。
毎日は一方、「(新委員が)それぞれの団体の権益の主張に徹するのでは、日医に代わる圧力団体が登場するだけ」と、利害関係者が診療報酬を決める中医協の在り方に疑問を投げ掛けた。
■医師会幹部の新委員、「適任かの判断は早計」―日経
今回の人事に関して、日経は「患者の立場を第一に議論する中医協に再生させてほしい」と長妻厚労相に要望。また、日医執行部については、「開業医の利益を重視する傾向が強いといわれる」とし、そのため報酬改定で勤務医への評価が行われていなかったと指摘した。
新委員に選ばれた京都府医師会幹部と茨城県医師会理事について、日経は「適任かどうかを判断するのは早計だ」と主張。さらに、来年春の日医会長選に同県医師会長が出馬表明している点に触れ、「仮に当選すれば政権党の支持基盤という日医の機能は変わらない可能性が強い」と危機感を示した。
■「開業医全体の報酬枠に切り込むことが必要」―読売
今回の中医協人事について、読売は「政権交代と日医の中の路線対立が連動した」とした上で、「多くの国民にとって日医内部の主導権争いは重要でない」と切り捨てた。その上で、「新しい陣容の中医協が、開業医の利益を優先してきた診療報酬体系を改革できるかどうかだ」と問題提起した。
次期報酬改定については、「過酷な救急医療や産科、小児科といった分野の病院勤務医に、思い切って報酬を配分しなければならない」と主張する一方、勤務医と開業医の双方の報酬を引き上げることが財政上難しいことから、地域医療に従事する開業医への報酬を約束した上で「開業医全体の報酬枠に切り込むことが必要になるだろう」とした。
また、医師会幹部の新委員に期待感を示した上で、日医執行部については、「開業医中心の圧力団体から脱皮を図る時ではないか」と、今後の変革を求めた。
■日医枠ゼロ、「粗雑な印象を免れない」―産経
産経は、鳩山内閣が勤務医の待遇改善を図る方針を示していることから、「改革の意思を示すものといえなくもない」としながらも、「日医の全員を一度に外すやり方は、あまりにも図式的で粗雑な印象を免れない」と指摘。病院と診療所の「病診連携」を「地域医療の基本」とした上で、「勤務医と開業医の対立をあおるような事態となれば、迷惑を被るのは患者であることを忘れてはならない」と、患者である国民目線の議論の必要性を訴えた。
更新:2009/10/28 14:35 キャリアブレイン
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