九州と本州を隔てる関門海峡で27日夜起きた海上自衛隊の護衛艦と韓国船籍のコンテナ船の衝突事故で、門司海上保安部は28日午前、北九州市の門司港に接岸させた海自佐世保基地所属の護衛艦「くらま」(柏原正俊艦長、5200トン)とコンテナ船「カリナスター」(7401トン)を業務上過失往来危険容疑で現場検証し、捜索を始めた。コンテナ船側は同じ方向へ進む前方の船を追い越そうと左にかじを切って衝突したと説明しており、第7管区海上保安本部は双方が搭載しているAIS(船舶自動識別装置)で航跡や当時の速度などについて調べる。
防衛省などによると、関門海峡での船の航行は互いに右側を通ることがルールで、西へ向かうくらまは山口県下関市寄りを、東へ向かうコンテナ船は北九州市寄りを航行することになっていた。ところが門司海保によると、衝突現場は下関寄りで、コンテナ船の前を貨物船が航行中だった。コンテナ船の所有会社の説明や両船の損傷状況なども踏まえると、事故はコンテナ船が前方の船を追い越そうと左にかじを切って左側にふくらみ、くらまの針路に入った可能性が高いという。門司海保は護衛艦の衝突回避措置が十分だったかどうかも調べている。
カリナスターを所有する韓国の南星(ナムソン)海運は取材に「前の船舶を右側から追い越そうと針路を変えたが、関門管制から左側から追い越すように指示を受け、左にかじを切ったところ前から来た『くらま』の艦首と右舷船首が衝突した」と説明した。
7管の関門海峡海上交通センターによると、速い船は遅い船を追い越す場合、一般的に遅い船の左側を通る。
7管の調べでは、くらまの乗員297人のうち、負傷者は6人。うち4人が病院に運ばれたがいずれも軽症という。右舷前方を損傷したコンテナ船の乗員16人に負傷者はいない。7管は発生から約10時間半後の28日午前6時半、くらまの鎮火を確認した。
一方、国土交通省運輸安全委員会は原因究明のため、東京から船舶事故調査官3人を現地に派遣した。【木村哲人】
毎日新聞 2009年10月28日 11時20分(最終更新 10月28日 14時49分)