【速報】第78回日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 本選会2009年10月25日 演奏会/公演

【速報】第78回日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 本選会
今日も日本音コンの本選会に来ているのだ(^o^)/今日の出場者と演奏曲目をアップしておこう。ところで、東京オペラシティーB1Fにある新宿さぼてんの赤味噌の味噌汁が美味しい..。あんなに濃厚で甘みのある赤味噌は見たことがないが、どこの味噌を使っているのかしら?今日も味噌汁だけ何杯もお替りしちゃおうっ(*^^*)/磯山雅さんの新著『「救済」の音楽』が既に書店に並んでいたので早速購入した。まだページをパラパラと捲ってみただけだが、とても興味深い小見出しが並んでいる。

成田達輝  パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ短調 作品6
青木尚佳  パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ短調 作品6
柳田茄那子 シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
尾池亜美  バルトーク ヴァイオリン協奏曲第2番 

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いま前半の二人の演奏が終わりました。

①成田さん
平成のパガニーニ現る!惚れ惚れするような鮮やかな技巧で、ヤリタイホウダイ(笑)豊かな叙情を香らせ、明度の高い開放感のある響きで音色も多彩、サロン音楽風の洒落たところもあり圧倒的な好演。あまりの上手さに新日フィルの団員から笑みが漏れるほどでした。マイリマシタ。

②青木さん
成田さんが圧倒的だったのでワリを食うかなと思いきや、実に女性らしい優美さと繊細さのある演奏で、ヴァイオリン音楽の美質を存分に発揮した好演。カデンツァの美しさは筆舌に尽くしがたいものがありました。テクニックも万端で危なげがなく安心して音楽に寄りかかれる信頼感!

弦の桐朋の面目躍如たる好演が2つ続きました。

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③柳田さん
北欧の空気を感じさせる澄んだ音色で、凛とした気品を感じさせる演奏が聴けました。しっとりと叙情的なカンタービレが魅力的な地に足の着いた演奏でしたが、第三楽章のワンボースタッカートのあたりからやや肌理が荒くなりテンポも不安定になってしまったのは勿体なかったです。

④尾池さん
迷いなく確信に満ちた足取りで、まるで平野を行くが如く複雑な語法やリズムを持つ難曲を弾き進む堂々たる好演。決してブレない驚異の安定感でソリスティックな主張のあるアピール度の高い熱演の中にデリカシーも併せ持つソリストとしての天性の才を感じる逸材です。惚れました。

いま結果発表待ちです。

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第一位 青木尚佳
第一位 尾池亜美
第二位 成田達輝
入 選 柳田茄那子

聴衆賞 尾池亜美

珍しく一位が二人でました。成田さんも一位ではないかと思いますが..(猛烈に抗議

観世家のアーカイブ -世阿弥直筆本と能楽テクストの世界-2009年10月24日 その他

観世家のアーカイブ -世阿弥直筆本と能楽テクストの世界-
観世家のアーカイブ -世阿弥直筆本と能楽テクストの世界-
【演題】東京大学教養学部60周年記念
    観世家のアーカイブ -世阿弥直筆本と能楽テクストの世界-
【会場】東京大学駒場博物館
【期間】10月10日~11月29日
【料金】無料
【感想】
いま東大(駒場)で観世家のアーカイブが公開されています。その中には、なんと!世阿弥の自筆本(しかも複写ではなく原本)も展示されています!!観阿弥が猿楽に曲舞を採り入れ、世阿弥がそれまでの対話劇から独白劇としての複式夢幻能を大成しますが、その能楽がどのように伝承されてきたのか、観世宗節(七世)の世阿弥伝書の書写、観世元章(十五世)の小書(特殊演出)を中心として歴史的に貴重な資料と共に能楽の歴史(伝承)を辿ることができる大変に興味深い展示です。シェークスピアが誕生する200年も前に、世阿弥は中世の古典文学などをテクストとして、橋掛りの向こう側(異界)から死者や亡霊などを呼び寄せ、その無念を語らせて成仏させるというどんでもないポータルな空間、歌舞劇を生み出した希代の天才ですが、怨霊鎮魂の思想を背景に発展してきた日本の伝統芸能はここに極まった感があります。

http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp:8080/kanzegazo/index.html

ちょっと時間がないので、後で書き足します。

【速報】第78回日本音楽コンクール ピアノ部門 本選会2009年10月24日 演奏会/公演

【速報】第78回日本音楽コンクール ピアノ部門 本選会
今日は日本音コンピアノ部門の本選会に来ていますが、その前に寄り道して東大(駒場)で公開されている観世家のアーカイブを見てきました。世阿弥自筆の風姿花伝の断片(ファクシミリでなくオリジナル!)などが展示されていて興奮のあまり鼻血が止まりませんでした(*^o^*)

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いま石井園子さんのモツのピアコン26番と梅村知世さんのベトのピアコン5番の演奏が終わった。二人とも上手~い!石井さんはピュアな音色と滑らかなタッチで鍵盤を天衣無縫に疾駆する飛翔感のある演奏、梅村さんは輝かしい音色とタッチの美しさが印象的で力強くかつ繊細にピアノを歌わせる好演。なんかハイレベルですな。後半に続く

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中桐望さんのチャイコのピアコン1番、伊藤伸さんのラヴェルのピアコン、安部まりあさんのラフマのパガニーニ狂詩曲が終わりました。今年はかなりレベルが高く甲乙を付けがたいです。中桐さんは絢爛たるピアニズムと豊かな叙情を湛えた堂々とした演奏を聴かせてくれました。伊藤さんは歯切れのよいタッチでオケとの緊密なコンビネーションによる好演で第二楽章は出色。安部さんは弾性のあるタッチでアグレッシブな演奏が展開されましたが、この選曲は強気です。昨年ははっきりと1位が分かりましたが、今年は僅差の接戦ではないかと思います。いま審査結果待ちです。

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第一位 伊藤伸
第二位 中桐望
第三位 石井園子
入 選 梅村知世
入 選 安部まりあ

聴衆賞 伊藤伸

入選された方はもう一歩でしたが、入賞者と入選者の実力差はないと思います。個人的にはメッセージ性が強くどころどころハッとさせられる魅力的な表現が聴かれた梅村さんの演奏も高く評価しています。また、安部さんは敢えてコンクールに不利な超難曲でのチャレンジでしたがやはり若干持て余し気味だったので、もう少し安部さんの持ち味を活かせる曲でチャレンジしていれば結果は違っていたのではないかと思います。本来、音楽は極めて個人的な体験のはずで、どの演奏が優れているとかということを客観的かつ合理的に評価することは不可能であって、「コンクールの入賞」=「メジャーなマネジメントやレーベルとの契約」という命題が成り立たなくなってきた現状を踏まえると、今更ながらこのコンクールの順位付けにどれほどの意味があるのかという気がしてきます。その点、最近は小菅優さんや中野翔太さんなどのようなコンクールあがりでない気鋭の演奏家が出てきており、今後はそういう種類の人達の台頭も目覚しくなってくるのではないかと期待しています。一昔前のように「味」のある音楽家が増えてくれることを切望して止みません。

東京都交響楽団2009年10月23日 演奏会/公演

東京都交響楽団
東京都交響楽団
【演題】第686回定期演奏会Aシリーズ  
【演目】モールァルト 交響曲第29番 イ長調 K.201
    プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 作品26
      <Pf>カティア・スカナヴィ
    ショスタコーヴィチ 交響曲第6番 ロ短調 作品54
【指揮】オレグ・カエターニ
【楽団】東京都交響楽団
【会場】東京文化会館
【開演】19時
【料金】1800円
【感想】
ヴラヴィー!!今日は忙しかったのですが、無理をして聴きに行った甲斐がありました。赤穂国際音楽祭の番外編!同音楽祭に出演していたスカナヴィさんは思ったとおりの傑物でしたし、カエターニ@都響のショスタコも痛快でした。うむむ。以下、簡単に感想を残しておきましょう(モツアルなので、一曲目の感想は割愛)。

先ず、プロコですが、スカナヴィさんはクリアなタッチによるハキハキとした歯切れの良い滑舌、シャープな冴えのある技巧と曖昧さのない鋭角的なリズムで、男性的な力強さも併せ持つメカニカルな演奏を展開していました。それでいて無機質な印象はなく、音色の引き出しが豊富でデュナーミクを効果的に操りながら表情に変化を生み、閃きやパッションのある溌剌とした息吹を感じさせる明朗闊達な演奏に惹き込まれました。瑞々しい新鮮なキャベツを卸したての良く切れる包丁でザクザクと小気味良いテンポで千切りにしているときのような心地良い爽快感とでも形容すれば伝わるでしょうか。こうなるとプロコの巧妙に仕組まれた諧謔も鮮やかに浮き彫りになって実に面白い演奏が聴けたと思います。もう少し陰影を深くしてくれると良いのになと思ったところはありましたが、とりわけ第一楽章と第二楽章は秀逸の出来映えであったと思います。カエターニ@都響はややスカナヴィさんの機敏な演奏に遅れをとっていたかな?と思われるところ(第一楽章でのピアノと木管の絡みなど)はありましたが、色彩豊かで身の引き締まった演奏による好サポートであったと思います。思わず、声を掛けちゃいました(*^^*)

次に、ショスタコですが、カエターニさんの鮮やかな棒捌きと都響の身の引き締まった機動力のあるアンサンブルによる整理された演奏で、ショスタコの独特の語法や複雑なリズムを鮮やかに解析し、紛々としたアイロニーを撒き散らして諧謔の限りを尽くす快刀乱麻ぶりは痛快でした。どちらかと言うと脇の締まった無理のない安全運転という印象なのですが、決め所を押さえて要所要所でスパイスを効かせた演奏効果のあがる好演だったと思います。第一楽章はまるでオケが慟哭しているような苦悩や悲痛な叫びが込められた演奏で、ひんやりとした肌触り感の清澄な弦の響きが不気味なほど美しく、芳醇で重厚な中低弦やファゴットなど肉厚な響きのバス声部は痛々しいほど雄弁で聴き入りました。第二楽章はティンパニーのソロに極まる中間部の精緻で濃密なアンサンブルの燃焼度の高さ、高揚感にはチビッてしまいそうな凄まじさがあり、それによって主部と再現部の木で鼻を括ったような諧謔さが一層と際立っていました。第三楽章では軽薄なまでに小気味よい弦や木管、不釣合いなまでに尊大で重厚な金管や打が一体となってコーダに向って突進してく不格好な滑稽さを実に鮮やかに聴かせてしまう痛快な演奏に痺れました。もきゃ。もちろん会場は大声援で、会場がライトアップされるまでカーテンコールが繰り返される高揚ぶりでした。第6番は第5番の陰に隠れてあまり演奏されませんが、第5番で溜まった鬱憤を一気に晴らすような当て付けがましい第6番こそがショスタコらしさが発揮された真骨頂なのだと思います。

【宣伝】26人のピアニストによるハイドンクラヴィア・ソナタ全曲演奏2009年10月21日 その他

【宣伝】26人のピアニストによるハイドンクラヴィア・ソナタ全曲演奏
【宣伝】26人のピアニストによるハイドンクラヴィア・ソナタ全曲演奏
【宣伝】26人のピアニストによるハイドンクラヴィア・ソナタ全曲演奏
【演題】ハイドン没後200年特別企画
    26人のピアニストによるハイドンクラヴィア・ソナタ全曲演奏
    ~ウィーン原典版(クリスタ・ランドン校訂)の番号による~  
【演目】ハイドン クラヴィア・ソナタ第1-20番、第28-62番
    二宮洋 ハイドンの遺されたNo.25、26の動機によるソナタ ホ短調
【会場】セシオン杉並
【日時】2009年11月22日 10時30分~21時
【料金】3000円
【概要】
関係者から頼まれた訳ではありませんが、勝手に宣伝してしまいます。なんと1日でハイドンのクラヴィア・ソナタ全曲を演奏してしまおうという粋で無謀な企画の演奏会が開催されます!10時30分開演、21時終演という荒行です(@_@)しかも料金はたったの3,000円ですから1曲あたり約55円!という計算になります。この心意気に感じ入り、余計なお世話ではありますが、せめてこの演奏会が盛況になるよう微力ながら応援したいと思った次第です。こんな機会でもない限りハイドンのクラヴィア・ソナタ全曲を聴く機会はないでしょうから、多少の無理は覚悟のうえでこの荒行にチャレンジしてみる価値はあると思うのですが、いかがしょうか。出演者の1人であるピアニストの河野響子さんのブログに詳しい案内があるので、勝手にリンクしておきます。

http://ameblo.jp/kyokokawano/entry-10356422365.html

そう格安と言えば、ハイドンのボックスセット(写真)をまだ1/3も聴けていませんが、最近はブリリアントのお陰でコレクションの穴が簡単かつ廉価に埋められるので重宝している一方、芸術の叩き売りとも言える状況に物の価値というものが分からなくなってきました..。

むいから民家園 古民家で聴くバロック音楽 ~Vol.3 J.S.バッハのカンタータと室内楽~2009年10月18日 演奏会/公演

むいから民家園 古民家で聴くバロック音楽 ~Vol.3 J.S.バッハのカンタータと室内楽~
むいから民家園 古民家で聴くバロック音楽 ~Vol.3 J.S.バッハのカンタータと室内楽~
むいから民家園 古民家で聴くバロック音楽 ~Vol.3 J.S.バッハのカンタータと室内楽~
【演題】むいから民家園 古民家で聴くバロック音楽 ~Vol.3 J.S.バッハのカンタータと室内楽~  
【演目】メルーラ 私は黒いが美しい
    テレマン ターフェルムジーク フルートソロ ロ短調より
           Ⅰ.カンタービレ
           Ⅳ.アレグロ
    クープラン 神秘のバリケード
    バッハ フルートとヴィオラ・ダ・ガンバ、通奏低音のためのソナタ ト長調
           Ⅰ.アダージョ(BWV1039)
           Ⅱ.アレグロ・マ・ノン・プレスト(BWV1039)
           Ⅲ.アンダンテ(BWV1027)
           Ⅳ.アレグロ・モデラート(BWV1027)
    バッハ カンタータ「悲しみのいかなるかを知らず」BWV209より
           Ⅱ.レチタティーヴォ
           Ⅲ.アリア    
【出演】<Sop>大中利香
    <Bfl>清野由紀子
    <Vag>江浦仁美
    <Cem>山縣万里
【会場】むいから民家園(東京都狛江市)
【開演】15時
【料金】無料
【感想】
古民家を会場とするバロック音楽の演奏会が開催されるというので聴きに行くことにしました。これまでお寺を会場とするバロック音楽の演奏会を聴いたことはありましたが、古民家を会場とするバロック音楽の演奏会を聴くのは初めてです。むいから民家園(東京都狛江市)は都道114号線沿い(桐朋学園に向う方ではなく多摩川に平行に走る方)にありますが、豪農・豪商が暮していたような立派な旧家ではなく、天井は低く梁や大黒柱も細い小さな民家で、当時の庶民の慎ましやかな暮し振りが伺える佇まいです。この古民家(荒井家住宅主屋)が建てられたのは18世紀末頃だそうなので、バロック音楽が衰退し、古典派音楽が台頭してきた時期にあたり、大バッハよりも一世代若い時代になります。この古民家のご主人であった「荒井さん」もまさか200年後に自分の家の茶の間がバロック音楽の演奏会場になるなんて夢にも思わなかったでしょうな(笑)なお、少し早めに行ってエコルマホールで開催されていた「第34回邦楽の集い」を鑑賞したので写真だけアップしておきましょう。

狛江市ホームページ(以下のURL)の演目紹介に「フルートとヴィオラ・ダ・ガンバ、通奏低音のためのソナタ ト長調」と書かれてあったので、バッハの作品にG majorのフルート・ソナタなんてあったかな???と思っていたら「J.P.バッハ」と書かれてあったので、これは知られざるバッハ一族の秘曲が演奏されるに違いないと期待に胸を膨らませて会場入りしました。が、どうやら「J.P.バッハ」とは単に「J.S.バッハ」のタイプミスだったようで、ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタのチェンバロ・パートの上声部(右手)をフルートで代用して演奏するという意味合いで「フルートとヴィオラ・ダ・ガンバ、通奏低音のためのソナタ ト長調」と書かれていたようで、やや拍子抜けしてしまいました(苦笑)

さて、古民家ということで音響は期待していませんでしたが、それよりも漆喰が音を吸収してしまうのかあまり茶の間から座敷まで音が飛んで来ない印象は否めませんでした。また、障子戸1枚を挟んだ外では子供達が大騒ぎしていたので演奏に集中するどころではなく、楽器紹介のMCも外の騒音で聞こえないほどでした(汗)ということで、直ぐ後ろでドタバタとやられて落ち着いて演奏を聴けなかったので細かく演奏について覚えていないのですが、フラウト・トラヴェルソとヴィオラ・ダ・ガンバの柔らかく温もりのある音色とチェンバロの洗練された優しい語り口が古民家の雰囲気と相俟って素朴で和やかな味わいを生み、ソプラノの情感の込められた(しかし世俗カンタータといっても通俗的になり過ぎない節度を保った)歌唱を楽しむことができました。古民家の雰囲気は良かったのですが、やはり次回はホールで落ち着いて演奏を聴きたいです。

http://www.city.komae.tokyo.jp/events/index.cfm/detail.4.28970.html

今日の演奏会とは関係ありませんが、シュテルツェルのブロッケス受難曲が日本初演される興味深い演奏会があるようなので紹介しておきましょう(詳しくは以下のURL)平日の夜に武蔵野で開催されるので都心で働く社会人は行けないと思いますが、ご近隣の方はいかが。ところで、今年はヘンデルの記念年ですが、(テレマンのブロッケス受難曲は採り上げられるのに)ヘンデルのブロッケス受難曲を採り上げてくれるところはないかしら。アルフィーフ盤はもっささりとして冴えませんし、ブリリアント盤はソリストの一部に難があり大きなキズになっているので同曲の魅力、真価がいまひとつ感得できません..。

http://logosapok.exblog.jp/

都筑オーケストラ2009年10月17日 演奏会/公演

都筑オーケストラ
【演題】第16回定期演奏会  
【演目】チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35
               <Vn>松山裕香子
             交響曲第5番ホ短調作品64
【指揮】横島勝人
【楽団】都筑オーケストラ
【会場】都筑公会堂
【開演】14時
【料金】500円
【感想】
フィリアホールのランチタイムコンサートが終ってから少し時間があったので、直ぐ近くでアマオケの演奏会があったので立ち寄ることにしました。都筑オーケストラの演奏を聴くのは2回目ですが(前回は2004年の第九の演奏会で酷評させて戴きました..苦笑)、今日のソリストである松山裕香子さんのことは知りませんでしたが、現在、東京藝術大学2年生の学生だそうです。

さて、チャイコンですが、松山さんは艶のある音色を活かしてゆっくりとしたテンポで弾き込んで行く安定感のある好演で、奇を衒らったところのない素直なアプローチで真正面から楽曲に取り組んでいる真摯な姿勢に好感を持ちました。ややソリストとオーケストラのコンビネーションがギクシャクしたところはありましたが(この曲のようにソリストが主導的なポジションを占めながら情感豊かに歌い上げて行くソリスティックな性格の強い協奏曲では、ソリストがオーケストラに歩調を合わせるのではなく、オーケストラがソリストに歩調を合わせる必要があると思いますが、その意味でオーケストラのサポート能力にやや難があったと言わざるを得ません)、ガデンツァでは遠慮のない伸びやかなカンタービレが美しく、技巧面の不安もない信頼感のある好演が聴けました。

次に、チャイ5ですが、2004年の第9の演奏会の時と比べると音程を含む合奏精度は飛躍的に進歩している印象でしたが、チャイコフスキーのオーケストレーションの妙味を堪能するには管楽器(とりわけ木管楽器)にもうひと頑張りを期待したいところです。

詳しい感想は後ほど。

アレクサンドル・メルニコフ2009年10月17日 演奏会/公演

アレクサンドル・メルニコフ
【演題】第3回ランチタイムコンサート”プレミアム”  
【演目】スクリャービン 幻想曲ロ短調Op.28
            ピアノソナタ第2番ト短調Op.19「幻想ソナタ」
            2つの詩曲Op.32
            ピアノソナタ第3番嬰へ短調Op.23
            ピアノソナタ第9番Op.68「黒ミサ」
【出演】<Pf>アレクサンドル・メルニコフ
【会場】フィリアホール
【開演】11時30分
【料金】2500円
【感想】
未だ赤穂の長旅の疲れが癒えないなか、自宅近隣にあるフィリアホールのランチタイムコンサートに行ってきました。ショパンの命日に聴くスクリャービンには特別の感慨があります。スクリャービンはショパンの音楽に傾倒し彼の初~中期の作品の作風にはその影響が色濃く現れていますが、その後、神秘主義的な作風へと傾倒して行く過程を辿る演目建てになっています。シェフよし!食材よし!メニューよし!何て贅沢なランチなんでしょう!!鋼鉄のように強靭で鞭のようにしなやかなタッチによる繊細にして劇的な演奏が展開され、ピアノソナタ第2番では印象派風の描写力ある演奏、同第3番ではバランスの取れた音響設計による壮麗な演奏、同第9番ではデモーニッシュな妖気漂う高揚感のある演奏と、スクリャービンの多彩な語法を鮮やかに蘇生する好演が聴けました。

詳しい感想は後ほど。


【訃報】アリシア・デ・ラローチャ2009年10月13日 ニュース

【訃報】アリシア・デ・ラローチャ
赤穂国際音楽祭に浮かれていたので全く気が付きませんでしたが、去る9月25日にスペインが生んだ偉大なピアニスト、アリシア・デ・ラローチャさんが永眠されました(享年86歳)。グラナドスの孫弟子にあたり、グラナドスのほかモンポウ、ファリャ、アルベニス、モンサルバーチェなどスペインの作曲家の作品はもとより、モーツァルトやラヴェルなどでとても魅力的な演奏を聴かせてくれた最愛のピアニストの1人でした。光り輝くような音色や正確な技巧に加えて、その邪気のない暖かい演奏に魅了されました。僕はラローチャの演奏によってスペイン音楽の魅力に開眼され、スペイン音楽の独特のリズムやパッションだけでない奥深さを教えてくれた「かけがいのない」音楽家でした。衷心よりご冥福をお祈りします。

旧白洲邸 武相荘2009年10月13日 その他

旧白洲邸 武相荘
旧白洲邸 武相荘
旧白洲邸 武相荘
今回、兵庫県赤穂市で能楽の祖である秦河勝を祭る「坂越の船祭り」を見物し興味尽きせぬ有意義な経験ができましたが、秦河勝がうつぼ舟に乗って坂越の浦に漂着してから約1,300年の時を経て、女性で初めて能舞台に立った白洲正子さんが暮らしていた旧白洲邸 武相荘(東京都町田市鶴川)を改めて訪れてみることにしました。室内の撮影は禁止されているので、美術品や調度品の写真をアップできませんが、審美眼の持ち主であった白洲正子さんの趣味の良さが伺えます。因みに、ご主人の白洲次郎さん(兵庫県出身)は日本人で初めてジーパンを履いたと言われていますが、吉田茂元首相の側近として日本国憲法の制定に係るGHQとの交渉等に携わり、その後、戦後日本の繁栄の礎となる通商産業省を創設した戦後政治の影の功労者で、それがTBSのTVドラマにもなった「官僚たちの夏」の世界に繋がっていくんですね。昔の政治家や官僚は国家100年の大計を語り、その志を貫徹する強い信念と情熱を持っていました。而して、現代の政治家や官僚は..。NHKドラマスペシャル「白洲次郎」の影響もあってか地方のツアー客も含めて凄い賑いでした。

http://www.buaiso.com/index.html
http://www.nhk.or.jp/drama/shirasujirou/
http://www.tbs.co.jp/kanryou09/

赤穂国際音楽祭の巻<第三夜>2009年10月12日 演奏会/公演

赤穂国際音楽祭の巻<第三夜>
赤穂国際音楽祭の巻<第三夜>
赤穂国際音楽祭の巻<第三夜>
今日も約600kmを運転しなければならないと思うと気が重いのだ..。/プレコンサートに来ていますが、赤穂市文化会館小ホールのブザー音に耳を潰されてしまいました(涙)多目的ホールのようでデットです。お~、ホールの館内放送が関西弁だ!/本公演三日目はヒートアップし、ようやく赤穂国際音楽祭らしくなってきたと思ったら、こちらがヒートアップする前に終わってしまつた。声援は飛ばなかったが、ブラームスのホルン三重奏曲も出色だったと思う。声を掛ければ良かった。

【演題】プリコンサート
【場所】赤穂市文化会館 小ホール
【時間】13:00~
【出演】①ハーモニーヴァイオリンアンサンブル教室の子どもたち
     姫路交響楽団有志
      <Com>黒田洋
      <Vn>樫本大進
    ②カルテットSPASSO(東京藝術大学音楽学部)
      <1stVn>宮田英恵
      <2ndVn>辻本雲母
      <Va>村田恵子
      <Vc>豊田庄吾
【演目】①ハイドン ヴァイオリン協奏曲ハ長調Hob.Ⅶa:1より第二楽章
      <Vn>樫本大進
     メンデルスゾーン 「真夏の夜の夢」より「行進曲」
    ②ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第7番ヘ長調op.59-1「ラズモフスキー第1番」より第二楽章
【感想】
先ず、ハーモニーヴァイオリンアンサンブルですが、一日目と演目を入れ替えてメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」より「行進曲」が演奏されました。椅子に座ると床に足が着かない子供達は足台としてブロックを下に置いていましたが、こんな年端も行かぬ子供達に弾けてしまうとは..。僕には無理です。明確なリズムとデュナーミクによるメリハリと高揚感のある堂々たる勇ましい演奏が聴けました。次に、カルテットSPASSOですが、やはり屋外ステージとホールとでは聞こえ方が全く違い、一日目の感想に加えて、内声のハーモニーが豊かに響き、微妙なニュアンスまで伝わってくるバランス感覚に優れた好演でした。ヴィオラの村田恵子さんは赤穂出身だそうですが、これだけ立派な演奏を披露した凱旋公演にご両親も鼻が高いのではないかと思います。

【演題】本公演三日目
【場所】赤穂市文化会館 大ホール
【時間】15:00~ 
【出演】<Hr>ブルーノ・シュナイダー
    <Pf>カディア・スカナヴィ
    <Vn>ナタリア・ロメイコ
    <Vn>樫本大進
    <Va>ギャレス・ルベ
    <Va>ユーリ・ジスリン
    <Vc>堤剛
    <Vc>クラウディオ・ボホルケス
【演目】ハイドン 3声のディベルティメント 変ホ長調 Hob.Ⅳ:5
    ショスタコーヴィチ チェロソナタ ニ短調 作品40
    ブラームス ホルン三重奏曲 変ホ長調 作品40
    ブラームス 弦楽六重奏曲第2番 ト長調 作品36
【感想】
先ず、ハイドンですが、小気味良く軽快なヴァイオリンと、これと戯れるように呼応するソティスフィケートされたチェロはどこか遊び心を感じさせるもので、甘く柔らかい音色のホルンによる軽妙洒落た好演が展開されました。かなり良い演奏だったと思うのですが、何故かカーテンコールはありませんでした。これでは演奏者が可愛そう..。次に、ショスタコですが、堤さんの全身全霊を傾けた気迫の篭った演奏に圧倒されました。一昨年の桐朋祭で堤さんがエルガーのチェロコンを演奏されましたが、あの名演奏を彷彿とさせる密度の濃い演奏です。毒気のあるアイロニーを撒き散らす嫌味のある演奏とは異なり、いぶし銀の味わいの中にウィットを散りばめた狂気と知性とを感じさせる面白い演奏が聴けました。ピアノはあの硬質なタッチから生まれるクリアな響きによる鋭角的な切り込みが鮮やかで、その突進力のある威勢の良い演奏に舌を巻きました。草食系のピアニストと思いきや、実は豪腕を振るう肉食系のピアニストだったのね。この熱演に会場も沸きました。次に、ブラームスのトリオですが、肌理細やかな情感表出が出色のヴァイオリンと、これに幻想的なタッチで彩りを添えるピアノによって豊かな叙情性を湛えた演奏が展開され、甘く柔らかいホルンの包容力のある響きがホール一杯に広がる優美な演奏に陶酔させられました。このホールは木の温もりを感じさせる柔らかい残響が特徴だと思いますが、それがホルンの音色が良くマッチしていました。後方席に元気なお客さんがいたので声援を飛ばすだろうと思いきや誰も声援を飛ばさず、声を掛ける機会を逸してしまいました。これだけの演奏をしているのに観客が無反応というのも演奏者に酷な気が..。最後に、ブラームスのゼクステットですが、(第一楽章の記憶がありませんが)第二楽章の吸引力ある熱演に腰を抜かし(カッシーがかなり他のメンバーを煽っていましたが、これに易々と応えてしまう他のメンバーの辣腕も凄いです)、一転、第三楽章のデリカシーのある演奏に魅せられました。このようなデリカシーのある表現は樫本さんの独壇場ですな。第四楽章では精緻で濃密な燃焼度高い熱演による大団円となりました。

最後に、総括という訳ではありませんが、赤穂国際音楽祭には、日頃、殆どクラシック音楽を聴かない初心者層が多く聴きに来ていた様子で(楽章間の拍手がたびたび起こっていましたし、会場での観客の会話などから察すると)、市民の市民による市民のための音楽祭という性格が色濃く出ているように感じられました。この点が同じクラシック初心者層を広く集客するラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンとは大きく異なるところだと思います。なお、「坂越の船祭り」との絡みで言えば、同じ市内で行われていたイヴェントであったにも拘らず、相互に連携が図られていなかったのは非常に残念でした。日本の伝統芸能の縁の地で世界中から一流の音楽家が集って開催される音楽祭は他の音楽祭にはない重要な意義があるように思われ、例えば、秦河勝を祖とする雅楽の普及を名目として雅楽とのコラボレーションなどを試みられても面白かったのではないかと思います。雅楽で使われる「笙」は邦楽器の中で唯一、和音を奏でられる楽器なので西洋の楽器との相性は良さそうです。東儀秀樹さんなどに頼めば、手弁当でも快く引き受けてくれるのではないかと勝手な期待を抱いてしまうのですが..。

坂越の船祭り2009年10月11日 その他

坂越の船祭り
坂越の船祭り
坂越の船祭り
予ねてより秦河勝を祭る「坂越の船祭り」を見物したいと思っていましたが、折り良く今回は赤穂国際音楽祭の期間中に開催されるということで満を持して見物することにしました。因みに、秦河勝は能楽と雅楽の祖と言われ、金春家(能楽)と東儀家(雅楽)は秦河勝の子孫だと言われています。ついでに言うと、観阿弥は楠木正成の子孫と言われていますが(世阿弥の娘婿が金春禅竹)、僕の家系も楠木正成の流れを汲む武家なので、奇しき因縁を感じます。そんな日本の伝統芸能の縁の地に世界中から一流の音楽家が集って赤穂国際音楽祭が開催されている訳ですから感慨一入です。以下に簡単な祭りの進行表をアップしておきましょう。

12時30分 神霊遷祭
13時30分 行列繰出し(鼻高、獅子、頭人、神輿の行列)
14時50分 神輿海岸到着(バタ板掛けの練り)
15時30分 船渡御出船(櫂伝馬を先頭に12隻の祭礼船の巡航)
16時30分 生島お旅所着船
18時00分 お旅所出船
18時20分 東ノ浜着船(バタ板掛けの練り)
19時00分 還幸行列
19時10分 宮入り着御

『かの河勝、欽明・敏達・用明・崇峻・推古・上宮太子に仕へ奉る。此芸をば子孫に伝へ、化人跡を留めぬによりて、摂津国難波の浦より、うつほ舟に乗りて、風にまかせて西海に出づ。播磨の国坂越の浦に着く。浦人舟を上げて見れば、形人間に変れり。諸人に憑き崇りて奇瑞をなす。則、神と崇めて、国豊也。「大きに荒るゝ」と書きて、大荒大明神と名附く。今の代に霊験あらた也。本地毘沙門天王にてまします。』(世阿弥「風姿花伝」より抜粋)

先ず、「神霊遷祭」から開始されましたが、宮に収められている神輿の前(神前)で恭しく神事が執り行われ、雅楽の奉納演奏(たぶん生演奏ではなく録音だと思いますが)や獅子舞の奉納舞いが行われ、そのまま「行列繰出し」へと雪崩込みます。宮の中を見物する時間的、空間的なゆとりがありませんでしたが、沢山の絵馬と一緒に、立派な額縁に納められた能面と小鼓の絵が掛けられていたのが目を引きました。毛利家の家紋が刻印されていましたが、由緒ある奉納絵なのでしょうか?「行列繰出し」では、鼻高、獅子、頭人、神輿の行列が1時間以上を掛けてゆっくりと宮から浜に向かって参道を練り歩いていきますが、舞い歩く鼻高と獅子を遠巻きに見ながら横笛と太鼓のお囃子の一団が着かず離れず音楽を奏していきます。僕よりも若い人達が横笛を吹いている姿を見て、何百年にも亘って受け継がれてきた生きた伝統の息吹を感じ、密かな感動を覚えていました。そんな横笛を吹く方々の後姿をパシャリ!(10月9日の日記に写真をアップしました)。あれだけ長い時間に亘って横笛を吹き続ける訳ですから、脳が酸欠にならないのか心配になります。また、1時間も舞い歩き続ける鼻高と獅子の体力は尋常ではありません。

http://bravi.diarynote.jp/200910091742086849/

「神輿海岸到着」までは見物できましたが、赤穂国際音楽祭に向うために一番の見所であろう「船渡御出船」が見物できず涙を呑みました。しかし、昔ながらの手漕ぎ船を初めて見ましたし、御神木(ひょんの木?)や哲学者の梅原猛さんの俳句(「ひょんの実に、似たるうつぼで、流れ着き」)が刻まれた記念碑などもあり十分に楽しむことはできました。おそらくもう少し時間があれば色々な発見があったと思いますが、約1300年前に秦河勝が生島に流れ着き、それから約700年後に観阿弥、世阿弥によって能楽が大成され、更に約600年の歳月を経て現在に至るという歴史の流れに思いを馳せると感慨深いものがありいます。因みに、坂越の船祭りについては、以下の書物に詳しいので、ご興味のある方はいかが。

「精霊の王」(中沢新一著/講談社)
「うつぼ舟Ⅰ 翁と河勝」(梅原猛著/角川学芸出版社)
 
続く。

赤穂国際音楽祭の巻<第二夜>2009年10月11日 演奏会/公演

赤穂国際音楽祭の巻<第二夜>
赤穂国際音楽祭の巻<第二夜>
赤穂国際音楽祭の巻<第二夜>
今日の赤穂も秋晴れの良い天気だ!昨夜は地酒「忠臣蔵」(大吟醸)をあおって泥のように寝ましたが、これで充電ができました。/赤穂中央病院で荒井牧子さん(東京芸大)のパイプオルガンの演奏を聴いた。バッハの好演が聴けました。/能楽・雅楽の祖、秦河勝を祭る「坂越の船祭り」に来ています。何やら神事を執り行っていますが、確か舞を舞うはずなのです。/さすがは瀬戸内三大祭り!こんなにスケールの大きな祭りとは思わなかつた!!まじ鼻血もの!あ~時間がないな~。最後まで見たいな~。/御神体(御輿)を船に乗せるメインイヴェントを見られずに後悔しきりです。後ろ髪を引かれる思いで、お隣の岡山県にある国宝の閑谷学校に来ました。周囲を山々に囲まれた文字通り閑かな谷間にひっそりとあります。丁度、リハーサル中でしたが、ホルンの音が周囲の山々にコダマして残響効果のある天然のホールといった感じです。/谷間にあることが災いし、まるで冷蔵庫の中で演奏を聴いているような寒さでした。スタッフの方がカイロを配ってくれましたが、やはりこの時期に夜の野外コンサートは無理があるかもしれません。

【演題】ほのぼのコンサート
【場所】赤穂中央病院
【時間】11:00~ 
【出演】<Org>荒井牧子(東京藝術大学音楽学部)
【演目】フレスコバルディ カッコウによるカプリッチョ
    ラインケン フーガ ト短調
    バッハ 18のコラール前奏曲より「装いせよ、わが魂よ」 BWV654
    ブラームス 11のコラール前奏曲 作品122より
          「わが心の切なる喜び」「装いせよ、わが魂よ」
    バッハ ピエスドルグ BWV572
【感想】
小型のパイプオルガン(パイプ:約650本、ストップ:10)ですが、病院の中にパイプオルガンがあるのには驚きました。演奏者は東京藝大のアンジェラ・アキこと荒井牧子さんです。先ず、フレスコヴァルディですが、どこか牧歌的で心和むチャーミングな演奏でご挨拶。未だにカッコウのモチーフが何回でてくるのか正確な数を数えられたことはありません..。次のラインケンでは秋風のように清々しい軽快なフーガが楽しめました。次のバッハのコラールですが、どっしりとした重厚感のある足鍵盤による低声部と、宛ら天から光が差し込んでくるような神々しい右手の上声部(声楽パート)とのコントラストが美しく、日曜日の朝にふさわしい心洗われる演奏に魅了されました。次のブラームスではストップの選択が効果的で人肌の温もりを感じさせる暖かく優しい演奏に惹かれ、最後のバッハのピエスドルグでは実に輝かしい響きをオルガンから引き出して格調高い感動的な好演となりました。Soli Duo Gloria!

【演題】本公演二日目
【場所】閑谷学校
【時間】17:30~ 
【出演】<Hr>ブルーノ・シュナイダー
    <Pf>カディア・スカナヴィ
    <Vn>ナタリア・ロメイコ
    <Vn>樫本大進
    <Va>ギャレス・ルベ
    <Va>ユーリ・ジスリン
    <Vc>堤剛
    <Vc>クラウディオ・ボホルケス
【演目】シーマン ホルンとピアノのためのアダージョとアレグロ変イ長調作品70
    アレンスキー 弦楽四重奏曲第2番イ短調作品35
    グラズノフ ホルンと弦楽四重奏のためのセレナーデ
          ホルンと弦楽四重奏のためのイディル
    メンデルスゾーン ピアノ四重奏曲第3番ロ短調作品3
【感想】
う~む。やっぱり感想を書き難いです。一日目と同じ印象です。個々の演奏者の卓抜した技量は随所に感じられ、紛れもなく一流の演奏なのですが、いまひとつ演奏が乗り切れていない(ツボに嵌っていない)印象を拭い切れませんでした。あまり演奏コンディションが良くなかったことも遠因かもしれません。そんな中でも最後のメンデルスゾーンは出色でした。とりわけ第二楽章では樫本さんの好パフォーマンスに唸らされましたが、こういうデリカシーのある叙情的な表現にかけては樫本さんが現役のヴァイオリニストの中で随一ではないかと思います。もうBPOはソリストを呼ぶ必要はありませんな。何時ぞやサントリーホールで聴いた樫本さんのショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の演奏は僕にとって同曲の忘れえぬ名演奏となっています。スカナヴィさんの硬質なタッチから生まれるクリスタルのような透明感のある音色も印象的で、今月末に都響と共演するので聴きに行こうかしら。

三日目に続く。

赤穂国際音楽祭の巻<第一夜>2009年10月10日 演奏会/公演

赤穂国際音楽祭の巻<第一夜>
赤穂国際音楽祭の巻<第一夜>
赤穂国際音楽祭の巻<第一夜>
もう赤穂に着いてしまつた。高速休日1,000円の影響で吹田や西宮の辺りで渋滞に嵌るのかと思いきや、意外とスムーズに通過できたので予定よりも早く着き過ぎてしまった。本来ならば13,000円前後する高速料金も僅か2,100円で済むのはありがたい。まだチェックインまで時間があるので、赤穂駅前にある「珈琲館」で暇つぶし。うむむ。さて、これからチェックインの時間までどうやって暇をつぶそうか。この辺に遊ぶところはなさそうだし..。取り敢えず、秋晴れをバックに赤穂城の清々しい御姿をアップしておこう。/ふらふらと大避神社に来てみたら、明日の「坂越の船祭り」の準備が着々と出来ているようだ。あれが能楽の祖、秦河勝がうつぼ舟に乗って流れ着いた生島かぁ。うんうん。/県道32号線沿いの峠道をクネクネと車で登っていくと、播磨灘を一望できる絶景スポットに出くわした。瀬戸内海に浮かぶ島々、ゆっくりと行き交う船々、その穏やかな美しい景色を眺めていると、ここだけ時間が止まっているようだ。/プレコンサートとほのぼのコンサートが終わり、これから本公演ですが、やはり野外でのコンサートは体力を消耗します。もう疲れました。/夕焼けに染まる山の端を見ながら、ケンプが弾くベートーヴェンのピアノソナタを聴いている。おごらない、おもねらない、かざらない、正直で誠実な優しい音楽が聴こえてくる。不器用だが、人間味が溢れている。あ~、やっぱりケンプの音楽が好きだな、などと思いながら本公演一日目の開演を待つ。静かに日が暮れてゆく。

【演題】プリコンサート
【場所】赤穂城本丸特設会場
【時間】13:00~
【出演】①カルテットSPASSO(東京藝術大学音楽学部)
      <1stVn>宮田英恵
      <2ndVn>辻本雲母
      <Va>村田恵子
      <Vc>豊田庄吾
    ②ハーモニーヴァイオリンアンサンブル教室の子どもたち
     姫路交響楽団有志
      <Com>黒田洋
      <Vn>樫本大進
【演目】①ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第7番ヘ長調op.59-1「ラズモフスキー第1番」より第二楽章
    ②モーツァルト セレナーデ第13番ト長調K.525「アイネクライネナハトクジーク」より第一楽章
     ハイドン ヴァイオリン協奏曲ハ長調Hob.Ⅶa:1より第二楽章
      <Vn>樫本大進
【感想】
先ず、カルテットSPASSOですが、一昨年と同じメンバーなのが素晴らしいです。余計な力みがなく緩急の変化やモチーフの受け渡しなどごく自然な呼吸感で、長年SQを組んでいるメンバーならではの洗練された演奏が聴けました。緻密で繊細なアンサンブルは主題の性格付けや内声との呼応が明瞭で、音楽の文脈が聞き取り易い整理された演奏に好感しました。野外ステージなので内声のハーモニーが拡散してしまって十分に香ってこなかったのは残念ですが、三日目は屋内での演奏なので期待したいです。次に、ハーモニーヴァイオリンアンサンブルですが、まだ分数楽器を使っているような小さい子供たちもいる総勢50名程度の合奏でしたが、練習の成果が発揮されたのか、縦線が揃い、音程も安定した整った演奏で、拍節感があり音楽に溌剌とした気風が感じられる秀演でした。この中から第2のカッシーが誕生するかもしれませんな。樫本さんのソロですが、野外ステージの一番後ろの席で聴いていたのですが、野外で距離があるにも拘らず甘い香気を放つ瑞々しい音色が鮮度を失わずに後席まで届くミラクルなパフォーマンスで、ニュアンスの豊かなカンターヴィレはカッシーの独壇場です。BPOの中でも突出した存在になることでしょう。マイリマシタ。

【演題】ほのぼのコンサート
【場所】赤穂市民病院
【時間】15:00~
【出演】<Mb>間瀬尚美(同志社女子大学学芸学部)
    <Pf>川端由美子(神戸女学院大学音楽学部)
【演目】安倍圭子 竹林
    セジョルネ マリンバと弦楽オーケストラのための協奏曲
    モンティ チャルダッシュ
【感想】
赤穂には赤穂市民病院と赤穂中央病院という2つの大きな病院が隣接した場所にありますが、病気で外出できない患者さんにも音楽を楽しんで貰おうという趣向なのでしょうか各々の病院を会場として演奏会が開催されます。今日は間瀬さんのMCを挟みながら演奏が行われましたが、関西弁のMCがとても新鮮でした(笑)先ず、マリンバの世界では知らぬ人はいない安倍圭子さんの竹林ですが、竹林をイメージさせる凛とした響きが印象的で、竹製のスティックを叩き付けて竹の質感を表現する面白い奏法も聴けました。次に、セジョルネですが、マリンバは調律ができない楽器なので平均律のピアノと合わせると多少の不協和を生じますが(マリンバは自然の音、ピアノは人工の音)、マリンバの様々な音色や音質を楽しめました。マリンバは同じ音を連打することで打撃音のカドが取れて響きがまろやかになり、木の温もりのある響きが魅力的に感じられました。第二楽章は非常にメロディアスな曲想(ピアソラの曲に甘味料を加えて更に甘くしたような味付け)で、とりわけピアノのピアニスティックな叙情が出色でした。最後に、チャルダッシュと熊蜂の飛行が演奏されましたが、超絶技巧風のアクロバティックな演奏が展開され観客は圧倒されていました。昔、五嶋みどりさんがミュージックシェアリングで猛烈な速さで熊蜂の飛行を演奏し、観客の子供達が口をポカンと空けて呆然自失としていたことがありましたが、その光景を彷彿とさせます。

【演題】本公演第1日目
【場所】赤穂城本丸特設会場
【時間】18:00~
【出演】<Pf>カディア・スカナヴィ
    <Vn>ナタリア・ロメイコ
    <Vn>樫本大進
    <Va>ギャレス・ルベ
    <Va>ユーリ・ジスリン
    <Vc>堤剛
    <Vc>クラウディオ・ボホルケス
【演目】ハイドン ピアノ三重奏曲第39番 ト長調 Hob.XV:25
    ショスタコーヴィチ ピアノ三重奏曲第2番ホ短調 op.67
    ベートーヴェン 弦楽三重奏曲第9番 ハ短調 op.9-3
    メンデルスゾーン 弦楽五重奏曲第2番 変ロ長調 op.87
【感想】
う~む。後半になるにつれて徐々にエンジンがかかってきましたが(メンデルスゾーンのAllegro-molto-vivaceは良かった)ですが、ややエンジンがかかるのが遅過ぎた印象(手を抜いているという意味でなく演奏が乗り切れていないという印象)を否めず、確かに演奏は一流なのですが物凄く面白い演奏であったかと言われると口を濁してしまいます。一昨年は、メンバー同士で挑発し合っているような当意即妙、変幻自在なハラハラするようなアンサンブルが展開され、メンバー1人1人が一歩踏み込んだ演奏を行いながらもアンサンブル全体としては1つの楽器で演奏しているような凄まじい統制感に貫かれていた名演が聴けました。今日はもう一歩踏み込め切れていない印象を否めず、そのことは会場の観客の反応に素直に表れていたと思います。しかし、後半はかなりエンジンがかかってきた印象なので2日目、3日目のリベンジに期待しましょう!

二日目に続く。

赤穂国際音楽祭の巻<前夜>2009年10月9日 演奏会/公演

赤穂国際音楽祭の巻<前夜>
赤穂国際音楽祭の巻<前夜>
赤穂国際音楽祭の巻<前夜>
明日から赤穂国際音楽祭~LePont2009~が始まりますが、このBlogでも細々と地味に盛り上げて行こうと思います。今年は能楽・雅楽の祖と言われる秦河勝を祭る「坂越の船祭り」の開催と重なるので、個人的には鼻血が止まらないほど興奮しています。神奈川から赤穂までは片道約600kmの道程で一作年は車で行ってウンザリでしたので次回は絶対に新幹線で行こうと心に決めていましたが、高速休日1000円の魅力に負けて今回も車で行くことにしました。これは容易ならざる苦役です。トホホ。以下に演目をあげておきます。ところで、本公演2日目のグラズノフのホルン五重奏曲は聴いたことがありませんが、そもそもグラズノフはホルン五重奏曲なんて書いていたかしら?

●10月10日(土)
 プリコンサート 13:00~ 赤穂城本丸特設会場
   <出演>カルテットSPASSO(東京藝術大学音楽学部)
          <1stVn>宮田英恵
          <2ndVn>辻本雲母
          <Va>村田恵子
          <Vc>豊田庄吾
       ハーモニーヴァイオリンアンサンブル教室の子どもたち
          <Com>黒田洋
          <Orc>ハーモニーヴァイオリンアンサンブル教室(1~7期生)
              姫路交響楽団有志
          <Vn>樫本大進

 ほのぼのコンサート 15:00~ 赤穂市民病院
  <出演>マリンバ 間瀬尚美(同志社女子大学学芸学部)
       ピアノ 川端由美子(神戸女学院大学音楽学部)
      ◇ 安倍 圭子 竹林
       ◇ E.セジョルネ マリンバと弦楽オーケストラのための協奏曲
       ◇ チャルダッシュ Ⅴ.モンティ

 本公演第1日目 18:00~ 赤穂城本丸特設会場
       ◇ ハイドン ピアノ三重奏曲第39番 ト長調 Hob.XV:25
      ◇ ベートーヴェン 弦楽三重奏曲第9番 ハ短調 op.9-3
      ◇ アレンスキー ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 op.32
      ◇ メンデルスゾーン 弦楽五重奏曲第2番 変ロ長調 op.87

●10月11日(日) 坂越の船祭り!!
 ほのぼのコンサート 11:00~ 赤穂中央病院
  <出演>オルガン 荒井牧子(東京芸術大学音楽学部)
       ◇ フレスコバルディ かっこうによるカプリッチョ
       ◇ ラインケン フーガ ト短調
       ◇ バッハ 18のコラール前奏曲より「装いせよ、わが魂よ」 BWV654
       ◇ ブラームス 11のコラール前奏曲 作品122より
               「わが心の切なる喜び」「装いせよ、わが魂よ」
       ◇ バッハ ピエスドルグ BWV572

 街かどコンサート 14:40~ JR播州赤穂駅1階待合所
   <出演>ハーモニーヴァイオリンアンサンブル教室の子どもたち

 本公演第2日目 17:30~ 閑谷学校特設会場(岡山県備前市)
       ◇ シューマン ホルンとピアノのためのアダージョとアレグロ 作品70
      ◇ アレンスキー 弦楽四重奏曲第2番 イ短調 op.35
      ◇ グラズノフ ホルン五重奏曲
      ◇ メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調 op.66

●10月12日(月・祝)
 プリコンサート 13:00~ 赤穂市文化会館
   <出演>カルテットSPASSO(東京藝術大学音楽学部)
       ハーモニーヴァイオリンアンサンブル教室の子どもたち

 本公演第3日目 15:00~ 赤穂市文化会館
      ◇ ハイドン ホルンとヴァイオリンとチェロのためのディヴェルティメント Hob.Ⅳ:5
      ◇ ショスタコービッチ作曲 チェロとピアノのためのソナタ
      ◇ ブラームス作曲 ホルン三重奏曲 op.40
      ◇ ブラームス作曲 弦楽六重奏曲第2番 ト長調 op.36

http://www.city.ako.hyogo.jp/IMFA/index.html

オーケストラ・エレティール2009年10月4日 演奏会/公演

オーケストラ・エレティール
オーケストラ・エレティール
オーケストラ・エレティール
【演題】第40回定期演奏会  
【演目】芥川也寸志 交響管弦楽のための音楽
    ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲ニ短調
      <Vn>宮川正雪
    ショスタコーヴィチ 交響曲第7番ハ長調「レニングラード」
【指揮】新田ユリ
【楽団】オーケストラ・エレティール
【会場】すみだトリフォニーホール
【開演】14時
【料金】1000円(但し、招待状を貰った)
【感想】
今日は宮川正雪さんがハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲を演奏するというので聴きに行くことにしました。しかし、嬉しくなるような濃い演目です。なお、すみだトリフォニーホールの近くで流し踊りをやっていたのでパシャリ!艶やかなピンク地の着物が美しいですな。

先ず、一曲目ですが、(僕の偏見かもしれませんが)どうも芥川也寸志さんの曲はショスタコーヴィチやストラヴィンスキーなどの亜流のように聴こえてしまうので好きになれません。よって、同曲の感想は割愛します。最近、ナクソスからショスタコーヴィチの交響的断章(交響曲第9番の初稿)の世界初録がリリースされて話題になりましたが、(楽譜の入手が可能ならば)こちらの演奏を聴いてみたかったです。どこぞのアマオケで採り上げてくれないかしら。

次に、二曲目ですが、途中で「事故」はありましたが、お客さんの暖かい反応が会場の空気を和らげ、却って、それ以降の演奏に緊張感のようなものが生まれ、総じて好演になっていたように思います。この曲はどちらかと言うとサイボーグ系ヴァイオリニスト向きの曲趣なので、宮川さんの持ち味とあまりマッチしていないのではないかと思っていましたが、第二楽章では宮川さんならではの艶やかな音色が廃退的ですらある爛熟した叙情を香らせていましたし、第三楽章では小気味良く軽快なフットワークで豊かな音色による多彩な表情が紡がれる好演となりました。第三楽章でのオケも集中力の高い統制感のある演奏で、その機動力、突進力はアマオケとは思えない凄まじさがありました。

そう言えば、全く関係ありませんが、最近、リリースされたヤンセンのブリテンのヴァイオリン協奏曲が素晴らしいです。音楽雑誌などでどのように評価されるのかは分りませんが、ヴェンゲーロフやツィマーマンのような技巧的な冴えとは一味違う、より音楽性豊かな解釈が聴かれる面白い演奏で、個人的には同曲のベスト盤にしたいような出来映えです。閑話休題。

最後に、ショスタコーヴィチですが、2階席に金管バンダを配し、第一楽章後半では早々とデュナミークのピークに達しで容赦なく爆音を撒き散らす爆演となりました。この威勢の良さはアマオケならではと言えますが、やや響きのバランスをコントロールできていない印象は否めず、内声部などは金管の咆哮にかき消され、アンコがはみ出たタイ焼きのように決して収まりが良い演奏とは言い難いものでした。それにしても、本当に良く鳴るアマオケですが、この鳴りの良さは新田ユリさんの力量によるものかもしれません。第二楽章から第三楽章にかけては個々のオケメン(とりわけ木管)の技量や表現力が問われますが、やはりアマオケの演奏では集中力を維持するのは難しくウトウトしてしまいました。が、大きく崩れるようなところはなく、曲の難易度を考えればかなり健闘していたのではないかと思います。最後のコーダも鼻血ブーの大爆発!芸術は爆発だ!!

素人がこんなに上から目線で偉そうなことを書いていると「お前は何様のつもりだ」と叱られてしまいそうですが、色々なアマオケの演奏を聴き歩いていると自ずと判断基準のようなものが自分の中にできてきますので、その比較で物を書いています。昔、少し楽器をかじっていたていたことがあるので「言うは易く、弾くは難し」ということは身をもって分っているつもりですが、ご容赦を!!

詳しくは後ほど。

合唱団鯨2009年10月3日 演奏会/公演

合唱団鯨
【演題】第61回定期演奏会
    ヘンデル没後250年記念 
【演目】ヘンデル オラトリオ「エジプトのイスラエル人」
      <Sop>元村亜美、立川清子
      <Alt>栗林朋子
      <Ten>藤井雄介
      <Bar>駒田敏章、新見準平
【指揮】黒岩英臣
【合唱】合唱団鯨
【楽団】ジャパン・シンフォニア
【会場】東京芸術劇場
【開演】14時
【料金】2000円
【感想】
今日はアマチュア合唱団がヘンデルのオラトリオ「エジプトとイスラエル人」を採り上げるというので聴きに行くことにしました。周知のとおりヘンデルはオラトリオやオペラの分野で多くの傑作を残しましたが、その劇的な表現にかけてヘンデルに並ぶ作曲家はなく、古今の作曲家の中で突出した存在だと思います。バッハの音楽のような気難しさはなく、胸襟を開いた明るく開放的な曲想を基調としながら、ハイドンの一枚上手を行く着想の豊かさで、その瑞々しく粋で斬新な音楽は現代においても全く古臭さを感じさせない鮮度と香気を放ち聴き手を容赦なく誘惑する魅力に溢れています。そんな傑作の1つがオラトリオ「エジプトのイスラエル人」です。数年前からヘンデルのオラトリオやオペラが積極的に演奏会で採り上げられるようになり、日本でも殆どのヘンデルのオラトリオやオペラの音盤が入手できるようになりました。ヘンデルと言えばメサイアばかりが採り上げられる現状に辟易としていましたが、他のアマチュア合唱団もメサイア以外の傑作にも積極的に挑戦して欲しいと願って止みません。そのコンテクストで言えば、まだヘンデルのブロッケス受難曲なども実演に接したことがないので、どこかの合唱団で採り上げてくれないかしら..。

さて、なかなか感想を書くのが難しいのですが厚かましくも忌憚のない正直な感想を書くと、やや合唱&オーケストラともにフットワークが重めで(ガーディナー盤を愛聴しているので余計にそう感じるのかもしれませんが)、この曲が持つ劇的な効果を十分に活かし切れていない印象を拭い切れませんでした。(演奏効果よりも団員の最大幸福を優先せざるを得ないアマチュアの宿命とも言えますので仕方がありませんが)合唱は大編成でオーケストラもモダンをベースにした現代風のやや脂肪分の多い演奏になっていたので機動力や鋭敏さには欠けていた嫌いがあり、また、声楽アンサンブルの精度(アイザッツを含む)や発声にも改善すべき余地があったように感じられました。個人的な趣味を言えば、この曲では余分な脂肪分を削ぎ落として各声部の骨格をすっきりと浮き立たせて、リズムの活力を生かした躍動感のある溌剌した息吹を感じさせる演奏を期待したいです。また、この曲は声楽と器楽が有機的に呼応し絡み合いながらドラマチックに音楽を進行して行くところも魅力の1つですが、その意味で合唱とオケのコンビネーションに多少のスキマ風が吹き込むところもあったように感じられました。..などと、好き勝手に辛口の感想を書きましたが、大編成ならではの迫力のあるダイナミックな合唱を楽しむことができ、合唱を主体とする同曲の魅力を感じ取ることはできました。やはりヘンデルの声楽曲は難しいですな。なお、ソリスト陣は定評ある実力者が揃えられ、いずれも満足の行く好パフォーマンスであったと思います。

詳しい感想は後ほど。

【速報】日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 第三予選2009年9月27日 演奏会/公演

【速報】日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 第三予選
【速報】日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 第三予選
日本音楽コンクールの第三予選を聴きに来ています。今年も迅速な速報に努めてまいりますm(_ _)m 因みに、課題曲はブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番とサン=サーンスのワルツ形式のカプリス第6番です。

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いま富井ちえりさんと成田達輝さんの演奏が終わりました。トップの富井さんはかなり緊張していた様子で前半はややナーバスな演奏に感じられるところもありましたが後半になるにつれて徐々に持ち味を発揮してデリケートな演奏が聴けました。成田さんは表現意欲の旺盛な演奏で、選考会というよりリサイタルを聴いているようでした。多少の向こう傷も物ともせずに、伸び伸びと自分の音楽を表現している風で面白い演奏が聴けました。なお、審査員の東響コンマス高木和弘さんはズボンからシャツを出したカジュアルな格好です。ス・テ・キ!

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いま外園彩香さんと毛利文香さんの演奏が終わりました。外園さんは素直なアプローチで一音一音を丁寧に鳴らす好演でした。瑞々しい感性と暖かみのある音色が魅力で、かなり上手いです。毛利さんのことは知りませんでしたが、かなり若い(?)のではないかと想像しますが、ミスのない安定感と表現力のある演奏が聴けました。何者かしら?

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いま青木尚佳さんと横島礼理さんの演奏が終わりました。青木さんは凛とした高潔な演奏が聴けました。もともとテクニシャンでしたが、年々、着実に実力を付けて成長している印象で、彼女がまだ中学生だった一昨年と比べると各段に表現力が伸びたと思います。横島さんはやや表現が単調かなと思われるところはありましたが、どちらかというと内省的な演奏が聴けました。

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いま前田奈緒さんと高宮城凌さんの演奏が終わりました。前田さんは昨年の入選者だけあってテクニックと表現力のバランスが良く、自分の表現したいことを音にできている表現意図が明瞭な好演でした。高宮城さんのことは知りませんでしたが、これだけの逸材がどこに隠れていたのでしょうか。力強く明瞭闊達な演奏で、テクニックの厚みから生まれる安定感のある演奏が聴けました。

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いま柳田茄那子さんと尾池亜美さんの演奏が終わりました。柳田さんはややテクニカルなパートでミスが出ていましたが構成力のある演奏が聴けました。尾池さんは情熱的な演奏で、迷いなく音楽をダイナミックにドライブする熱演が聴けました。

いま審査結果待ちです。6人又は無理をして5人までは絞れますが、それ以上絞り込むのは無理ですな..。審査結果よりもその理由(根拠)を聞いてみたいものですが、審査結果に客観的で合理的な理由(根拠)なんて付けられるのかしら?

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第三予選通過者(以下、演奏順)

成田達輝さん
青木尚佳さん
柳田茄那子さん
尾池亜美さん

本選進出は4名までと決められているのでしょうか?外園さんや前田さんが入っていないのは納得がいきませんが..。若い才能の芽を摘むようなコンクールなら要りません。

YAMATO弦楽四重奏団2009年9月26日 演奏会/公演

YAMATO弦楽四重奏団
YAMATO弦楽四重奏団
【演題】幸松肇が贈る弦楽四重奏の饗宴 シリーズⅢ
【演目】ハイドン 弦楽四重奏曲ニ短調「五度」
    メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第6番ヘ短調「ファニーのためのレクイエム」
    ピアソラ(幸松肇編曲) 弦楽四重奏のためのピアソラ
                 第1曲:ブエノスアイレスの秋
                 第2曲:天使のミロンガ
                 第3曲:ミケランジェロ’70
                 第4曲:オブリヴィオン(忘却)
                 第5曲:エスクロア(鮫)
    トーマス=ミフネ ハイドン風の弦の跳躍
    ハイドリヒ メンデルスゾーンの結婚行進曲の主題による変奏曲
【出演】YAMATO弦楽四重奏団
      <1stVn>石田泰尚
      <2ndVn>執行恒宏
      <Va>榎戸崇浩
      <Vc>阪田宏彰
【会場】横浜みなとみらいホール
【開演】18時
【料金】3800円
【感想】
石田泰尚さんが率いるYAMATO弦楽四重奏団ですが、石田イズムとも言うべき燃焼度の高い規格外の演奏が聴けるかもしれないと思い足を運ぶことにしました。とても演目に趣向が凝らされており、前半に今年記念年のハイドンとメンデルスゾーンの傑作が演奏され、後半にピアソラの編曲版を挟んでハイドンとメンデルスゾーンの作品のパロディが演奏されました。ハイドンは手堅い好演ではありましたが、立ち上がりはやや優等生的でいまひとつ乗り切れていない印象を受けましたが、メンデルスゾーン以降は尻上がりにエンジンが掛かってきた印象で、とりわけメンデルスゾーンでは内声部も充実したシンフォニックな演奏を楽しめました。石田さんを中心にした音楽作りが特徴で、石田さんがソリスティックな主張のある演奏でアンサンブルをグイグイと牽引して行く明朗闊達な演奏を楽しめました。曖昧さや誤魔化しのないテクニックの冴えと音楽に魂を吹き込むパッションを併せ持つ石田さんの天才的な上手さには舌を巻きます。注目していた幸松さんによるピアソラの編曲版は原曲が持つ濃厚さをよりクラシカルに洗練させた(しかし哀愁や寂寥感はそのままに)印象のものですが、とりわけミケランジェロは格好良く高揚感を伴う演奏、オブリヴィオンは寂寥感の漂う心に染みる演奏で印象的でした。近くこの編曲版の楽譜が出版されるそうなので、クァルテットをやっている人はレパートリーに加えられてみてはいかがでしょうか。なお、全く関係がありませんが、下の写真は横浜美術館の庭で野外結婚式をあげた新郎、新婦ですが、少し距離を置いて向かい合う2人をパチリ。お幸せに。

現在、感想を執筆中。

上原由紀音ピアノリサイタル2009年9月22日 演奏会/公演

上原由紀音ピアノリサイタル
【演題】上原由紀音ピアノリサイタル
    全4回シリーズ「アルベニスを弾く」Vol.3
【演目】アルベニス 旅の思い出より
            -アランブラ宮殿にて
            -ティエラの門
            -入り江のざわめき
            -浜辺にて
          スペインの歌より
            -コルドバ
          組曲「イベリア」より
            -へレス
            -エリターニャ
          6つのスペイン舞曲より
            -スペイン舞曲第2番
          夢より
            -愛の歌
          マジョルカ
          スペイン組曲より
            -セビーリャ
          性格的小品集より
            -第12番「朱色の塔」
          ナバーラ          
【出演】<Pf>上原由紀音
【会場】カワイ表参道 コンサートサロン「パウゼ」
【開演】19時
【料金】3500円
【感想】
日本を代表するアルベニス弾き(和製版ラローチャ!)として押しも押されもしないピアニストの上原由紀音さんがアルベニスののシリーズ公演を開催されているので聴きに行くことにしました。石田衣良さんの小説「眠れぬ真珠」の中でラローチャが弾くモンポウのピアノ曲が採り上げられたこともありスペインの作曲家のピアノ曲が静かなブームになっていますが、その影響も手伝ってか今日は臨時席まで用意される盛会となりました。最近は村上春樹さんの小説「1Q84」の中でヤナーチェクのシンフォニエッタが採り上げられて話題になるなど、一般の人にとってはマイナーな作曲家や作品も省みられるようになってきたのは歓迎すべき傾向です。

http://members2.jcom.home.ne.jp/yukine/

さて、上原さんの演奏を聴くのは初めてでしたが、多少のバタツキ感があったところはありましたが、アルベニスの独特で複雑なリズムや和声を上手く料理しながら開放感のある明るい調べで明瞭闊達に弾き切る好演となりました。

現在、感想を執筆中。

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