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中小企業の希望ある社会へ

2009年10月28日0時4分

 失業率の高止まり、過去最低の有効求人倍率、ボーナスカット、公共事業削減など、景気の二番底がやってきそうな経済状況である。こうした折、亀井静香金融相のモラトリアム提案は、思いもよらなかっただけに、驚きとともに期待と不安で迎えられている。

 政治家は、選挙のたびにお題目のように中小企業対策の充実を訴えるが、実際は掛け声だけで終わる。それに比べるとズバリ中小企業の核心問題に切り込もうとする姿勢は評価できる。

 ただ、実施に当たって留意して欲しい点がある。対外的に保護政策と受け取られないよう配慮すべきである。第2次オイルショックの時、産業構造審議会と中小企業審議会の合同会議が開かれている最中、在日米大使館から、また中小企業の保護対策を行い、国際競争力を強化するのかとの抗議の電話があった。そのため中小企業対策の充実は見送りとなったことがあったからだ。

 また、金融が行き渡るように配慮するだけでなく、どのように中小企業の仕事量を増やすかを考えて欲しい。従来型の景気対策でなくても、知恵を絞れば仕事を増やし雇用などを維持する策はあるのではないか。

 さらに、複雑多様化してきた中小企業対策を、この際、利用しやすい実効性のある体系へ簡素化してはどうだろうか。その際には、中小企業は優れた企業から、そうでない企業まである多種多様な存在であることを忘れてはならないだろう。

 中小企業経営者のほとんどは、世話になったり、支援してもらったりした覚えはないという感覚を持っている。今回の思い切った政策を、中小企業が希望の持てる社会へのきっかけにしてもらいたい。(共生)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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