埼玉県警に詐欺容疑で逮捕された東京都豊島区の女(34)と接点のある男性が相次いで不審死していた事件で、女は独身男性に次々と結婚話を持ちかけ、多額の現金を受け取っていたことが捜査関係者への取材で分かった。1人で数千万円を女に渡していた男性もいたという。埼玉県警などは結婚詐欺と不審死との関連についても捜査している。【浅野翔太郎、町田結子、飼手勇介】
埼玉県警は既に、8月6日に同県富士見市の駐車場内に止められたレンタカー内で死亡していた東京都千代田区の会社員、大出嘉之さん(当時41歳)について、殺人の可能性もあるとみて捜査を進めている。捜査関係者らによると、大出さんはインターネットを通じて知り合った女と結婚する計画を進めていたが、女から「500万円を貸してほしい」と持ち掛けられ、数百万円を渡したという。
女は今年9月下旬、2件の詐欺容疑で埼玉県警に逮捕された。起訴状は、ネットで知り合った長野県と静岡県の男性2人に結婚を約束し「大学の授業料や寄付金が必要」などとウソをつき、計約320万円をだまし取ったとしている。さらに今月に入ってからも、長野県と埼玉県の男性からも同様に計約210万円をだましとろうとしたとして、詐欺未遂容疑で再逮捕された。
女は03年3月、ネットオークションにパソコンを売ると書き込み、東京都内の男性から10万円をだまし取ったなどとして、警視庁に詐欺容疑で逮捕され、懲役2年6月、執行猶予5年の有罪が確定していた。
捜査関係者によると、女はインターネットなどで知り合った独身男性たちに次々と結婚を約束し、「学費」「生活費」などを口実に多額の金を無心していたとされる。
女は北海道別海町出身。知人によると、小さいころはしっかりした子で、ケーキやクッキーなどのお菓子作りやピアノが得意だった。地元高校を卒業後に上京。その後は地元で顔を見ることはほとんどなかった。父親は3年ほど前、羅臼町の国道わきの車内で死亡しているのが見つかったという。
女は06年10月から今年8月まで東京都板橋区内のマンションに入居。関係者によると、部屋は2LDKで家賃は月13万~14万円。仕事はピアノの家庭教師をしていると名乗っていた。
ある男性入居者は今年2月のバレンタインデー前にクッキーやマドレーヌをプレゼントされた。一緒に入っていた名刺に「フードコーディネーター」と書かれ、女は「人の家に行ってお菓子作りを教えている」と話していたという。名刺に載っていたホームページを見ると、自分で作った和食などの写真やコメントを毎日のように更新していた。
女は今年8月ごろ、JR池袋駅に近い14階建てマンションの最上階にある2LDKの部屋に転居。管理会社によると、家賃は板橋のマンションより8万~9万円高い月21万9000円。捜査関係者によると、女は外車を所有しており、調理師専門学校にも在籍中という。近所の女性は「いつも黒のワンピース姿で、おとなしい感じの人」と話した。
埼玉県富士見市で死亡しているのが見つかった大出嘉之さんは、戦闘機や戦車などの模型作りを趣味にしていた。
千葉県野田市の安藤建三さんは全焼した自宅から遺体で見つかった。近所の無職女性(80)は安藤さん方に出入りしていた女を見かけたことがあるといい、「服装は普通で、ヘルパー風ではなかった。娘さんかな、と思って見ていた」と話した。
毎日新聞 2009年10月28日 2時35分(最終更新 10月28日 2時35分)