その瞬間、暗い海峡を火柱が照らし、爆発音が周囲を揺らした。27日夜、北九州市沖の関門海峡で起きた護衛艦とコンテナ船の衝突事故。国内有数の「海の難所」で何が起きたのか。
防衛省や海上保安庁などによると、護衛艦「くらま」の艦首とコンテナ船「カリナスター」の船首右側がぶつかったとみられる。コンテナ船の船長(44)は、事故直後に朝日新聞の取材に応じ、「前の船を追い越そうとしていた」などと話しており、コンテナ船が護衛艦の針路にはみ出す形になって衝突を引き起こした可能性が出てきた。
コンテナ船は韓国・釜山から大阪に向かっており、事故で船首右側が大きく損傷した。船長の説明によると、コンテナ船は前方からの護衛艦には気づいていて、早めにかじを切ったが避けられなかったという。
海上保安庁によると、海峡での船の航行は海上衝突予防法により、互いに右側を通ることがルール。前方に相手船を発見した場合は、互いに右へ回避するのが原則だ。このルールを互いに守っていれば、船首右側が相手の船とぶつかることは考えられない。
コンテナ船がどのようにして前の船を追い越そうとしたかははっきりしないが、船長の証言や双方の船の衝突部位などから、海保関係者は「コンテナ船がかじを左に切って追い越そうとして左側に膨らみ、左前方から来た護衛艦の針路に入った可能性も考えられる」と話す。
衝突事故があった関門橋付近は関門海峡のなかでも幅が約600メートルと狭く、大型船同士がすれ違うには危険が伴う。特に、北九州市側からせり出す部分があり、西から東に向かうコンテナ船からは視界が悪く、向かってくる船が直前まで視認できないケースがあるという。