「K-1ワールドMAX」(26日、横浜アリーナ)
魔裟斗(30)の選択は、世界最強の男だった。決勝戦で魔裟斗の“本命”だったアンディ・サワー(26)を圧倒的な強さで下し、初出場初優勝の快挙を達成したジョルジオ・ペトロシアン(23)を、Dynamite!!(12月31日・さいたまSA)での引退試合の相手に指名。マット界を革新し続けてきたカリスマは、最後の最後まで挑戦する姿勢を貫くことを選んだ。
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ペトロシアン優勝を実況席で見届けた魔裟斗は「決まりでしょう、ペトロシアンで」と言い切るとリングイン。笑顔で若き覇者に握手を求め「大みそか、空いてるかな?」と“公開交渉”だ。
ペトロシアンが「今、アポイントを取りました」と答えると、魔裟斗は「大みそか、日本で待ってるよ!」と破顔一笑し、もう1度しっかりと握手。自ら“契約”を取り付け、09年世界王者との引退試合が決まった。
本命は過去2戦2敗のサワーだった。この日、大会前の会見で魔裟斗は「負けたとは思っていない。(トーナメントの)ダメージがあったので、ワンマッチなら」と強調。「サワーをイメージしてずっと練習している。サワーしか考えていない」と明かした。その考えを力で変えたのがアルメニア出身の若きイタリア人、“ザ・ドクター”の異名をとる新鋭ペトロシアンだった。
準決勝では山本優弥をパンチで粉砕し、決勝では05年と07年に世界王座についたサワーをまったく寄せつけず。2回にパンチ連打からのヒザでダウンを奪うとともに右目下を切り裂いて大流血に追い込み、圧倒的な判定勝ちで頂点に立った。思わず「強いっすね〜」とつぶやいた魔裟斗は、顔に傷一つないペトロシアンに魅了されていた。
魔裟斗は常にイバラの道を切り開いてきた。所属団体から独立して練習場所にも事欠く中から出発し、MAXというほかに比類なきジャンルを確立。日本人初のK-1世界王者となった。
その挑戦的な姿勢は、引退試合でも変わらなかった。過去の清算より、現在の最強-。魔裟斗にしてみれば、当然の選択だったのかもしれない。