きょうのコラム「時鐘」 2009年10月27日

 先日、オーケストラ・アンサンブル金沢の公演で指揮をとったのは、明治の金沢が生んだ国文学者・藤岡作太郎のひ孫、藤岡幸夫氏だった

作太郎には2人の息子がいた。日本の物理学の基盤を築いた藤岡由夫氏と、城郭研究の創設者とされる藤岡通夫氏である。由夫氏の子がレーザー工学の権威・藤岡知夫氏、その子が指揮者の幸夫氏だ

同じ分野で名を残す家系はあるが、4代にわたり多彩な別分野で超一流になるケースはまれだ。理系文系の色分けも無意味になる藤岡家の血筋にはDNAの神髄をみるようだ

国会論戦がスタートした。4代目の世襲政治家、鳩山首相が「政治の変革と大掃除を」と力説したが、小泉・安倍・福田・麻生と続いた「世襲内閣」延長の側面は否定しようがない。政治家の家系は単調で多様性はあまり期待できない。「地盤、看板、カバン」をそっくり受け継ぐのだから無理もないか

鳩山首相も先代の資産があって今があるのは、政治資金問題で十分わかった。変革には世襲に頼る政治風土の掃除が必要だろう。ただし、この掃除は有権者自身の変革がないとできない仕事だ。