『ポケットの中の宇宙』
『ポケットの中の宇宙』 アニリール・セルカン 中公新書ラクレ
新書 2009
091026読了
【概要】
多様な経歴を持ち、今は日本に住むトルコ人アニリール・セルカンの自伝とエッセー集。
【雑感】
中公新書ラクレは、読みやすいのに良質な内容でさすがやなー。
一つの出版社がムダにレーベルをいっぱい作るのは疎ましいけど、中公は、中公新書本体もラクレも良質で、内容のカタさがしっかり差別化されててすばらしい。
とまぁ、こないだ小学館101新書に粟食わされたからこんなことを書いてしまった。
内容について。
著者のセルカンという人の自伝とエッセーみたいなんが詰めあわされたような本やけど、この人、優秀すぎる。
この世にはこんな人間がいるんやなーと思わされた。
これまで、たとえば数学の天才とか、専門特化のすごい人はいろいろ本でも見たけど、この人は、万能の天才。
スキーをやってはオリンピックに出るレベル。世界大会ではトルコ初の金メダルを取る。
建築学をやっては、イリノイ工科大学からバウハウス、東大と進んで研究を深める。
さらに、NASAに席を持って、宇宙飛行士候補になる。
超弦理論に興味を持っては、十一次元空間の論文を書く。
恐ろしい人や。
大天才。
さらに、語学も専門家らしい。
こんな、何でもできる人間がいるんやなー。
その上、こんなにとんでもないのに、ぜんぜんイヤミのない文章でその事実を書く。
なんか、当人からしたらただ普通に生きてるだけなんやろーけど、その姿を見てるだけでこっちが恥ずかしくなる感じ。
この感覚は、すごい優秀で、すごい努力してて、それを平然とやってのける、当然ハナにかけることもない、そんな人を見たときに沸き起こる。 だから、滅多にない感覚やねんけど。
この感覚を得られただけでも、すんごい刺激になってよかったんやけど、この人の考えもかなり深かった。
例のごとく、箇条書きのカタチで挙げていこう。
・「人間すら「作っていく」時代は、技術的にはすでに到来しています」
携帯電話を拡張させて脳と直結させたり、遺伝子レベルの治療をしたりする時代が来る、という文脈での一文。
この表現は、ドキっとするけど的確な印象。
・(20世紀的な)戦争は、起こすのがとても難しい
戦争については、どうやったら起こさずに済むか、っていう点から始まって、起こりえるか、起こりえないか、っていう観点から語られることが多いけど、「そもそももはや起こすのが難しい」として、戦争を起こすことの困難が書かれてるのは、新鮮やった。
実際、今、世界戦争は起こりそうになくて、それはもうひとえに、いろんな要因がからんだ「膠着状態」に由来すると思うけど、こういう膠着状態を作り上げた人間はすげーなと僕は思う。 それで実際、戦争しそうにないんやからな。
この後、もし戦争が起こるとしたら、核戦争でジ・エンドか、相手の国の銀行預金などを記録してるサーバを攻撃しあう情報戦になるかも、っていう予想は、典型的やけど、やからこそ、やっぱそうかーと思わせてくれる。
次はちょっと長めの抜粋。
/=====
…温暖化は…「温暖化している」という見解と「温暖化していない」という見解が出されているに過ぎないのです。
…僕は、…「温暖化している」という見解のほうを、ひとまず支持したいのです。
…温暖化に対応する研究は、人類に役立つ多くの技術を生み出すはずですから。
=====/
この人の考え方では、これに一番感銘を受けた。
僕は、「エコエコ言うてるヤツはもっとホンマにエコか考えろ」とか、「エコを勝手にやるんはまだしも人にそれを押し付けんなよ」とか、そういうコトばっかり考えてた。
けど、この人は、「温暖化している」として、それに対策することで、多く技術が生まれ得ることが望ましい、っていう立場をとってる。
この姿勢は、まさに技術者、研究者らしい。
ホンマに温暖化してるんかい、対策するにしてもマジに有効なんかい、とかいうようなコトだけを考えるんじゃなく、それを追求する過程に有益なものがあるやろーから、とりあえず「温暖化している」としよう、っていう発想は、広い視野と余裕がないと出ないんちゃうか、と僕は思う。 その意味で、このセルカンという人はすごい。
こういう物事の捉え方/考え方をできるようになりたい。
とにかく、著者の筆致が僕の好みにあってたから、スラーとアタマに入ってきた。
内容自体も、かなりためになったと思える。
これはエエ本やったなー。
新書 2009
091026読了
【概要】
多様な経歴を持ち、今は日本に住むトルコ人アニリール・セルカンの自伝とエッセー集。
【雑感】
中公新書ラクレは、読みやすいのに良質な内容でさすがやなー。
一つの出版社がムダにレーベルをいっぱい作るのは疎ましいけど、中公は、中公新書本体もラクレも良質で、内容のカタさがしっかり差別化されててすばらしい。
とまぁ、こないだ小学館101新書に粟食わされたからこんなことを書いてしまった。
内容について。
著者のセルカンという人の自伝とエッセーみたいなんが詰めあわされたような本やけど、この人、優秀すぎる。
この世にはこんな人間がいるんやなーと思わされた。
これまで、たとえば数学の天才とか、専門特化のすごい人はいろいろ本でも見たけど、この人は、万能の天才。
スキーをやってはオリンピックに出るレベル。世界大会ではトルコ初の金メダルを取る。
建築学をやっては、イリノイ工科大学からバウハウス、東大と進んで研究を深める。
さらに、NASAに席を持って、宇宙飛行士候補になる。
超弦理論に興味を持っては、十一次元空間の論文を書く。
恐ろしい人や。
大天才。
さらに、語学も専門家らしい。
こんな、何でもできる人間がいるんやなー。
その上、こんなにとんでもないのに、ぜんぜんイヤミのない文章でその事実を書く。
なんか、当人からしたらただ普通に生きてるだけなんやろーけど、その姿を見てるだけでこっちが恥ずかしくなる感じ。
この感覚は、すごい優秀で、すごい努力してて、それを平然とやってのける、当然ハナにかけることもない、そんな人を見たときに沸き起こる。 だから、滅多にない感覚やねんけど。
この感覚を得られただけでも、すんごい刺激になってよかったんやけど、この人の考えもかなり深かった。
例のごとく、箇条書きのカタチで挙げていこう。
・「人間すら「作っていく」時代は、技術的にはすでに到来しています」
携帯電話を拡張させて脳と直結させたり、遺伝子レベルの治療をしたりする時代が来る、という文脈での一文。
この表現は、ドキっとするけど的確な印象。
・(20世紀的な)戦争は、起こすのがとても難しい
戦争については、どうやったら起こさずに済むか、っていう点から始まって、起こりえるか、起こりえないか、っていう観点から語られることが多いけど、「そもそももはや起こすのが難しい」として、戦争を起こすことの困難が書かれてるのは、新鮮やった。
実際、今、世界戦争は起こりそうになくて、それはもうひとえに、いろんな要因がからんだ「膠着状態」に由来すると思うけど、こういう膠着状態を作り上げた人間はすげーなと僕は思う。 それで実際、戦争しそうにないんやからな。
この後、もし戦争が起こるとしたら、核戦争でジ・エンドか、相手の国の銀行預金などを記録してるサーバを攻撃しあう情報戦になるかも、っていう予想は、典型的やけど、やからこそ、やっぱそうかーと思わせてくれる。
次はちょっと長めの抜粋。
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…温暖化は…「温暖化している」という見解と「温暖化していない」という見解が出されているに過ぎないのです。
…僕は、…「温暖化している」という見解のほうを、ひとまず支持したいのです。
…温暖化に対応する研究は、人類に役立つ多くの技術を生み出すはずですから。
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この人の考え方では、これに一番感銘を受けた。
僕は、「エコエコ言うてるヤツはもっとホンマにエコか考えろ」とか、「エコを勝手にやるんはまだしも人にそれを押し付けんなよ」とか、そういうコトばっかり考えてた。
けど、この人は、「温暖化している」として、それに対策することで、多く技術が生まれ得ることが望ましい、っていう立場をとってる。
この姿勢は、まさに技術者、研究者らしい。
ホンマに温暖化してるんかい、対策するにしてもマジに有効なんかい、とかいうようなコトだけを考えるんじゃなく、それを追求する過程に有益なものがあるやろーから、とりあえず「温暖化している」としよう、っていう発想は、広い視野と余裕がないと出ないんちゃうか、と僕は思う。 その意味で、このセルカンという人はすごい。
こういう物事の捉え方/考え方をできるようになりたい。
とにかく、著者の筆致が僕の好みにあってたから、スラーとアタマに入ってきた。
内容自体も、かなりためになったと思える。
これはエエ本やったなー。