鳩山政権が打ち出した政策や税制見直しで、私たちの暮らしぶりは大きく変わりそうだ。中学生以下の子供がいる世帯は2010年度から目玉政策の「子ども手当」をもらえる一方、すべての世帯で所得税の扶養控除などがなくなる方向となっている。家族構成によっては「増税」が家計を直撃するケースも出てくる。
子ども手当は、中学卒業までの子供(約1800万人)を対象に1人当たり月2万6000円を支給するというもの。年間だと31万2000円が家計に入ってくることになる。導入初年度の10年度は半額の月1万3000円(年間15万6000円)を支給する。
高校生がいる世帯は「公立高校の授業料実質無償化」の恩恵を受けることになる。国公立高校の生徒がいる世帯には授業料に相当する年11万8800円以内、私立高校でも同等の額(低年収世帯は23万7600円以内)が助成される。
中学生以下には子ども手当、高校生には授業料の実質無償化などが用意されることになる。
一方、政府は10年度中に所得税と住民税に対する「扶養控除」を廃止する方向で検討している。
所得税の扶養控除は、扶養親族1人につき38万円を課税対象額から差し引き、住民税では33万円を差し引くが、これをなくしてしまう。所得税の税率は5〜40%だから、38万円の控除が廃止されると1万9000〜15万2000円の増税に。住民税の税率は一律10%だから、33万円の控除がなくなると3万3000円の増税となる。
これは扶養親族1人当たりの数字で、2人になると、所得税で3万8000〜30万4000円、住民税で6万6000円の増税となる。
当初は、子ども手当の満額支給が始まる11年4月から廃止する方針だったが、扶養控除の廃止は子ども手当の財源確保のため11年1月にも前倒しで実施される見通し。
「配偶者控除については専業主婦世帯の猛反発も予想されるため、先送りされる可能性が高い」(永田町筋)という。
両控除が廃止された場合、年収700万円で子供2人の世帯(うち1人が16〜23歳未満で特定扶養控除に該当)のケースなら年8万5000円の所得税増税になる。住民税は年6万6000円の増税となり、両方を合わせて15万1000円の負担増になる。
さらに、小学6年生までを対象にした児童手当も廃止の方向で、子供1人当たり年6万〜12万円の手当がなくなり、子ども手当の恩恵もグーンと減ってしまう。
これらが実施された場合、もっとも困るのが23〜69歳の扶養親族がいる世帯だ。所得税率が20%(年間所得330万円超〜695万円以下)の世帯では、所得税と住民税の扶養控除廃止分だけで約11万円の増税となる計算だ。
ほかの生活関連では、マイカー絡みの税金が安くなりそう。道路特定財源の確保のために上乗せされていた自動車関係の暫定税率を10年4月に廃止する方針だ。
「揮発油税(ガソリン税)」がレギュラー1リットル当たり25.1円値下げされるほか、自動車購入時や車検の際にかかる「重量税」は0.5トン当たり6300円から2500円に、「取得税」の税率は取得価格の5%から3%に下がる。
高速道路の料金も地方限定で無料化される。
一方、麻生政権で導入されたエコカー補助金は今年度末をもって打ち切られる。
獨協大の森永卓郎教授は、「15歳までの子どもを抱えている世帯や低所得者、地方の人にはメリットが大きいが、扶養控除や配偶者控除が廃止されれば、中高年サラリーマン世帯の多くは負担増となる。子供が高校や大学に入ってからの方が費用がかかるのは明らかで、子育て支援もバランスを考え直すべきだ」と指摘している。