仰天人事とはこのことか。日本郵政の新社長に元大蔵事務次官、斎藤次郎の就任が内定した。
政治的な詰め腹を切らされることになる社長、西川善文の後釜人事は難航が予想された。誰もなり手が見当たらないからだ。
そもそも、オリックスへの「かんぽの宿、一括譲渡問題」に端を発した日本郵政問題。その問題はいつしか社長、つまり西川の交代こそ日本郵政の根本的な見直しに必要不可欠なこととされていった。
西川後継人事は、ババ抜きのババ
こうした経緯から日本郵政そのものが財界にとっては“鬼門”となっていた。
日本郵政=リスク。こうした思いから、東京・丸の内の一等地にある東京中央郵便局跡地の開発などを当て込んで三井不動産、三菱地所などに出向者を出していた企業は、10月1日をもって一斉に出向者を自社に戻したほどだった。
西川の後釜は、まさにババ抜きのババにほかならなかった。
金融・郵政改革担当大臣の亀井静香は就任早々、中小企業の金融機関への支払い猶予を口にするなど、亀井節を炸裂させ、内閣で1人“暴走列車”と化していた。
その亀井をしても、「ポスト西川」は頭を痛める問題だったようだ。財界のパイプを持たない亀井が相談を持ちかけたのが、読売新聞社会長の渡邉恒雄だった。
「あんたが国士なのをよく知っている」
斎藤の就任が内定した前夜にも亀井と渡邉は都内の料亭で会い、そこから亀井が電話で斎藤に最終要請をしたようである。
電話口で亀井は、
「俺はあんたが国士なのをよく知ってる。国のために命を出してくれよ」
亀井は涙ぐみさえして、斎藤に受諾要請をした。亀井ならではの芸当ということだろうか。
渡邉の小沢(一郎。民主党幹事長)嫌いは有名な話だ。その小沢と密なる交わりを持つ斎藤。
小沢というファクターを通じて異なる様相を見せる2人が政界再編を仕掛けたのが、福田内閣時代の自民党と民主党との連立構想、いわゆる大連立構想だった。
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