企業規模や取消理由まで黒塗りされた開示文書
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厚生労働省は3月31日、企業から採用内定を取り消された学生が404社1845人(23日現在)にのぼると発表した。だが肝心の企業名は、見せしめ的に2社が公表されたにすぎず、99.5%は非公表。そこまでして企業を守る理由は何なのか。情報公開請求を行い、すべての企業名を明らかにするよう迫ると、真っ黒塗りの文書が出てきた。企業名どころか、取消理由や企業規模までが隠匿されている。「生活者よりも企業の利益を優先する」という、この国の本質が見えてくる。
【Digest】
◇ほぼ100%非開示
◇172社の企業名を開示せよ
◇企業名ばかりか「企業規模」「取消理由」まで不開示
◇「法人等の権利を害するおそれがある」
◇学生も知ることができない
◇ほぼ100%非開示 今回、全体の0.5%しか公表しなかったことで、
内定取り消し企業名「事実上公表なし」で報じたとおりの結果となった。どんなに取り消しても開示されないことが分かった企業は安心感を持ち、ますます取り消しを加速させている。
実際、3月23日時点で404事業所1845人となり、昨年12月19日時点の172事業所769人から2倍超と、大幅に増えている。
この官民一体となった“内定取り消し運動”は、既存の正社員、特に人件費の高い中高年正社員を守るために行われており、若い人の雇用と収入とキャリアと未来を奪い、世代間格差を拡大させる悪質なものだ。
厚労省によれば、「自分が就職を希望する企業が内定取り消しをしたことがあるかどうか知りたい」という切迫した相談が学生からあった場合でも対応できないという。文部科学省や、その他の行政機関でも対応は同じであり、学生は、就職活動で必要とする基本的な情報を行政から得られない。
税金で、そこまでして企業を守り学生を虐げる理由は何なのか。有権者、生活者の立場で考えれば、調査結果をWEBに公表すればそれで終わりのはずだが、その情報を隠し持ち、役人が開示するか否かの裁量権を持つ必要など全くない。
内定取り消しが社会問題となったため、1月7日、悪質な場合に限り企業名を公開できる(=つまり普通に取り消すだけならば公開しない)とした省令案が労働政策審議会(会長は明治大学法科大学院教授の菅野和夫氏)の第56回労働政策審議会職業安定分科会で承認された。この改定で企業名公表制度が施行されたのが1月19日だ。だが「公表制度」とは名ばかりで、実は99.5%を非公開にする制度であることは、制定当初から明らかであった。
◇172社の企業名を開示せよ
そこで、2008年12月19日までに採用内定を取り消した172社のリスト等を開示するよう、今年1月16日付で情報公開請求をかけた。
具体的に請求したのは、下記の3項目である。
①12月19日までに採用内定を取り消した172社の企業名
②省令改定案を諮問した審議会議事録の公開
③採用内定取り消しをおこなった企業名を不開示とする根拠
1月下旬、厚労省職業安定局総務課から、請求の補正について電話が1度あった.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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請求で作成した「行政文書開示請求書」
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行政文書開示決定通知書 |
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企業がハローワークに届け出る「内定取り消し通知書」のフォーマット
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