07年12月15日 土曜日 府民として一石を投ず
少し遅めのブログアップにはなるが、橋下弁護士が大阪府知事に立候補するということで、このことについて、大阪府民として一言書いておかねばなるまい。(全然NOGと関係ないですが。)
今大阪は非常に危機的状況で、ある分析によると、2020年には夕張市のように財政破綻すると言われている。僕は政治にはあまり詳しくないが、財政危機の原因は、おそらく公営インフラ・第三セクターの放漫経営や同和対策事業への過剰投資にあるのではないか、と思っている。橋下弁護士が標榜する「子どもが笑うまちづくり」もいいけれど、今の大阪府にはこうした問題を整理し、徹底的に対応することが絶対的に必要で、知事としては、これを断行する能力が問われざるを得ないのではないだろうか。そのような知事に求められる資質というのは、世間の声を拾いつつも、これに流されずに、長期的な視点で適切な判断を行い、かつ、内的にも外的にも人を動かすことができる能力が最低条件として必要なのではないだろうか。これを最低条件とするのであるから、非常に贅沢な注文なのであるが、今の大阪は内憂外患(危機意識のない役人と行政を食い物にする反社会的勢力)の上に満身創痍(巨額の負債)であるから、これを再建するためには、やはり贅沢な注文を聞いてもらわざるを得ない。
では、橋下弁護士にそのような資質があるかというと、僕としては、否定的に考えざるを得ない。
僕は職業柄、橋下弁護士の言動から、橋下弁護士が弁護士としておそらくどのような事件を取り扱っていて、どのような処理をしているか、何となく想像ができる。
もちろん、橋下弁護士も弁護士である以上、訴訟で徹底的に争って勝ったこともあるかもしれないし、示談で円満な解決を導いたこともあるのではないかと思う。
ただ橋下弁護士の言動から見とれる傾向として (1)自分の言動が自分以外の者にどういう影響を及ぼすか、それによってまた将来の自分の行動にどういう影響を及ぼすか、という洞察力に欠けるところがある また、(2)自己の思想・言動の論理一貫性より、刹那的な雰囲気や感情を重視してしまう という部分があるように思う。
例えば、橋下弁護士は「日本人による中国での集団買春はODA」という発言をして叩かれたことがあるが、これは世間にアンチ中国の雰囲気が出だした頃の発言で、その影響を受けたものであると思うし(2)、本人は発言当時、これによって、世間の猛バッシングを受けサンジャポを降板するハメになるとは思っていなかっただろう(1)。しかし、落ち着いて考えれば、そのような発言はテレビでなすべきではないことは誰でも判るはずである。
また、現在係属中の光市母子殺害事件弁護団に対する懲戒請求扇動事件は、テレビの僅かな報道だけを根拠に弁護団に対する懲戒を扇動した事件であるが、光市事件の訴訟関係資料を検討しなければ、弁護方針の当否は判断できず、場合によっては自分の扇動が失当なものになる可能性があることは弁護士なら誰でも判る。にもかかわらず、あのような発言をしてしまうことは軽率のそしりを免れないし、提訴されるに至ったことはぬかりがあったがゆえである(1)。この事件で橋下弁護士がマスコミと国民の怒りの雰囲気や、被害者保護の気運の高まりに背中を押されてしまった可能性も高い(2)。
このような橋下弁護士の傾向から考えて、今までに、依頼者側であれ相手方であれ、動こうとしない組織を動かさなければならないような仕事、つまり、一貫した方針を立てて、関係者の利害関係や心理の周到な先読みのもとアクションすることを要求されるような事件の処理はしていないのではないかと推測する。また、マスコミ対策などの先手を打ちつつ、トラブルが拡大しないようにしながら処理するような事件をしていないのではないかと思う。(間違ってたらごめんなさい…。橋下弁護士がいかに公益活動などをしていないとはいえ、あれだけテレビに出て、タレント報酬を事務所に回さずに事務所経営が成り立っているとしたら、破産申立や交通事故など事務局の労力が比重を占めうる事件が少なくないのではないかと思うが…どうだろうか。)
橋下弁護士にはどうにも政治家に必要な資質が備わっているとは思えないのである。
僕としては、このような橋下弁護士に今の大阪府政を任せることは、自殺行為に近いのではないかと思う。彼が大阪の財政難や、問題含みの役所を向こうに回して、この大問題を解決できるとはどうしても思えない。大阪弁護士会では、多くの人が、弁護士は誰も橋下弁護士には票を投じないのではないかといっている。
冒頭の方でも書いた同和問題への取り組みについても、暴力団への対応が必須だが、橋下弁護士の税の申告漏れの時の弁解(「暴力団情報を収集するために、新地で領収証の出ない金を使った」)を聞いている限りは、橋下弁護士が暴力団対策について適切な知見を持っているとは到底思えない。むしろ、彼が知事になったら、かえって暴力団は活動しやすくなるのではないかとすら思う。
5年前に橋下弁護士が勤務弁護士を雇ったときに、1週間でやめてしまったと言うことをテレビでたかじんや紳助が話しているが、この話は(詳細は控えるが)大阪の弁護士の間では伝説化しており、当時の勤務弁護士は大いに同情されているところだ。
本当に府政の将来を不安に思うから、橋下弁護士が知事に当選してしまいそうな状況においては、これだけは書いておこうと思った。