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笑気ガスがオゾン層破壊 米誌に研究結果
2009.8.29 10:29
28日付の米科学誌サイエンスで発表されたある研究で、笑気ガスとして歯科麻酔などに用いられる亜酸化窒素(N2 O)が、最大のオゾン層破壊物質となっていることが突き止められた。
下水処理や燃料の燃焼、窒素肥料の施肥などから発生するN2 Oはオゾン破壊性ガス排出量のおよそ4割を占め、現在使用が禁止されているフロンガス・ハロンガスを上回る量だという。米海洋大気庁(NOAA)の化学者で論文の共著者であるA・R・ラヴィシャンカラ氏が語った。
同氏によると、N2 Oはその排出量の増加に伴って最も強力なオゾン層破壊ガスとなり、2050年には人為的なオゾン層破壊の8割を担う可能性がある。
N2 Oは温室効果ガスでもあり、論文ではその排出量の抑制が「オゾン層と気候変動、双方に有効」とされている。
皮膚がんや白内障を引き起こす紫外線から人間を守っているオゾン層は、ハロンガスやフロンガスなどの人工化合物によって破壊されてきた。エアロゾル缶や冷蔵庫で使用されていたこれらのガスは1987年、国際協定「モントリオール議定書」によって生産・使用などが全廃されたが、N2 Oは規制対象外だ。
研究ではN2 Oのオゾン破壊性が算出された。同量での破壊力はフロンガスの一種CFC−11の6分の1程度だが、排出量が増加しているため、総量では現時点で2倍以上の破壊性を持つという。
オゾン層の研究で1995年にノーベル化学賞を受賞したポール・クルッツェン氏は、微生物の窒素利用過程でも生成されるN2 Oの排出規制は難しいとした上で、「施肥方法の改善によって排出量を減らすことは可能だ。
今のやり方では肥料のたった30%しか植物に吸収されていない」と語った。
(ブルームバーグ Alex Morales)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/090829/fnc0908291029007-n1.htm