中日・浅尾拓也投手(25)がドミニカ共和国のウインターリーグに派遣される予定であることが25日までに分かった。大物大リーガーやハングリーな有望株がしのぎを削る舞台に飛び込み、武者修行する。今季は開幕投手、セットアッパーと大車輪の働きだった。さらにたくましいリリーフの柱になるため、オフ返上で海を渡る。
治安は悪い。危険も多い。チームの中に入れば一応安全とはいえ、そこでも雑多な人種、セレブから日銭を稼ぐプレーヤーまでが入り交じる。日本語など通じない。日本ではあり得ないタフな環境に、若きリリーフエースが放り込まれる。
これまでのドミニカ共和国のウインターリーグ派遣は、素質を生かし切れない選手たちの修業が主な目的だった。今回、すでにセットアッパーとして頭角を現している浅尾が参加。その理由を森バッテリーチーフコーチが語った。
「こっち(名古屋)で秋季練習をやるというのも1つの方法だ。フォーム固めや体力強化をじっくりできるからな。だけど来年を考えたとき、ウチのピッチャー陣の一番の問題って何だ? 岩瀬がどうなるか、ってことだろ。問題ないならいいけど、岩瀬に何かあったときどうする?」
今季終盤、岩瀬は体調不良で登板から遠ざかった。クライマックスシリーズ(CS)で復活したものの、体は万全とは言い切れなかった。来季までに完全治癒してくれればいい。が、守護神不在の危機に陥ったとき、誰が最後を締めるのか。適任者が浅尾だ。今季も岩瀬不在の間、抑えを務め、6セーブを挙げた。森コーチは続けた。
「今年のシーズン中も何度か(抑えの)経験はさせてきたけど、ドミニカに行って経験できることはまた違う。ものすごく大きいものがある」
相手にはメジャーのバリバリのスラッガーもいる。メジャー予備軍が多く、パワー自慢の原石がゴロゴロしている。そんなつわものたちに、今の自分がどれだけ通用するのか。シビアな現実が突きつけられる。
起用については自由が利く。選手獲得のために毎年ドミニカ共和国に滞在する森コーチが、今年は現地チームから臨時コーチを要請された。役職は未定ながらユニホームを着ることになった。浅尾はレギュラーシーズンでチーム最多、67試合も登板。懸念される疲労について、さじ加減は森コーチの手中にある。「そんなに多く投げることはないだろう」。負担をかけ過ぎることなく、抑えとして起用できそうだ。
浅尾自身も成長の糧を得る旅を希望した。成長とドミニカ共和国。中日では今や、切っても切れない関係になった。今年の藤井と川井、昨年の吉見ら、ドミニカ共和国帰りの選手が殻を破るケースが続く。浅尾は一体、どこまで大きな男になって帰ってくるのだろうか。 (生駒泰大)
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