|  | きょうの社説 2009年10月26日
◎医師のUIターン 地域医療の現場体験に意義
首都圏で活躍する石川県ゆかりの医師らを招く「ふるさと石川の医療を守る集いin東
京」が初めて開かれ、谷本正憲知事は、県外の医師にUIターンを促す「地域医療体験ツアー」の開催に前向きな姿勢を示した。石川での勤務に関心を持つ医師に医療現場を体験してもらうことは、就業への大きな判断材料になろう。きめ細かい受け入れ態勢を整えて、地域医療の即戦力となる医師確保を図ってもらいたい。 医師不足解消へ独自の取り組みを続けてきた島根県では、地域医療視察ツアーを200 6年から始めている。視察先や日程は医師の希望に応じて県がコースを作っており、診療所や大規模病院などの医療現場の訪問に加え、周辺の町巡りもコースに入っているのが特徴である。このツアーも活用して、同県の「医師バンク」はこれまで40人余りの医師を確保している。今後の石川県の取り組みにも参考になろう。 医師の確保は容易ではないが、より広く地域医療の現場を体験できる場を設けることは 、医師にとっても受け入れ側にとっても理解を深めるうえで意義がある。さらに実際に赴任した際の生活環境が分かるように地域の良さを伝えていくことが、UIターンを後押し、医師の定着にもつながるのではなかろうか。 石川県は2005年度から県内就業を希望する医師の相談窓口として「地域医療人材バ ンク」を設置し、病院との斡旋(あっせん)を行っている。県医師会や県人会、大学同窓会などの協力を得て全国の県出身の医師に地元就業を働きかけており、昨年度は医師3人が医師不足に悩む能登北部地域の医療機関に赴任した。今後より多くの受け入れを実現させるためには、新しく委嘱した「石川の医療大使」を含めたネットワークを活用し、一層の情報収集と働きかけが求められる。 今年度、石川県は「即戦力」の医師確保策としてUIターンの受け皿充実のほか、女性 医師の勤務環境改善などを図っている。臨床研修医や学生を対象にした中長期的な施策と併せて着実に取り組みを進めてほしい。 
 
 
 
◎アフガン大統領選 信なき政権では統治困難
不正問題で宙に浮いているアフガニスタン大統領選の決選投票が11月7日に実施され
ることになった。長引く政治対立は反政府武装勢力タリバンを利するだけという声もあるが、不法行為が横行した選挙で正統性に疑問符がつく政権では、支援を行う国際社会の信頼も得られまい。 アフガンでは、国民の不信を招く政府内の腐敗も深刻である。今回の大統領選を、不正 を許さない統治力のある政権づくりの契機にできなければ、日本など国際的な復興支援にかかわらず、アフガン再建の道はますます険しくなると言わなければならない。 カルザイ大統領が、当選に必要な過半数に達していないとの再集計結果を認め、決選投 票を受け入れたことで、オバマ米大統領が計画する米軍増派に必要な最低限の条件が整ったことになる。 アフガン駐留米軍のトップである国際治安支援部隊(ISAF)司令官も先ごろ、最大 で8万人規模の増派を提言したところであるが、ここで留意しなければならないのは、派遣米軍を増強したとしても、アフガン政府にまん延する汚職体質が改善されない限り、情勢の好転を望めない可能性があると指摘していることである。 アフガンは国家予算の大部分を国際支援に頼っており、その中で進む貧富の差の拡大が 、汚職横行の一因になっているという。カルザイ大統領は就任後、汚職対策の委員会を2回設置したが、委員が麻薬密輸容疑で拘束されるなどして機能しなかった。 捜査当局は公務員の銀行口座も調べて摘発に努めているものの、汚職はいっこうに減ら ず、戦闘で拘束されたタリバン兵士が刑務官へのわいろで脱獄するケースが多いと伝えられる。麻薬に汚染された警察官も少なくない。 こうした政府内の腐敗は民意の離反を招き、結果としてタリバンなど反政府勢力の支持 者を増やすことになる。大統領選後の新政権は、タリバンとの戦いだけでなく汚職の一掃に全力を挙げる必要があり、その点で一丸となれるかどうかが、アフガン安定の鍵の一つと言ってよい。 
 
 
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