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マイクロソフト、「Rise of Nations」カウントダウンイベントを開催 |
会場:古代オリエント博物館
マイクロソフト株式会社は、6月14日、池袋にある古代オリエント博物館において、「Rise of Nations 〜民族の興亡〜」の発売カウントダウンイベントを開催した。当初のスケジュールでは、前日の6月13日にゲームが発売され、「スペシャル発売イベント」となる予定だったが、日本語版の発売延期により急遽「カウントダウンイベント」と名称変更してのイベント開催となった。
会場となった古代オリエント博物館は、古代エジプトやメソポタミア文明など古代オリエント世界の文化財を扱った博物館。古代から現代までの6,000年の歴史を扱った同作発表にふさわしい場所といえる。施設が独立しておらず、博物館としての規模は必ずしも大きい方ではないが、池袋の顔であるサンシャインシティに直結しており、繁華街から気軽に足を運べる博物館である。
イベントは、閉館後の18時以降に行われたが、プレス流通関係者数十名のほか、抽選で選ばれた100名とその同伴者も加わり、総勢200名近くの規模となった。年齢層は、ゲームに興味を持つ10代20代がもっとも多かったが、通常のゲームイベントではまず見られないような高年齢層も意外と目に付いた。古代オリエント博物館という場所柄とスペシャルゲストが影響しているのだろうか。
■ 西アジアの専門家から見た「Rise of Nations」〜先に鉄剣を持った国が勝つ
古代オリエント博物館研究員の石田恵子氏と宮下佐江子氏 |
さすがに博物館の閉館後に200人を集めてゲームの発表会をやる、という海外ではまず考えられないような珍しいタイアップ企画を了承しただけあって、「ゲーム」という娯楽に対して前向きな考え方ができるおふたりで、古代のゲームと現代のゲームを直結させた考え方がおもしろかった。
ちなみにここでいうゲームとは、メノウやラピスラズリなどの珍しい鉱石や羊のかかとの骨などでできたサイコロを使って遊ぶ原始的ゲームで、古代オリエントの遺跡にはこうした形跡が多数見つけられるという。
司会者のユニークな質問をいくつかピックアップすると、「古代戦において、どのようにすれば戦いに勝てるか」に対しては、「何を使えるかによって決まると思います。たとえば先に鉄剣を持った国が勝つ、良い鉱石を押さえた国が勝つということです」となかなかRTSの本質を突いた答え。これはヒストリカルゲームの開発者は事前に博物館などで充分な下調べをするため、歴史とゲームの勝利法が似たものになるというのはある意味当たり前のことだ。
そして「どの文明を使って勝利するのがいいと思うか」については「それは私たちは西アジアを研究していますからエジプト(笑)、もっとメソポタミアの文明もあると良かったなあと思います」とコメント。
■ 「NHKスペシャル 文明の道」チーフプロデューサー野島氏が語る「Rise of Nations」の魅力
NHKエンタープライズ21チーフプロデューサー野島正宏氏 |
野島氏の好きな文明は中国。ゲームには全部で18種類の文明が登場する |
同氏は、NHKに入社する前はアスキーに所属しており、月刊アスキーの編集者としてPCゲームの担当もしている。自身大変なゲームファンで、学生時代「Diplomacy」や「Risk」といった戦略級のボードゲームを好み、イベントで「中国史専攻だった」と自ら明かしたように中国史に対する造詣が深い関係から、コーエーの「三國志」の大ファンでもある(ただし、I、II、IIIあたりまで)。
こうしたことから好みのゲームスタイルは自ずと「Civilization」を頂点とする海外製ターンベースストラテジーで、実は「Rise of Nations」などのリアルタイムストラテジーゲームはあまり好きではないといういまや珍しいタイプのゲーマーである。と、やけに記述が詳しいのは、まったくの余談ながら私の先輩だからである。
野島氏は、簡単な挨拶を終えたあと、「私が月刊アスキーのゲーム担当になった10年ぐらい前は、98(NECのPC-9801)が全盛の頃で、ゲームといえば16色が当たり前の時期ですが、ちょうどそのころ海外で発売されて人気を集めたストラテジーゲームが『Rise of Nations』の先祖筋にあたる『Civilization』です」といきなりコアな話からスタート。
「ストラテジーゲームでいえば、『Civilization』のIとII、『Colonization』、『Alpha Centauri』などが定番で、あとこれは完全に私の趣味になりますが『Close Combat』というゲームもありました」とコアゲーマーぶりをアピール。「Nスペ」繋がりで古代の小難しい話をすると思って聞いていた来場者はさぞかしびっくりしたのではないだろうか。
つられて司会者も「ではターンベースストラテジーの魅力はどのあたりにあるのでしょうか?」というゲーム違いの質問を繰り出し、これに対して同氏は「ゆっくり考えられるということにあると思います。ターンベースストラテジーは、リアルタイムストラテジーのようにゆっくり考えていたら敵に攻め込まれるということがありませんから」と回答。
続けて、同作の感想について「リズムがいいと感じました。これはターンベースの欠点でもありますが、やることが多くなると考え込んで、時間ばかりが経って、ゲームが少しも進展しなくなります。たとえば『Civilization』は、(ゲームが単純だったため)一晩あればクリアすることができたが、現行の『Civilization III』は到底一晩では終わらない。そういった点では、『Rise of Nations』はRTSの要素を取り入れたことでテンポ良くゲームを展開させることができます。気分良く遊べますね」とコメント。非常に中身のあるトークショウだった。
「Rise of Nations 〜民族の興亡〜」の最新スクリーンショット。発売が7月11日に伸びてしまったが、すでに英語版も発売されており、日本語化も終了している。あとはパッチを組み込むだけだ |
■ スペシャルゲストに作家の養老孟司氏が登場〜実は大のPCゲームファン
東京大学名誉教授養老孟司氏 |
続けて「インストールしたんですが、動作が重くてどうにもならない。というわけで新しいPCを新調しました。最近のゲームは3Dになってからすぐ重くなって入らなくなる」とコメントし、再び場内を沸かせた。
1日あたりのプレイ時間について、「1時間でやめておくが、2時間になることもある、徹夜もありますよ」とかなりのヘビーゲーマーであることを告白。続けて「若い頃は(ゲームのやりすぎで)女房に怒られて、マリオをやってたときは一時“離婚だ”ということにもなりました」とゲームでの失敗談も公開した。
同作については、「やることが凝っている」とコメント。「単純なものでいうとシューティングゲームとか『テトリス』とかあるけど、これらはどちらかという暇つぶしに遊ぶゲームで、『Rise of Nations』は、一応ストラテジーになっている」と、辛口ながらも一定の評価を与えた。
プレイした感想については、「6,000年が1時間で体験できるはずないんであって、完全に嘘なんだけど(笑)、どうしてこういうファンタジーを『馬鹿らしい』と思いつつもプレイしてしまうのは、完全に嘘だからなんです。現在の世界で一番嫌なところは、本当か嘘かわからないところ。裏になにかあるんじゃないかと勘ぐってしまう。ところが、こうしたファンタジーは最初から人が作った嘘だってわかっているから、余計な心配をせずに安心できる。だから夢中になれるんです。」と解剖学的な見地からコメント。
同作でどの民族の長になりたいかという質問に対しては、「ボクは長になるのが嫌いなんです。長にならされそうになるとすぐ逃げます。長になるのはゲームの中だけでたくさんだと(笑) そういう点ではどこでもいいです。すぐ同化しちゃうから」とコメント。
こういうストラテジーゲームが脳にどういう影響を及ぼすと考えているかについては、「いまゲーム脳とかいうけど、結局リアリティとは何だということです。たとえば今の戦争はテレビゲームです。ブッシュがやっているのはまさにテレビゲームで、自分は戦場に行かずにTVの映像を見て、コンピュータがはじき出したデータを見て、判断を下している。これはボクがゲームをやっているのとほとんどかわらない」。
「こうすればああなる、ああすればこうなる、つまりシミュレーションですが、実際の人生がシミュレーションどおりに行ったとすればそれはおもしろくない。ボクは昆虫が好きで明日も虫を捕りに行く。こういうとき人は『何を捕りに行くんですか?』と聞いてきますが、何が捕れるかわかっていたら最初から行きません(笑) シミュレーションの効かない部分にこそおもしろさがある」。
「ゲームに関して言えば、その人がゲームをどう利用するかが問題。予定通りにいけばおもしろいが、予定通りに行き過ぎてもおもしろくない。人生は完全なシミュレーションと、完全なカオスのどっか中間あたりに落ちると考えている。せっかく完全なシミュレーションとしてゲームという娯楽があるんだから上手に使いましょう、とそういうことです」と締めくくった。以上で第一部が終了し、休憩となった。
会場には150名ぐらいの一般ユーザーが参加した。展示品の前で会食をしたり、デモプレイをしたり、とにかく異例尽くめのイベントだ |
■ Halen氏とZyatou氏が対戦!! 白熱のデモプレイ
左から野島氏、Halen氏、Zyatou氏。Halen氏とZyatou氏のふたりはMSのイベントではお馴染みの顔だ |
締めの挨拶を行ったマイクロソフトのプロダクトマネージャ風間綾氏。発売後は、チームベースの大会を計画しているようだ |
ちなみに最初にプレイしたストラテジーゲームは、野島氏は「Civilization」、RTSでは「AoE II」、Halen氏は「AoE」のアドオン、Zyatou氏は「AoE II」のアドオンからということ。全員RTS歴はそれほど長くないようだ。
「Rise of Nations」をプレイしてみた感想としては、Halen氏は「戦術方向から戦略方向にシフトしている印象がある。陣取り的な国境の概念が難しくしている」とコメント。Zyatou氏は、「RTSは先手必勝な部分があるが、RoNは国境の概念を取り入れることによって、補給の概念を持たせたのだと思います。それは非常におもしろい試みだと思います」とコメントした。
システムの特徴については、なぜか野島氏が回答。「『Civilization』の要素を随所に取り入れていて、『Age of Empires』ともちょっと毛色の異なる作品です。リアルタイムという点では『Age of Empires』よりも若干忙しさが緩和されている感じがしますね。また世界の七不思議的な建造物が建てられるなど、戦術のバリエーションも増しています」とコメントした。
さて、デモプレイは、Halen氏とZyatou氏の1on1形式で行われ、実況担当が野島氏というレアな組み合わせ。デモ担当のふたりは立ったままでのデモプレイで、かつZyatou氏は目の前の液晶が故障か何かで映らず、プロジェクタを見ながらという劣悪な環境でのプレイとなった。
両者とも日本を代表するRTSプレーヤーだが、基本コンセプトはAoEシリーズは似たものとはいえ、さすがに発売前のタイトルだけあって、たどたどしいとまではいかないが、スマートとはいいがたい展開で、時代を進化させていった。野島氏は、本業顔負けの詳しさで丁寧な解説を行なっていたのが印象的だった。
中世に入ったところで、国境が密着し、散発的に戦端が開かれたが、双方決定打を与えるには至らず、時間切れ引き分けとなった。プロジェクタに映っていたのはZyatou氏の画面のみだったが、いつのまにかHalen氏が大軍を擁していて、見事な指揮ぶりで部隊を動かしていたのが印象的だった。
デモプレイ中の様子。両端で向かい合うようにモニタに向かっているのがZyatou氏(左)とHalen氏(右) |
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□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/
□「Rise of Nations〜民族の興亡〜」の公式ページ
http://www.microsoft.com/japan/games/ron/default.asp
□関連情報
【2003年6月3日】マイクロソフト、「Rise of Nations 日本語版」の発売を延期
延期の理由は修正プログラム組み込みのため
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030603/roenki.htm
【2003年4月30日】マイクロソフト、「Rise of Nations〜民族の興亡〜」を6月13日に発売。予約キャンペーン、メールマガジン配信を開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030430/ron.htm
【2003年2月10日】マイクロソフト、「Rise of Nations〜民族の興亡〜」を正式発表
人類の歴史を世界規模で扱った3Dリアルタイムストラテジー
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030425/nonline.htm
【2003年2月12日】「RoN」クリエイターBrian Reynoldsインタビュー
「Rise of Nations〜民族の興亡〜」の魅力を聞
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030212/ron2.htm
(2003年5月15日)
[Reported by 中村聖司]
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