「置き屋」の非道な理不尽さ…温泉コンパニオン裏事情 被告が母を刺したワケ
10月25日15時17分配信 産経新聞
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裁判員の選任手続きで漏れた裁判員候補者を取材する報道陣。事件は山梨県内で初めての裁判員裁判として審理され注目を集めた=20日午前、甲府地裁前(太田明広撮影)(写真:産経新聞) |
[フォト]被告の長女が勤めていた置き屋のある温泉街
■過酷な“罰金制度”、理不尽な取り立て
審理の中で、被告の長女が、勤め先の置き屋(コンパニオンを派遣する事務所)の不合理な“罰金制度”で莫大(ばくだい)な借金を負わされ、親である被告自身も返済に追われていた実態が明らかにされた。「遅刻1回で数万円、客と個人的に会えば1回50万円以上の罰金が科された」といった事情が説明されると、一般から選ばれた裁判員は被告の心中を推し量り、幾度も涙をぬぐった。
検察官は莫大な借金から将来を悲観し、高齢の母親と心中を図ろうとしたと指摘。しかし置き屋の女将(おかみ)や、女将と一緒に被告から取り立てを行ったと指摘された人物が証言台に立つこともなく結審し、判決後の会見で「(借金のいきさつをさらに)聞いてみたかった」と口にした裁判員もいた。
長女が勤めていたのは山梨県笛吹市にある東日本有数の温泉街、石和温泉。地元で尋ねてもこの置き屋の評判は芳しくなかった。新興住宅地にたたずむ外観はほかの一般住宅と変わらない。近所で聞くと、女性が昼間、電話でコンパニオンとおぼしき話し相手を怒鳴りつける声が響くこともあり、石和温泉の事情を知る関係者によれば置き屋側はコンパニオンの親の職業を調べ、罰金を肩代わりさせたケースがほかにもあったという。
また、この置き屋は、別の置き屋のコンパニオン不足を補う“孫請け”もしていた。客が払った料金が1時間で1万2千円なら、このうち5千円が最初の置き屋、次に自分たちの懐に7千円が入り、この半分の3500円がコンパニオン自身の手元に入る仕組みという。
■心中図れば「警察が実態追及を…」
石和温泉は昭和36年、果樹園から温泉が突如わき出したことで開湯した。静岡県の熱海に次ぐ規模ともいわれ、古くから温泉街を知る関係者は「石和は芸者と遊べると有名で、男性客がたくさん来たわ」と懐かしむ。ところがバブル崩壊とともに客足は減り、最近は高速道ETC割引の影響もあって、首都圏からの客が山梨を素通りする傾向にあることも痛手だ。
この関係者によると、コンパニオンの手取りは13万円ほど。以前は寮に住み込みで働く人も少なくなかったが、今はアパートなどを借り、昼間はアルバイトやパートに出る人も多い。外見の派手さと裏腹に「生計を立てるのはしんどい。意外ともうからない仕事」という。
こうした事情から、今ではコンパニオン集めも一苦労だ。「女の子を紹介してくれたら新車1台くらい都合をつけるよと声を掛けられた」と証言する地元住民もいた。
また、きちんと芸を身に付けた昔ながらの芸者が減り、アルバイト感覚の若い女性のコンパニオンが増え、接客の質も落ちた。「客の皿から平気で料理をパクパク口に運ぶなど、基本的なマナーが身に付いていない子が少なくない」と、ため息をつく関係者もいた。
とはいえ、150件ほどあるといわれる石和温泉の置き屋も、厳しい環境の中で健全に経営しているところが大半だろう。料金の透明性を高めようと、コンパニオンを依頼する旅館と置き屋はコンパニオンの料金を30分3150円とする一律の協定も結んでいる。ただ、長女が勤めた置き屋は観光協会の正規会員でもあった。
被告は、長女がコンパニオンをした約7年間にたまった罰金のうち6百万円以上を支払い、長女が金融機関から借りた3百万円の連帯保証人にもなった。それでも置き屋側から、借金がなお1千万円近く残っていると主張されたという。
長女の窮状を知った被告は、相談した警察や弁護士から「返済する必要はない」と助言されていたが、法廷では「取り立てで自宅に居座られたり、職場近くで待ち伏せされたりした。理屈の通らない相手で金を渡すしかなかった」と訴え、「心中を図ることで、置き屋の実態を警察などが追及してくれると思った」と、追い詰められた当時の心境を口にした。
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最終更新:10月25日15時23分