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【国際】

『高齢者救急拒否せよ』 死亡事件で発覚、氷山の一角か

2009年10月25日 朝刊

 【モスクワ=中島健二】経済苦境下のロシアで、ウラル地方の公立病院が経費節減のために、高齢者への緊急出動を組織的に拒否し続け、複数の死者が出ている可能性が高いことが明らかになり、波紋を呼んでいる。

 ロシア紙「トルード」によると、クルガン州グリャジャンスク地区で八月、六十五歳の男性が心臓発作を起こし、妻が地区病院に救急車出動を要請。ところが妻からの再三の電話にもかかわらず病院側は拒否し、結局男性は数時間後に自宅で死亡した。

 地元検察が調べた結果、病院側は、心臓や脳疾患の高齢者からの救急要請には応じる必要がない−との指令書を出していたことが発覚。関係者は救急車の燃料費や人件費節約のためと証言、今回も指令に従った措置とみられ、検察は刑事事件として捜査を始めた。

 同病院の管轄地区では救急要請を拒否された高齢者のケースが以前から続発。「死亡例も複数あったが皆、泣き寝入りだった」という。

 ロシアではプーチン前政権時代に高い経済成長を続け、同病院の院長もプーチン首相の大統領時代に「名誉医師」の称号を授与された。だがその恩恵が社会的インフラなどの整備にはほとんど回らず、医療機関は設備更新もできない運営状態にある。昨秋来の危機がさらに苦境を深めているのは確実で、今後も弱者が見捨てられる懸念が強まっている。

 

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